設備投資の“当たり外れ”をなくすための必須ステップ

食品メーカーが設備投資を検討するときに、最初に行うべきなのが「工程分析」です。
多くの工場では、機械が古い・人手が足りない・歩留まりが悪いといった“目の前の問題”から設備更新を考えますが、その前に工程全体を俯瞰して整理しないと、せっかくの投資が効果につながらないことがよくあります。

本記事では、食品工場で必ず役立つ「工程分析の基礎」をわかりやすく解説します。


● 工程分析とは“工場の見える化”

工程分析とは、工場内の作業を
「どの順番で・誰が・何をしているか」
を分解して見える化することです。

食品工場の場合、工程は主に次のような流れで構成されます。

・原料受入
・下処理
・調合作業
・加熱・冷却
・成形・充填
・包装
・検査
・梱包
・出荷

まずはこの全体を紙(またはExcel)に書き出し、“工場の地図”をつくることが工程分析の第一歩です。


● 工程分析で見るべき3つのポイント

食品メーカーが工程を分析する際、最低限見るべきポイントは次の3つです。

① サイクルタイム(1個つくるのに何秒かかるか)

サイクルタイムが長い工程は、生産能力のボトルネックになりやすい工程です。
特に食品工場では、
・充填
・包装
・X線検査
などが遅いとライン全体の能力を押し下げます。

まず「どの工程が一番遅いのか?」を把握することが重要です。


② 工数(1日何人必要か)

労働集約型の食品工場では、工数が多い工程を削減するだけで利益が大幅に改善します。

例えば、
「包装工程に3名 × 8時間」
→ 包装機導入で「1名 × 8時間」に削減
といった改善は典型的で、ROIが非常に高い投資になります。


③ 仕掛・滞留(在庫が溜まりやすい場所)

食品工場では、
・冷却工程
・包装待ちの製品
・検査待ち
などで仕掛在庫が溜まりやすく、これが生産性を下げます。

仕掛が溜まる工程は「流れが悪い工程」であり、投資の優先度が高い箇所です。


● ボトルネックの特定が“投資効果”を最大化する

工程分析の目的は、
生産性を最も下げている工程(ボトルネック)を特定すること。

例えば、
・包装が遅くて製品が流れない
・検査が追いつかない
・仕分けや箱詰めで人手が足りない
など。

ボトルネックを改善しないまま部分的に投資すると、
「包装機だけ新しくしたのにライン全体は変わらない」
という事態が発生します。

設備投資のROIを最大化するには、
ボトルネック=最優先の投資ポイント
です。


● 工程分析は“現場で5つの数字”を取ればできる

難しい分析は必要ありません。
食品工場では次の5つの数字を取るだけで十分です。

・各工程のサイクルタイム
・1日の生産量
・各工程の人数
・仕掛在庫が溜まる場所
・工程の稼働時間(実働・停止時間)

これを Excel や手書きのメモにまとめるだけで、
投資判断の材料として十分な資料になります。


● 設備投資は「現場の数字」をもとに進める

設備メーカーの提案だけで投資判断をすると、
「本当に必要な設備なのか」が曖昧になりがちです。
工程分析で現場の数字を出せば、

・どの工程を改善すべきか
・その設備が効果を生む根拠
・投資回収の期間(ROI)
・銀行に説明できる資料

が明確になります。

これが、銀行融資を通しやすくし、
補助金申請でも採択されやすくなる最大のポイントです。


● まとめ:工程分析なしの設備投資は“勘と経験の投資”になる

食品メーカーの設備投資は、工程分析を行うことで

・ボトルネックの特定
・人員削減や工数改善の根拠
・生産能力がどれだけ上がるか
・適切な投資の優先順位

が明確になります。

投資の“当たり外れ”をなくすためにも、
まずは工程全体を見える化し、数字を取ることから始めてください。