企業の収益性を測るうえで、「営業利益率」と「経常利益率」は重要な指標です。どちらも売上に対する利益の割合を示すものですが、その意味や分析の視点には違いがあります。本記事では、両者の違いや計算方法、分析のポイントについてわかりやすく解説します。


1. 営業利益率と経常利益率の違いとは?

◆ 営業利益率とは?

営業利益率は、「本業」で稼ぐ力を示す指標です。売上から売上原価や販売費、管理費などの本業にかかる費用を差し引いた「営業利益」を、売上高で割って算出します。

計算式:
営業利益率(%)= 営業利益 ÷ 売上高 × 100

本業の収益性を知るために、金融機関などでも重視される基本指標です。

◆ 経常利益率とは?

経常利益率は、「本業+本業外」の収益性を測る指標です。営業利益に「受取利息」や「為替差損益」などの営業外損益を加減して得られる「経常利益」を基に計算されます。

計算式:
経常利益率(%)= 経常利益 ÷ 売上高 × 100

経常利益には、財務活動による収益や費用も含まれるため、より総合的な企業活動の収益性を表します。


【図解】営業利益率と経常利益率の違い

売上高
└─ 売上原価
└─ 売上総利益
└─ 販売費・一般管理費
└─ 営業利益 ←営業利益率の対象
└─ 営業外収益・費用(受取利息・支払利息など)
└─ 経常利益 ←経常利益率の対象

2. 業種別の目安と判断基準

◆ 営業利益率の目安

営業利益率評価
0%以下赤字・改善必須
0~5%平均的
5~10%優良企業
10~15%超優良企業

※目安は業種によって異なるため、同業他社との比較が必要です。

◆ 経常利益率の目安

経常利益率の平均は、全業種平均でおおよそ「4%前後」とされます。10%を超えると、資金調達や資産運用を含めた総合的な経営力が高いと見なされます。


3. どちらが重要?目的によって使い分ける視点

一般的には、「営業利益率」の方が重視される傾向があります。理由は、企業の本業で安定した利益を出せているかどうかが、経営の健全性を判断する上で基本となるからです。

一方、「経常利益率」は財務活動も含めた総合的な収益力を評価するため、金融機関や投資家にとっては重要な判断材料となります。


4. 指標の比較による財務分析

◆ 経常利益率 > 営業利益率

営業外収益(受取利息や配当金など)が多いケース。本業の利益率は平均的でも、投資や金融面での収益が大きい企業に見られます。

◆ 経常利益率 < 営業利益率

営業外費用(支払利息や為替差損など)が大きいケース。借入金が多く、財務負担が重い可能性があります。資金繰りや借入条件の見直しが必要です。


5. 利益率改善のためのポイント

◆ 営業利益率を上げる方法

  • 原価の見直し:仕入先の見直しや在庫管理の徹底
  • 販管費の削減:広告費や人件費の最適化
  • 高付加価値商品の投入:単価アップと粗利向上の両立

◆ 経常利益率を上げる方法

  • 借入コストの最適化:利率の見直し、借換えによる金利負担の軽減
  • 余剰資金の有効運用:定期預金や配当収益の確保
  • 為替リスク管理:ヘッジ取引や外貨口座の活用

6. 財務改善を進めるなら専門家の支援を活用

利益率は、企業の健全性と収益力を測る上での基本指標ですが、表面的な数値だけでは正確な経営判断は困難です。営業・経常両方の利益率をバランスよく分析し、課題を可視化したうえで改善を進めることが重要です。

キークレア税理士法人では、企業の実情に即した財務分析と改善提案を行っています。プロの視点で自社の課題を発見し、利益率向上を目指しましょう。


まとめ

指標対象内容意味
営業利益率本業(営業活動)の利益率営業活動が効率的かを測る指標
経常利益率営業+営業外収支の利益率企業活動全体の収益性を測る総合指標

本業が安定しているか(営業利益率)と、財務状況も含めた全体収益力(経常利益率)をセットで確認することで、より正確な経営判断が可能になります。