銀行が納得する“投資効果の見える化”とは?

設備投資を考える際に、銀行が最も重視するのが 投資回収性(ROI:Return on Investment) です。
「本当に効果が出る投資なのか?」
「返済は問題なくできるのか?」
その根拠が明確な計画だけが、銀行融資の支援を得られます。

本記事では、食品メーカーが実務で使える
ROIの作り方と、銀行が見るポイントを解説します。


ROI(投資回収期間)の基本式

まずは最もシンプルな式から。

投資額 ÷ 年間改善額 = 回収期間(年)

例:設備投資2,000万円 / 年500万円改善
→ 回収期間:4年

食品工場では「3年以内」が一般的な目安となります。


銀行が注目する改善効果は4つ

食品メーカーのROIは次の4要素から成り立ちます。

  1. 人件費削減(工数改善)
  2. 歩留まり改善(ロス削減)
  3. 生産能力UP(売上増)
  4. 品質安定(クレーム・返品減少)

銀行が特に評価するのは ①人件費削減 × ③生産性向上 の組み合わせです。


人件費削減だけに頼らないのが食品工場

食品メーカーでは
「1名削減できればROIはすぐ見える」
のが強みですが、

実際には下記の効果も大きいため、
必ず数値化します。

・残業削減(年間100〜300万円はよくある)
・歩留まり改善(数%で数百万円改善)
・機械トラブル減少(メンテ削減)
・特売依存回避(粗利改善)

ROI試算が強くなるほど、融資も補助金も通りやすくなります。


銀行が評価する“ROIシート”の項目

設備投資計画書では、この5項目が必須です。

  1. 投資の目的(何を改善する?)
  2. 現状課題(現行ラインの数字)
  3. 改善後の数値(根拠のある改善効果)
  4. 投資回収年数(3年以内が理想)
  5. キャッシュフロー(返済できるか)

過去数字 → 現場の改善効果 → 返済可能性
の流れで整理すると評価が上がります。


サンプル:包装ライン更新のROI試算

項目現状導入後
包装人員3名1名
生産量1.0倍1.8倍
残業月40時間月10時間
歩留まりロス2.0%1.5%

→ 年間改善額:550万円
→ 投資額:1,200万円
→ 回収期間:2.2年

銀行が「必要な投資」と判断する典型例です。


銀行融資を有利にするポイント

● 投資の根拠は“現場の数字”で示す

「肌感覚」ではなく、
作業時間・工数・生産量・ロス率など実データに基づくこと。

● 売上増は“保守的に”

能書きではなく、確実性の高い効果を数字化します。

● 補助金は“後乗せ”として説明

「融資で判断 → 補助金で負担軽減」が正解です。

銀行は
「補助金ありき」を嫌います。
前回記事の内容と完璧にリンクします。


ROIに加えて“生産性の指標”も評価対象

食品メーカーは、以下の指標も使うと説得力が増します。

・人時生産性
・稼働率
・滞留時間
・歩留まり改善額
・仕掛在庫の削減額

数字を多角的に提示すると、審査に非常に強いです。


まとめ:ROIは設備投資の「説得材料」

食品工場のROIづくりは、次のステップで行います。

  1. 工程の数字を取る
  2. 人員・能力・歩留まりの改善を試算
  3. 年間改善額を算出
  4. 投資回収年数を計算
  5. 銀行提出用の投資計画書にまとめる

これができれば、
銀行融資も補助金も圧倒的に有利 になります。

投資効果(ROI)の説明は、
経営判断を加速し、資金調達を成功させる最重要ポイントです。