
企業の経営状況を把握するうえで欠かせない指標のひとつが「粗利(あらり)」と「粗利率」です。売上の中からどれだけの利益を確保できているかを示すこの指標は、収益力を評価し、改善の糸口を見つける手がかりにもなります。
この記事では、粗利と粗利率の定義や計算方法、他の利益との違い、そして改善に向けた実践的な方法までを詳しく解説します。
粗利とは?計算式と基礎知識
粗利(売上総利益)の定義
粗利とは、売上から売上原価を差し引いた金額を指します。これは、商品やサービスの販売により得られる「直接的な利益」であり、企業の基本的な収益力を測る重要な指標です。
計算式:
粗利 = 売上高 − 売上原価
実例で理解:小売業のケース
たとえば、ある商品を1,500円で販売し、仕入原価が1,000円だった場合、1個あたりの粗利は500円です。これを300個販売すると、粗利は500円×300個=15万円となります。
粗利率とは?利益率で見る経営効率
粗利率の定義と計算式
粗利率は、売上高に対する粗利の割合です。収益性の高さや、価格設定と原価管理のバランスを確認するうえで非常に有効な指標です。
計算式:
粗利率(%)= 粗利 ÷ 売上高 × 100
実例で確認:飲食店のケース
800円のラーメンを提供し、原価が500円だった場合、粗利は300円。粗利率は300 ÷ 800 × 100=**37.5%**となります。
他の利益との違いも押さえておこう
粗利は「売上−原価」ですが、それだけでは企業全体の儲けを測ることはできません。以下のような他の利益指標も存在します。
利益の種類 | 計算式 | 意味 |
---|---|---|
営業利益 | 粗利 − 販管費 | 本業での収益力 |
経常利益 | 営業利益 + 営業外収支 | 全体的な経営力 |
税引前利益 | 経常利益 + 特別利益 − 特別損失 | 税前の実質的な利益 |
当期純利益 | 税引前利益 − 法人税等 | 最終的な利益 |
粗利・粗利率から読み取れること
- 収益性の健全性:粗利が高い=原価を抑えて売上を確保できている証拠。
- 原価の妥当性:粗利率が低い=原価が高すぎる可能性。
- 商品の付加価値:高い粗利率=高付加価値を提供できている。
粗利を活用した経営改善の具体策
1. 営業利益との比較でコスト構造を分析
粗利が高いのに営業利益が低い場合、人件費や販管費が膨らみすぎている可能性があります。経費の見直しポイントを探りましょう。
2. 他社と比較して立ち位置を確認
同業他社の平均粗利率と比較すれば、自社の競争力や課題が見えてきます。たとえば、同規模・同業種のライバルと比較して大きな差があれば、価格戦略や仕入れ体制の見直しが必要です。
粗利改善の3つのアプローチ
① 仕入原価の見直し
- 原料の見直しや仕入先の変更
- ボリュームディスカウント交渉
- 購買管理の最適化
事例: 食品メーカーA社は、サプライヤーを再選定することで年間で1,200万円の原価削減に成功しました。
② 販売価格の戦略的見直し
- 市場価格とのバランスを取る
- AIによる動的価格設定(ダイナミックプライシング)
- プレミアム戦略による単価アップ
事例: 家具メーカーB社は、商品に保証延長やカスタマイズを加えて、平均販売単価を15%引き上げました。
③ 業務工程の最適化
- 工程の無駄を可視化して改善
- 在庫管理や受発注業務のデジタル化
- 従業員の作業効率向上
事例: 製造業C社は、IoTによる工場ラインの可視化で生産効率が25%向上し、粗利も増加しました。
【補足】粗利管理にはシステム活用が効果的
Excel管理では限界がある粗利分析や予実管理。業務の属人化やミスを防ぎ、経営判断を迅速にするには、クラウド型の予実管理システムの活用が有効です。
まとめ
粗利や粗利率は、企業の基礎的な収益力を測る大切な指標です。計算方法を理解し、他の利益と組み合わせて活用することで、より精緻な経営判断が可能になります。
改善のヒントは、「原価を抑える」「価格を見直す」「業務を効率化する」この3点。業界や自社の特性に応じた対策を講じ、より高い利益構造を目指しましょう。