
中小企業新事業進出補助金の採択事例を見ていくと、近年特に目立つのが建設業による新規事業進出です。
しかもその多くは、単なる周辺サービスではなく、製造業的なビジネスモデルへの転換を伴っています。
「建設業がなぜ採択されるのか?」
その背景と、実際に多く見られる事例パターンを整理します。
■なぜ建設業の新事業が評価されやすいのか
建設業は一見すると、新規事業と相性が悪そうに見えます。
しかし、補助金の観点では次のような強みがあります。
① 資材・素材に関する知見が豊富
建設業は日常的に、
- 木材
- 鉄骨・鋼材
- コンクリート
- 内装材・建材
といった素材を扱っています。
このため、素材を加工して「製品化」する発想に自然につながりやすい業種です。
② 解体・廃材が「資源」になる業界構造
近年の採択事例で顕著なのが、
解体材・廃材の再資源化に関する新事業です。
- 解体現場で発生する木材や建材
- 廃棄コストがかかっていた副産物
- 処分量削減が社会的課題になっている分野
これらを「原材料」として捉え直すことで、
新市場進出+環境配慮型ビジネスとして高く評価されます。
③ 建物・設備投資が補助金と親和性が高い
建設業の新事業は、
- 工場・加工場の新設
- プレカット設備
- 破砕・加工・選別設備
など、重投資を伴うケースが多いのが特徴です。
中小企業新事業進出補助金は、こうした投資を前提とした制度であるため、非常に相性が良いと言えます。
■パターン①:建材・部材の製造事業への進出
最も多い採択パターンの一つが、
建設業が自ら部材・建材を製造する事業です。
具体例としては、
- 型枠工事業が、型枠材の加工・製造事業を開始
- 木造建築会社が、プレカット工場を新設
- 内装工事業が、内装部材の製品化を行う
これらは、
「工事一式」から「製品供給」へビジネスモデルを転換する事業
であり、
市場の新規性・売上構成比の変化が非常に分かりやすいのが特徴です。
■パターン②:解体材・廃材の再資源化ビジネス
採択事例で急増しているのが、再資源化・リサイクル型事業です。
例としては、
- 解体木材を破砕し、チップ・燃料・建材原料として販売
- コンクリート廃材を再生砕石として製品化
- 建設副産物を新素材として再加工
これらは、
- 環境負荷低減
- 廃棄コスト削減
- 新たな収益源創出
という3点を同時に満たすため、
審査側からも「社会性の高い新事業」として評価されやすい傾向があります。
■パターン③:建設×製造のハイブリッド型モデル
一部の採択事例では、
建設業と製造業の両輪で事業を展開するケースも見られます。
- 工事で得たノウハウを製品改良に活かす
- 製品販売で得た収益を工事受注につなげる
- 施工+製品供給をパッケージ化
このモデルでは、
単発の工事収益に依存せず、安定的な売上構造を作ることができます。
■パターン④:人手不足対応・省力化製品の開発
建設業界の課題である人手不足を背景に、
省力化・効率化に資する製品・サービスも採択されています。
- 現場作業を軽減する治具・工具の製品化
- 作業工程を短縮する建設関連機器
- 安全対策・省人化設備の開発
「自社の現場課題を解決する製品を、外販する」というストーリーは、新事業性が非常に高く評価されます。
■採択された建設業の共通点
建設業の採択事例には、次のような共通点があります。
① 「工事」から「製品・事業」へ視点を変えている
施工行為そのものではなく、
そこから生まれる価値を製品・事業として切り出している点が特徴です。
② 課題解決型のストーリーが明確
環境・人手不足・廃棄物問題など、
社会的課題と事業が自然に結びついています。
③ 売上構成比の変化が描けている
最終年度に新事業売上が全体の一定割合を占めるなど、
数値での成長イメージがはっきりしています。
■建設業にとっての新事業進出補助金の意味
建設業は、景気・公共投資・人材に左右されやすい業界です。
そのため、
- 工事依存からの脱却
- 収益源の多角化
- 利益率の改善
が経営上の重要テーマになります。
中小企業新事業進出補助金は、
**「工事業から事業会社へ進化するための後押し」**となる制度と言えるでしょう。
■まとめ:建設業の新事業は“製造化・資源化”が鍵
採択事例を総合すると、次の点が明確です。
- 建設業は素材・資源を扱う強みがある
- 製造・再資源化への展開は新市場性が高い
- 社会課題との親和性が評価されやすい
- 建物・設備投資が制度に合致している
建設業が次の成長段階へ進むために、
中小企業新事業進出補助金は非常に有効な選択肢となります。


