― 経営改善は“現場の見える化”から始まる ―

多くの製造業が抱える共通課題として、
「設備稼働率」があります。

  • 常に機械は動いているはず
  • 人を増やせば加工量は増えるはず

そう思い込んでいる経営者は少なくありません。
しかし実際は、

機械が止まっている時間が見えていない

ことが、生産性の低下を招いています。

本記事では、IoT導入によって設備稼働の実態を見える化し、省力化につなげた事例を紹介します。


1.導入前の課題|「現場は忙しいが、数字に現れない」

この事業者(機械加工業)は、複数の工作機械を常時稼働させていました。
ところが経営数字を見ても、成果が伸びていません。

現場ヒアリングの結果、次のような課題が明らかに。

  • ストップ理由が曖昧(段取り?不具合?待ち?)
  • 稼働率は「感覚」管理
  • ボトルネック工程が掴めない
  • 改善の優先順位が決められない

つまり、現場は忙しいのに、
どの忙しさが無駄なのか判断できない状態
でした。


2.省力化の視点|まず“止まっている理由”を見える化

「とにかく生産性を上げるための設備投資を」と考える前に、
この事業者が行ったのは

機械稼働状況のデータ化

でした。

分析すると、

  • 「待ち時間」が稼働低下の主要因
  • 段取り替えが非効率
  • 不具合発生時の復旧が遅い
  • 加工と加工の間の時間が長い

と分かりました。

ここで重要なのは、

課題の正体が可視化されたことで、打ち手が明確になった
という点です。


3.導入した投資内容|IoTによる稼働管理DX

この事業者が採った解決策は、

既存設備にIoTセンサーを後付けし、稼働状況をリアルタイム管理

する仕組みでした。

構成としては、

  • 稼働/停止時間の自動取得
  • 停止理由をタッチパネル入力
  • 時系列でライン全体の可視化
  • 分析レポート自動生成

といった形です。

ここが一般型で評価されやすい点:

  • 既存設備の延命(更新ではない)
  • 投資額に対する効果が大きい
  • 経営判断に直結するデータが生まれる

4.導入後の効果|改善サイクルが回り始めた

稼働データが可視化された結果、次の効果が出ています。

  • 段取り時間を20%削減(ムダの特定)
  • 不具合時の対応時間が半減
  • 稼働率向上 → 生産能力向上
  • 作業者が「改善要員」として動ける時間が増加

特に重要なのは、

改善のPDCAが回るようになったこと

です。

データがあるから意思決定が早い。
改善行動は現場が自律的に進める。
省力化が持続する体制が構築されています。


5.なぜこの事例は採択されたのか

要点は以下の3つ。

① 設備投資ではなく「改善投資」である

→ 既存設備を活かし、稼働効率を最大化。

② 効果が明確に数値化できる

→ 稼働率・生産量・工数削減で説明。

③ DXの目的=現場力向上

→ 単なるシステム導入ではなく経営改善に直結。

一般型の審査ポイントに完全に適合しています。


6.製造業が学ぶべきポイント

製造DXの本質は、
設備の数字を見て、現場が動く文化をつくること。

そのためには、

  • 稼働率は「感覚」でなく「数字」で把握
  • 停止理由を定量化
  • 小さな改善を積み重ねる

これらを実践することで省力化効果が蓄積します。