■ はじめに:経営改善計画が“失敗する理由”は決まっている

経営改善計画は、正しく運用すれば

  • 財務体質の改善
  • 返済負担の軽減
  • 粗利改善
  • 資金繰りの安定
    につながる強力な仕組みです。

しかし、現場では“改善が進まない企業”に共通する
「誤解」「思い込み」「行動パターン」
が確実に存在します。

本記事では、その代表例を体系的に整理します。


■ よくある誤解①

「計画書を作れば、経営は勝手に良くなる」


❌ これは最大の誤解です。

計画書は「地図」であって、
実際に歩くのは経営者と会社です。

よくある失敗例

  • 計画書を作って満足してしまう
  • 計画書を社員に共有しない
  • 計画書の数字を見るのが年に数回だけ
  • 変更点に気づいても修正しない

経営改善は“書くこと”より
**“続けること(モニタリング)”**が本質です。


■ よくある誤解②

「金融機関は計画書の“内容”より“見た目”を重視している」


❌ 金融機関が判断するのは「実現性」

計画書の体裁は確かに大切ですが、
銀行が見ているのは以下。

  • 粗利改善の根拠
  • 回収・支払いサイトの妥当性
  • 投資の回収見込み
  • 行動計画が数値化されているか
  • 経営者の姿勢(情報開示・誠実さ)
  • モニタリングができるか

外観より 本質的な改善策 を重視します。


■ よくある誤解③

「リスケ(条件変更)は“逃げ”であり、信頼を失う」


❌ 実務はまったく逆です。

返済が厳しい時に相談せず、
遅延してから連絡する方が、
銀行の信頼は大きく損なわれます。

理由

  • 早期相談は評価される
  • 返済遅延後の相談は「事後報告」になる
  • 金融機関は事前に“準備”したい
  • リスケは立て直しのための正式な手続き

支援機関からも、
「苦しくなる前に相談した企業の方が再建しやすい」
というデータがあります。


■ よくある誤解④

「売上さえ上がればすべて解決する」


❌ 売上より粗利が重要。

売上が増えても、

  • 低粗利
  • 赤字受注
  • 不採算顧客
  • 過剰外注
    が増えると、むしろ資金繰りは悪化します。

よくある失敗例

  • 売上を追いすぎて採算が悪化
  • 大口顧客への価格交渉ができない
  • 人を入れすぎて人件費が増加
  • 一時的な売上に依存する

経営改善計画では、
まず 粗利構造の改善 → 売上拡大
の順番で進めます。


■ よくある誤解⑤

「経費削減=まず固定費カット」と考える


❌ 経費削減の優先順位は次の通り

1️⃣ 不採算事業の縮小
2️⃣ 外注費の適正化(内製化含む)
3️⃣ 原価(粗利)改善
4️⃣ 業務効率化
5️⃣ 最後に固定費の削減

固定費ばかりを削りすぎると、
逆に売上力が下がることがあります。


■ よくある誤解⑥

「社員に数字を見せると不安にさせる」


❌ 事実は逆。

数字を公開することで、
社員の意識が変わり、改善が早まります。

成功企業の共通点

  • 粗利管理を現場と共有
  • KPIを社員が理解
  • 改善会議に社員が参加
  • 自分ごととして動き出す

数字を隠す会社は、改善速度が極端に遅いです。


■ よくある誤解⑦

「相談先を増やすと経営が混乱する」


❌ 経営改善では“相談相手がいないこと”が最大のリスク。

特に、

  • 認定支援機関
  • 金融機関
  • 税理士
  • 社外CFO
    の4者の連携が取れると、改善は格段に加速します。

1人で考える経営は、意思決定速度が遅く、
再建に失敗する確率が高まります。


■ 失敗事例(実務で多いパターン)


❶ 数字が出てこない

月次試算表や資金繰り表がなく、
改善ポイントが見えない。


❷ 改善の優先順位を間違える

売上アップ施策ばかりやり、
粗利改善が進まず資金繰りが改善しない。


❸ 社内が協力しない

数字や方針が共有されず、
現場の動きがバラバラ。


❹ 改善行動が曖昧

「頑張ります」「やります」など抽象的で、
行動が数値化されていない。


❺ モニタリングができない

毎月の振り返りがなく、計画が形骸化する。


❻ 銀行への報告が遅れる

不信感につながり、支援が受けにくくなる。


■ 成功への転換ポイント(改善策)


✔ 数字を月次で管理

月次試算表+資金繰り表のセットが必須。

✔ 優先順位は「粗利→業務効率→売上」

土台を固めてから攻める。

✔ 社内への透明性アップ

数字を共有し、改善会議を実施。

✔ 行動KPIの導入

受注→加工→納品→入金まで“プロセスの改善”を重視。

✔ モニタリングで“計画を動かす”

計画は実行しながら修正していくもの。

✔ 銀行との関係構築

早期相談・早期報告が信頼を作る。


■ まとめ:誤解をなくせば、改善は必ず進む

再建に失敗する企業には共通点があります。
逆に、
誤解を取り除き、正しい順番で実行する企業は必ず再建できる。

  • 計画書は“作るより運用”
  • 見た目より“実現性”
  • リスケは逃げではない
  • 売上より“粗利”
  • 固定費カットより“原価・業務改善”
  • 数字の公開は味方
  • 相談相手が多いほど成功率が上がる

これらを理解して進めれば、
経営改善計画は“最強の再建ツール”になります。

💬 誤解をなくせば、経営は必ず前に進む。