
中小企業新事業進出補助金の採択事例を分析すると、
価格設定の考え方が合否を左右していることがはっきり分かります。
「新規参入だから安くしないと売れない」
「まずは価格競争で市場に入る」
こうした発想で作られた計画は、採択事例ではほとんど見られません。
むしろ評価されているのは、安売りを前提としない価格設計です。
本記事では、採択事例に共通する価格設定の考え方と、
なぜそれが評価されるのかを整理します。
■審査で価格が重視される理由
補助金審査では、価格設定は単なる数字ではありません。
次の点を同時に見られています。
- その価格で本当に売れるのか
- 継続的に利益を出せるのか
- 補助金がなくなった後も事業は続くのか
つまり価格は、
事業の持続性を測る指標として扱われています。
■採択事例に共通する価格設定の基本姿勢
① 競合比較はしているが、価格競争には入らない
採択事例では、必ず競合比較が行われています。
ただし、
- 最安値を狙う
- 価格で優位性を出す
という方向には進んでいません。
代わりに、
- 提供価値の違い
- 対応範囲・品質・スピード
- サービス・サポート内容
を根拠に、適正価格または高付加価値価格を設定しています。
② 価格の根拠が「原価+α」だけではない
不採択になりやすい計画では、
原価に一定の利益を乗せた価格
という説明に留まるケースが多く見られます。
一方、採択事例では、
- 顧客が得る便益(コスト削減・時間短縮・品質向上)
- 代替手段と比べた優位性
- 導入後の経済効果
といった 価値ベースの価格説明 がなされています。
③ 安売りしない前提で売上計画が組まれている
採択されている計画では、
- 初年度から極端に低価格にしない
- 値下げ前提の売上拡大を描かない
- 利益率を一定水準で維持する
という共通点があります。
これは審査側にとって、
「補助金がなくても自走できる事業」
に見える重要なポイントです。
■価格設定が弱い計画の典型例
採択されにくい価格設定には、次の特徴があります。
- 「市場に浸透させるため安価に設定」とだけ書かれている
- 値下げ理由が抽象的
- 利益率が極端に低い
- 売上は伸びるが利益が残らない構造
こうした計画は、
補助金がないと成立しない事業
と判断されやすくなります。
■採択事例でよく見られる価格戦略の型
採択事例では、価格設定が次のような形で整理されています。
| 型 | 内容 |
|---|---|
| 高付加価値型 | 高品質・高精度・専門性を前面に |
| パッケージ型 | 機能・サービスをまとめて価格提示 |
| 段階価格型 | 標準・上位・カスタムの複数プラン |
| 継続課金型 | 保守・サポート・定期契約 |
いずれも、
価格=事業モデルの一部として設計されています。
■審査で評価される価格説明のポイント
採択事例では、価格について次の点が明確です。
- なぜその価格で売れるのか
- 誰がその価格を妥当と感じるのか
- 競合との差はどこにあるのか
- 利益はどの程度確保できるのか
価格が単独で書かれることはなく、
市場・価値・収益構造と一体で説明されています。
■まとめ:価格は「自信」の表れ
採択事例を通して見えるのは、
価格設定は企業の“自信”を映す鏡だという点です。
- 安くしないと売れない → 価値説明が弱い
- 適正価格で売れる → 価値が整理できている
中小企業新事業進出補助金で通っている計画は、
安売りしない理由を、論理で説明できている計画です。
価格は最後に決める数字ではなく、
事業設計の中核に据えるべき要素と言えるでしょう。


