中小企業省力化投資補助金(一般型)は、人手不足という構造的課題を抱える中小企業が、省力化投資を通じて生産性と付加価値を高めることを目的とした制度です。
中でも一般型は、あらかじめ国が認めた製品を選ぶ形式ではなく、自社の課題に合わせて設備やシステムを設計することが求められます。

その分、
「何をやれば省力化と評価されるのか分からない」
「設備投資が単なる更新だと思われないか不安」
と感じる経営者も少なくありません。

本記事では、第1回公募の採択結果を俯瞰しながら、採択された企業に共通する考え方を整理します。
これから申請を検討する事業者が、自社に置き換えて考えるためのヒントとしてご活用ください。


1.第1回公募で採択されたのはどんな企業か

第1回公募で特に目立ったのは、製造業と建設業です。
現場を持ち、工程・作業・人員配置といった要素が明確な業種が中心となっています。

これは偶然ではありません。
一般型では、

  • どの工程に人手がかかっているのか
  • どこがボトルネックになっているのか
  • 省力化によって何が変わるのか

を、具体的に説明できることが重要です。

製造業や建設業は、作業工程が比較的可視化しやすく、
省力化投資の効果を「言葉」と「数字」で示しやすい業種だと言えます。

逆に言えば、
工程や作業内容を曖昧なままにした計画は、評価されにくい
というメッセージでもあります。


2.地域差よりも重視されたのは「課題の明確さ」

採択企業は全国に広がっており、都市部・地方を問わず事例が見られます。
重要なのは、所在地そのものではありません。

評価されたのは、

  • 人手不足が経営にどう影響しているか
  • 省力化投資がなぜ今必要なのか
  • 投資後にどのような経営改善が見込まれるのか

といった課題設定と投資の必然性です。

「地方だから不利」「規模が小さいから難しい」と考える必要はありません。
むしろ、規模が小さいからこそ、
省力化によるインパクトを明確に描けるケースも多く見られました。


3.採択された投資内容に共通する特徴

第1回の採択事例を俯瞰すると、導入されている設備・システムには共通点があります。

  • ロボットや自動化設備
  • 専用設計された機械・装置
  • 複数工程をつなぐシステム
  • 属人化を解消するDX投資

ここで重要なのは、「高額な設備」かどうかではないという点です。

評価されたのは、
「自社の課題に対して、最も合理的な投資かどうか」
という視点です。

例えば、

  • 手作業が集中していた工程を集約する
  • 熟練者に依存していた作業を標準化する
  • 人が判断していた工程をデータ化する

といったように、省力化の狙いが明確な計画が評価されています。


4.第1回採択企業に共通する3つの考え方

第1回公募で採択された事業計画を整理すると、共通する考え方は大きく3つに分けられます。

① 省力化を「人を減らす話」で終わらせていない

採択された企業の多くは、省力化によって生まれた余力を、

  • 生産能力の向上
  • 多品種・短納期対応
  • 品質の安定化
  • 新規受注や新商品開発

といった次の成長につなげる構想を描いています。

単なる人件費削減ではなく、
人をより付加価値の高い仕事に再配置する
という視点が明確です。


② 「なぜこの会社にはこの設備が必要か」を説明できている

一般型では、汎用設備を単体で導入するだけの計画は評価されにくい傾向があります。

一方、採択事例では、

  • 自社工程に合わせた仕様変更
  • 周辺設備との連動
  • システムを含めた一体設計

など、その会社でなければならない理由が丁寧に説明されています。

設備の説明ではなく、
工程の説明から入っているかどうかが大きな分かれ目です。


③ 設備投資が「経営全体」と結び付いている

採択された計画では、省力化投資が

  • 売上拡大
  • 付加価値向上
  • 賃上げ余力の確保
  • 持続的な事業運営

につながる流れが示されています。

設備単体の話で終わらず、
経営のどこがどう変わるのかが語られている点が共通しています。


5.これから申請を検討する事業者への示唆

第1回公募の採択結果から、これから申請を検討する事業者が押さえるべきポイントは明確です。

  • 自社のどこに人手不足・非効率があるのか
  • 省力化投資で何を変えたいのか
  • 投資後、経営はどう良くなるのか

この3点を、自社の言葉で説明できるかどうかが重要です。

逆に言えば、
設備の説明ばかりで、
「なぜそれが必要なのか」を語れていない計画は、評価されにくいと考えるべきでしょう。