
― 走れば走るほど利益が減る構造から脱却する ―
収益改善は「売上」ではなく粗利が出発点です。
中でも運送業は粗利構造が最も崩れやすい業界です。
- 配送量は増えている
- トラックは常に走っている
- ドライバーは忙しすぎる
にもかかわらず、
- 利益が全く残らない
- 資金繰りが苦しい
- ドライバー採用ができない
という状況が続く企業が非常に多いのです。
なぜ運送業は「走るほど儲からない」のか
理由は明確です。
価格>コスト
になっていない仕事を受けているからです。
運送業の原価構造は、一見シンプルに見えます。
- 燃料費
- 人件費(ドライバー)
- 車両維持費(リース・メンテ)
- 高速代
しかし実際には、見えないコストが粗利を削ります。
- 積み降ろし・待機時間
- 積載率の低下
- 帰り便の空荷
- 渋滞・交通リスク
- 荷扱いの差(手間の差)
つまり運送業は、
「走行距離=負担」になりやすい業界です。
運送業は売上より「時間と積載率」で粗利が変わる
運送業の粗利改善において最も重要な視点は、
時間当たりでいくら稼いでいるか
積載率は何%か
です。
例えば、
- 1日10時間走って売上5万円
- 1日8時間で売上6万円
後者の方が粗利構造は強いことは明らかです。
運送業の利益を左右するのは、
- 積載率(空気を運ばない)
- 走行距離あたり粗利
- 時間あたり粗利
であり、
売上高の大きさではありません。
運送業が最初にやるべきは粗利の「見える化」
まずは、次の単位で粗利を出します。
- 車両別
- ドライバー別
- 取引先別
- 便・ルート別
これをやるだけで、
- 儲からない便がどれか
- 過大負担の顧客は誰か
- 条件見直しが必要な仕事はどれか
が一気に明確になります。
特に、
赤字便が主力ドライバーの時間を奪っているケースは要注意です。
「値上げできない」は思い込み
運送業界では、次のような声が聞かれます。
- 指値だから値上げできない
- 競争が激しい
- 相手が大手なので逆らえない
しかしこれは、多くの場合思い込みです。
原価と粗利が説明できれば、
- 待機時間の価格反映
- 積載率改善による条件変更
- ルート見直しによる効率改善
など、十分に交渉材料になります。
顧客も、
ドライバー不足で輸送自体ができなくなるリスク
を理解しています。
忙しさ=成果ではない
運送業では、
走った距離ではなく、
残った粗利が成果です。
数字を正しく見える化しないと、
- ドライバーが疲弊し
- 設備は酷使され
- 企業体力だけが削られていく
という悪循環から抜け出せません。
よくある失敗例
運送業の粗利改善でよくある失敗は次のとおりです。
- とにかく仕事量を増やす
- 売上がある=良い仕事と判断する
- 過去の条件を更新しない
- 個別の粗利を見ない
- 「慣習」で受注を続ける
これらはすべて、
粗利構造を理解せずに動いていることが原因です。
まとめ:利益は走行距離ではなく“判断力”で生まれる
運送業の収益改善は、
車両を増やすことでも、
走行距離を伸ばすことでもありません。
- 粗利の見える化
- 積載率の向上
- 時間あたり粗利の最大化
- 条件・顧客の見直し
この4つで、
「走るほど儲からない構造」から抜け出せます。

