
粗利 × 改善効果 × 投資額で分類する実務的な判断軸
食品メーカーが設備投資を検討するとき、
「やりたいことは多いが、何から手を付けるべきかわからない」
という悩みが必ず出てきます。
食品工場には、
・老朽化対応
・生産性向上
・人手不足対応
・品質向上
・歩留まり改善
など、投資ニーズが多岐にわたるからです。
そこで本記事では、食品メーカーが実務で使える
「投資優先順位の決め方」= 粗利 × 効果 × 投資額
の判断軸をわかりやすく整理します。
投資優先順位は「効果が大きく、回収が早い順」
食品メーカーが投資を決める際の基本公式はこれです。
改善効果(年間改善額) ÷ 投資額 = ROI(回収年数)
特に以下が重要です。
・人件費改善(工数削減)
・歩留まり改善(ロス減少)
・生産能力アップ(売上増)
・品質安定(クレーム減)
この4つの効果と投資額を比較することで、
“やるべき順番”が自動的に見えてきます。
【STEP1】粗利に直結する設備を最優先とする
食品工場は利益率が低いため、
「粗利に直結する改善」が最優先になります。
特に次の2つは効果が絶大です。
1. 工数(人手)削減
食品メーカーは1名分の年間コスト(250万〜350万円)が大きい。
包装・計量・箱詰めなどは最優先。
2. 歩留まり改善
ロス1%改善で100万〜300万円改善する食品工場が多い。
計量・充填・検査が中心。
粗利改善につながる工程
= ROIが高い投資先
となります。
【STEP2】効果を数値化して優先順位を決める
食品工場の投資判断は「数字にして初めて比較できる」ようになります。
例として、次の3つの投資案件を比較してみます。
■ A案:包装機の更新
・人員3名 → 1名
・生産能力1.5倍
・年間改善額:600万円
・投資額:1,200万円
→ ROI:2.0年
■ B案:冷凍設備の更新
・品質改善
・電気代10%削減
・年間改善額:100万円
・投資額:1,500万円
→ ROI:15年
■ C案:X線検査機の導入
・検査員1名削減
・返品リスク減少
・年間改善額:300万円
・投資額:800万円
→ ROI:2.6年
この場合の優先順位は次の通りです。
1位:A案 包装ライン(粗利改善 × 人手不足 × ROI良)
2位:C案 検査機(品質 × 労務改善)
3位:B案 冷凍設備(安全投資でROIは低い)
食品メーカーでは、このように
具体的な効果を数字化して「順位をつける」ことが重要です。
【STEP3】投資額よりも“回収スピード”で見る
食品メーカーは資金余裕が少ないため、
投資額の大小ではなく、
回収スピード(ROI)で判断する方が正確 です。
特に優先順位が高いのは次のラインです。
・ROIが3年以内
・人件費が削減できる案件
・歩留まり改善がある案件
・生産能力UPが確実な案件
・補助金の対象になる案件
逆に優先度が低いのは下記です。
・ROIが10年以上
・効果が曖昧(感覚的)
・改善効果が見えない設備
・維持費が高くコスト増になる設備
【STEP4】投資目的を分類して整理する
食品メーカーの設備投資は、以下4つの目的に大別できます。
- 生産性向上(ROIが高い)
- 品質・衛生改善(HACCP・異物対策)
- 老朽化更新(止まる前の対応)
- 新商品・新ライン(売上増が目的)
この目的ごとに優先順位を整理すると、
投資計画が格段に決めやすくなります。
【STEP5】銀行が評価する“優先順位の決め方”を意識する
銀行は次の順で評価します。
- 生産性改善(人件費削減・能力UP)
- 収益改善(粗利改善)
- 品質改善(異物リスク等)
- 老朽化更新(事業継続性)
つまり、
粗利 × 効果 × 投資額(ROI)
で並べた優先順位は、銀行審査にも非常に適しています。
融資が通りやすくなる理由は、
“改善効果が数字で説明されているため”です。
まとめ:投資優先順位は数字で比較すると間違えない
食品メーカーは、以下の流れで投資優先順位を決めると
迷いなく判断できます。
- 粗利改善につながる工程を特定
- 改善効果を「年間改善額」で数値化
- 投資額と比較し「ROI」を計算
- 投資目的ごとに分類する
- 銀行の評価軸に沿って順位を確定
これを行うだけで、
感覚に頼らない“再現性のある投資判断”が可能になります。
食品メーカーが限られた資金で最大の効果を出すための
最も実務的なフレームワークです。


