
― 走らせてはいけない仕事を見極める ―
前回は、待機時間・積み降ろし時間を価格に転嫁し、
無償労働をなくすことが収益改善の近道であることを解説しました。
今回は、さらに一歩踏み込み、
「どの便が会社の利益を生み、どの便が利益を奪っているのか」
をどう見極めるかを整理します。
運送業の収益改善は、
仕事を増やすことではなく、仕事を選ぶことから始まります。
なぜ赤字便は放置されやすいのか
多くの運送会社では、赤字便が分かっていても整理されません。
理由は共通しています。
- 長年の取引がある
- 売上は立っている
- ドライバーが慣れている
- 「他の便とセットだから仕方ない」と考えている
しかし、赤字便は
静かに会社の体力を削り続けます。
黒字便が赤字便を支える構造が固定化すると、
いずれ全体が立ち行かなくなります。
判断基準は「売上」ではなく「粗利」
赤字かどうかを判断する基準は明確です。
その便は、粗利を生んでいるか。
見るべきポイントは次のとおりです。
- 便別の売上
- 人件費(ドライバー拘束時間)
- 燃料費・高速代
- 車両コスト按分
これらを差し引いた
便別粗利を出すことで、
判断が一気に明確になります。
売上が高くても、
時間あたり粗利が低ければ、
その便は改善対象です。
ドライバー別・車両別で見る意味
赤字便の整理では、
ドライバー別・車両別の視点が非常に重要です。
- ベテランドライバーでやっと成り立つ便
- 特定車両でないと回らない便
- 誰がやっても赤字になる便
これらを分けて考えなければ、
改善策を誤ります。
特に注意すべきなのは、
**「人の頑張りで成立している便」**です。
これは、仕組みとしては赤字です。
赤字便への対応は「4つの選択肢」
赤字便が見つかったら、
すぐにやめる必要はありません。
選択肢は次の4つです。
① 条件改善
- 運賃改定
- 待機時間の価格反映
- 納品時間帯の見直し
② 効率改善
- ルート再設計
- 積載率向上
- 他便との組み合わせ
③ 縮小
- 便数削減
- 対応曜日限定
- 特定条件のみ受注
④ 撤退
- 改善余地がない場合は撤退
重要なのは、
「なぜ続けるのか」を数字で説明できる状態にすることです。
赤字便を整理すると起こる変化
実際に赤字便を整理すると、
次のような変化が起こります。
- ドライバーの拘束時間が減る
- 黒字便に集中できる
- 事故・トラブルが減る
- 利益率が改善する
短期的に売上が下がることはありますが、
時間あたり粗利は確実に改善します。
結果として、
経営の安定度は大きく高まります。
現場を巻き込むことが成功の鍵
赤字便整理は、
トップダウンだけでは失敗します。
成功のポイントは、
- 数字を共有する
- 判断基準を明確にする
- 現場の意見を取り入れる
- 改善後の成果を評価する
ドライバー自身が
「この便は割に合わない」
と感じているケースも多く、
現場はむしろ歓迎することが多いのです。
よくある失敗例
赤字便整理でよくある失敗は次のとおりです。
- 感覚で「儲からなさそう」と判断する
- 一律に便を減らす
- 説明なく突然やめる
- 数字を一度出して終わりにする
赤字便整理は、
継続的な管理プロセスとして組み込む必要があります。
まとめ:利益は「走る距離」ではなく「選ぶ力」で決まる
運送業の収益改善において、
最も重要なのは判断力です。
- どの便を続けるか
- どの便を改善するか
- どの便をやめるか
この選択が、
会社の未来を決めます。
走らせるほど儲からない構造から、
走らせる便を選んで儲かる構造へ。
これが、運送業の本質的な収益改善です。


