
■ なぜ値上げが最優先なのか?
経営改善計画の現場で最初に検討されるのは、
ほぼ必ず 価格改善(売価改善) です。
理由はシンプル:
✔ 値上げは効果が即出る
✔ 工場投資より効果が大きい
✔ 現場負担ゼロで利益改善できる
✔ 資金繰りに直結する
✔ 経営者の決断ひとつで動かせる
しかし、多くの経営者はこう言います:
「値上げすると顧客が離れるのでは…」
実際は逆で、
“正しい値上げ”をすれば離脱は限定的
というのが支援現場のリアルです。
■ 値上げ成功の3原則
値上げは「科学」です。
成功する値上げには「3つの原則」があります。
① 根拠の明確化(理由と数字)
「なぜ値上げするのか」を
客観的な数値で示すこと。
例:
- 人件費上昇率
- 仕入単価上昇率
- 物流費・外注費の増加
- 競合価格との比較
② 優先順位づけ(誰に・どの商品を上げるか)
下記の順に値上げ対象を選定。
1️⃣ 低粗利顧客から
2️⃣ 低粗利商品から
3️⃣ 小口・特急・スポット案件
4️⃣ 難易度が高い案件(追加料金導入)
③ 伝え方の設計(交渉ロジック)
値上げは「お願い」ではなく
「条件変更」 として伝える。
■ 値上げ文面・トーク例
実務で効果の高い表現を紹介します。
◆トーク例
「これまでの価格は努力で維持してきましたが、
昨今の人件費・原材料費・物流費の上昇により、
従来通りの品質を維持することが困難になりました。
今後もお客様に安定供給するために、
取引条件の見直しをご相談させてください。」
◆文面例
- 「安定供給の継続」
- 「品質維持のための見直し」
- 「原材料高騰への対応」
をキーワードにする
値上げの目的を
“顧客のメリット”として説明することが重要。
■ 値上げの実務手順(現場で使える流れ)
1️⃣ 粗利分析(顧客別・商品別)
2️⃣ 優先順位づけ
3️⃣ 値上げ幅の設定(段階的でもOK)
4️⃣ 提案書・説明資料作成
5️⃣ 先方キーマンとの面談
6️⃣ 移行時期の調整
7️⃣ 実行
8️⃣ モニタリング
特に、キーマン面談を必ず行うこと。
メールだけは成功率が下がります。
■ 値上げ成功のテクニック(営業心理)
✔ 「比較対象」を提示
競合平均・相場を提示すると納得感が高い。
✔ 「オプション値上げ」を避ける
一部だけ高くすると選ばれない。
→「複数項目セット」で提案。
✔ 「選択肢」を与える
- 価格そのまま:納期長め
- 価格UP:納期短め
など トレードオフ を設計。
✔ 取引停止を“最終手段”とする
不採算顧客は値上げできなくても撤退検討。
■ 失敗する値上げパターン
❌ 根拠が曖昧
「原価が上がったから」だけでは納得されない。
❌ 全顧客に同一対応
価格弾力性は顧客ごとに違う。
❌ いきなり通知文だけ
交渉の余地を残さず、不信感を与える。
❌ 実施後のフォローなし
離脱が見えてから慌てる。
■ 値上げが成功した企業の事例(要点)
事例①:金属加工業
- 単価表の全面見直し
- 特急料金20%加算
→ 粗利率 18% → 30%
事例②:食品加工業
- 人件費高騰分を転嫁
- 包装単価を5〜10%UP
→ 粗利が月50万円改善
事例③:サービス業
- 上位プラン新設
- リピート顧客に重点提案
→ 客単価20%UP
■ 値上げは“企業の未来を守る行動”
値上げをためらう経営者に
支援現場ではこう伝えています。
「値上げしないと、
いずれ撤退が必要になります。」
「お客様に継続提供するために値上げする」
という姿勢こそ、誠実な経営です。
■ まとめ:値上げは「最短で粗利を増やす投資」
最後に成功の要点を整理します。
✔ 根拠を数値化する
✔ 低採算顧客から優先
✔ 伝え方を設計(条件変更・安定供給)
✔ 定期的に見直す習慣づけ
✔ 顧客フォローで離脱を最小化
💬 値上げは勇気ではなく、準備で決まる。
それが、経営改善の“勝ちパターン”です。


