■ はじめに:会社を苦しめているのは「赤字事業」

再建支援の現場で最初に行うのは
不採算事業の特定と撤退・縮小の検討です。

なぜなら――


✔ どれだけ改善しても「赤字の垂れ流し」は止められない

✔ 忙しいのにお金が残らない企業の9割は「不採算事業」が原因

✔ “選択と集中”が最短の再建策


にもかかわらず、多くの企業が
赤字事業を放置し続けてしまう理由は……?


■ 経営者が「やめられない」4つの心理

失敗事例の共通点として、次の心理が働いています。


心理内容
① 情に縛られる付き合い・古い顧客が断りにくい
② 売上への執着売上がなくなる不安
③ 新規受注の不安次があるかわからない
④ 判定基準がない採算を見ていない

💬 「売上がある概念」が実は最大の罠。
重要なのは“利益が出るか”です。


■ 不採算事業整理の原則:「高粗利に集中」

シンプルな結論です。


✔ 利益を生む領域に集中

✔ 赤字を生む領域を縮小・撤退

✔ 余力を成長領域に回す


これにより、

  • 粗利改善
  • 資金繰り改善
  • 組織負荷軽減
  • 価格交渉力向上
  • 成長投資の加速
    を一気に実現できます。

■ 不採算事業整理の3ステップ

現場で使える具体的な手順です。


STEP1:採算の見える化

  • 顧客別粗利
  • 商品別粗利
  • 現場別採算
    を作成し、A/B/Cの3段階で分類します。
区分内容
A高粗利・優良顧客/事業
B標準
C低採算・赤字

STEP2:縮小戦略

Cはすぐに切らず、段階的に対応します。

方法
値上げ単価改定・追加料金導入
サービス削減付帯作業の有料化
顧客移管他社へ徐々に
内製化検討外注比率を下げる

STEP3:撤退戦略

改善見込みがない場合は撤退。


撤退判断の基準例

  • 3ヶ月改善が進まない
  • 営業利益がマイナス継続
  • 単価改定が通らない
  • 社内負荷が高い
  • 戦略と合わない顧客

「今は難しいので、新しい条件で再提案します」
といった前向きな表現で伝えることがコツ。


■ 実務で使える“撤退の伝え方”

経営改善では、伝え方次第で関係は壊れません。


伝え方例

「御社への品質確保が困難な水準になっております。
今後もご迷惑をおかけしないためにも、
サービス範囲の見直しをご相談させてください。」


キーポイント

  • 「安定供給・品質保持のため」という建前
  • 正面から「不採算だから」と言わない
  • フェードアウト方式を活用

■ 成功事例(再建現場で多いパターン)


事例①:製造業

  • 低採算受注を20%削減
  • 主力顧客に集中
    → 粗利率 19% → 30%へ

事例②:卸売業

  • 付き合いだけの顧客を縮小
    → 営業利益が黒字化

事例③:建設業

  • 雑工事を外して主力へ集中
    → 生産性向上・資金繰り改善

事例④:サービス業

  • 低価格で工数のかかる業務を廃止
    → 人手不足解消・従業員満足UP

■ 不採算事業整理をすると何が起きるか?


✔ 営業活動が主力に集中

→ 成功率UP・単価UP

✔ 現場が楽になる

→ ミス・残業・離職低下

✔ キャッシュが増える

→ 投資余力が拡大

✔ 経営者のストレス減

→ 考える時間が生まれる


逆に放置すると、
利益が出る事業まで巻き添えになります。


■ 金融機関が評価する観点

銀行・協議会は「撤退判断」を高評価します。


理由

  • 再建の姿勢として誠実
  • 資金流出を止める効果が大きい
  • 計画の実現性が高まる

■ まとめ:勇気ある撤退が未来をつくる

  • 不採算事業を続けること=「利益の流出」
  • 撤退は「未来への投資」
  • 選択と集中が企業を前に進める

💬 経営改善のカギは
「何をやるか」ではなく
「何をやめるか」を決めること。