― 利益は「人の使い方」で決まる ―

前回は、追加工事・仕様変更を確実に回収する仕組みについて解説しました。
しかし、たとえ追加分を回収できていても、現場で工数が膨らめば粗利は簡単に消えます。

建設業の収益改善において、
人件費と工数管理は避けて通れないテーマです。


なぜ建設業では人件費が見えにくいのか

多くの建設業では、次のような管理が行われています。

  • 職人は日当・月給でまとめて管理
  • 現場ごとの工数を記録していない
  • 忙しさで評価してしまう

この状態では、

  • どの工事に
  • どれだけの時間を
  • 誰が使っているのか

が見えません。

結果として、
利益が出ない工事ほど人が張り付く
という逆転現象が起こります。


工数管理は「監視」ではなく「判断材料」

工数管理というと、
「管理される」「締め付けられる」
という抵抗感が出やすいですが、本質は違います。

工数管理の目的は、

  • 人を叱るため
  • 効率を無理に上げるため

ではなく、
経営判断を正しくするためです。

  • この工事は工数が想定より多い
  • この工程がボトルネック
  • この仕事は構造的に合わない

こうした判断を、
感覚ではなく数字で行うための道具です。


工数管理の第一歩は「ざっくり」でいい

最初から精密な管理は必要ありません。
むしろ、失敗しやすくなります。

まずは次の単位で十分です。

  • 工事別
  • 工程別
  • 人別(延べ時間)

「今日は何時間、どの工事をやったか」
これを日報レベルで把握できればOKです。

重要なのは、
比較できる形で残すことです。


人件費を工事別に割り当てる

工数が見えるようになったら、
次は人件費を工事別に割り当てます。

  • 月給 ÷ 月間稼働時間
    = 1時間あたり人件費

これを基準に、

  • この工事に何時間かかったか
  • 人件費はいくら発生したか

を算出します。

これだけで、

  • 想定より工数が多い工事
  • 明らかに割に合わない工事

がはっきりします。


工数が膨らむ工事の共通点

工数が想定より膨らむ工事には、共通点があります。

  • 見積段階で工数が甘い
  • 仕様が曖昧なまま着工
  • 現場判断が多すぎる
  • 職人の得意不得意を考慮していない

これらはすべて、
仕組みで防げる問題です。


工数管理を活かす3つの改善アクション

工数管理は、記録して終わりでは意味がありません。
次の3点に活かしてこそ価値が出ます。

① 見積精度の改善

実績工数を次回見積に反映する。

② 現場配置の最適化

得意な人材を適切な工程に配置する。

③ 受注判断への活用

工数過多が常態化する工事は、条件見直しや撤退を検討する。


現場の納得感がなければ失敗する

工数管理がうまくいかない最大の理由は、
現場との分断です。

成功している会社は、

  • なぜ工数を取るのかを説明する
  • 数字を現場と共有する
  • 改善成果を評価に反映する

ということを徹底しています。

「監視」ではなく
現場を守るための仕組み
として伝えることが重要です。


よくある失敗例

工数管理でよくある失敗は次のとおりです。

  • 数字を取ることが目的になる
  • 精度を求めすぎて続かない
  • 管理部門だけで使っている
  • 見積や判断に活かしていない

工数管理は、
経営と現場をつなぐ共通言語にする必要があります。


まとめ:人件費は最大コストであり最大の武器

建設業において、
人件費は最も大きなコストであり、
同時に最大の競争力です。

  • 工数を見える化する
  • 人件費を工事別に把握する
  • 数字で判断する

これだけで、
赤字工事は確実に減ります。