
食品メーカーが設備投資を検討する際に、最も重要なのは「資金調達の順番」です。
多くの企業が「補助金が採択されたら設備投資をする」という順番で考えていますが、これは設備更新を半年から一年遅らせてしまい、生産性や利益に大きな影響を及ぼします。
実務上、食品メーカーにとって最も合理的な設備投資の進め方は「融資 → 補助金 → 発注」という流れです。
この順番が最適である理由を、本記事ではわかりやすく解説します。
補助金は“後から戻ってくるお金”であり、投資判断の材料ではない
食品メーカーが最初に誤解しがちなのは、補助金の役割です。
補助金は設備投資を“決断するためのお金”ではなく、設備投資を“行った後の負担を軽くするためのお金”です。
補助金には次のような制約があります。
・採択されるかどうかが不確定
・上限額まで満額出るとは限らない
・交付決定が出るまで発注できない
・立て替え払いが必要で実質後払い
つまり、「補助金が出るから設備投資ができる」は誤りであり、本来は「設備投資をする会社が、後から補助金で負担を軽くする」が正しい理解です。
交付決定前に発注すると補助金は全額対象外
食品メーカーが特に注意すべき点として、補助金は交付決定が出る前に発注・契約行為をすると全額補助対象外となります。
見積書の日付や契約書のタイミングでも不適切扱いになるケースが多く、補助金制度の中で最も重要なルールの一つです。
したがって、設備投資の「開始」は必ず交付決定後になりますが、投資の「判断」はその前に終えておく必要があります。
投資判断は融資で行う
食品メーカーの設備投資において、投資の意思決定を支えるのは融資です。
食品メーカーは、設備投資が生産量・品質・歩留まりに直結し、投資効果が明確なため、銀行は計画さえしっかりしていれば前向きに評価します。
融資段階で固めるべき内容は次の通りです。
・設備更新の理由(老朽化・人手不足・品質改善など)
・人員削減や歩留まり改善などの具体的効果
・投資回収期間(ROI)
・月次キャッシュフロー(返済可能性)
・導入設備による生産量の増加見込み
これらを銀行とともに整理し、事業計画書として形にすることで、補助金の採択不採択に左右されず、投資判断が確実に進められます。
融資と補助金は同時進行が最適解
多くの食品メーカーが「補助金が採択されてから融資相談をする」という順番を取りがちですが、この流れは設備更新を遅らせる原因になります。
正しい流れは、融資と補助金を並行して進めることです。
理由は次の通りです。
・銀行の審査基準と補助金の審査基準はほぼ同じ
・融資で評価された計画は補助金でも通りやすい
・補助金審査中に融資枠を確保しておくと、交付決定後すぐ動ける
この順番にすることで、補助金に左右されず設備投資を前進させられます。
交付決定後に発注することで投資がスムーズに進む
補助金の交付決定が出た時点でようやく設備の発注が可能になります。
しかし、この時に融資が固まっていなかったり、計画が未確定のままだと、また数カ月動けなくなるという問題が発生します。
そのため、交付決定が出る前に次の準備を済ませておくことが重要です。
・融資審査の完了
・資金繰りの確認
・見積書の最終調整
・工期の調整
・投資後の改善計画の策定
交付決定後すぐに動ける企業は、投資のスピードが速く、競争力の維持・強化につながります。
補助金は最終的に“負担軽減要素”として機能する
融資で投資判断が固まっているため、補助金は後から「負担を下げる要素」として活きます。
例えば、総額4000万円の包装ライン更新でも、補助金1500万〜2000万円が通れば、実質負担が大幅に下がります。
この後乗せの形がもっとも安全で、銀行からも信頼される進め方です。
まとめ:食品メーカーは「順番」を間違えないことが最重要
食品メーカーの設備投資は、技術選定や金額よりも「資金調達の順番」が成功の鍵を握ります。
正しい順番は次の通りです。
1 融資で投資判断を固める
2 融資と並行して補助金を申請する
3 補助金の交付決定後に発注する
この順番で進めることで、投資スピードが速くなり、補助金で負担が軽減され、ROIが改善し、銀行評価も高まり、競争力も維持できます。
食品メーカーにとって、この順番は「勝つための設備投資の鉄則」と言えます。

