
産地連携支援緊急対策事業の特徴は、
設備投資が中心で、補助対象が非常に幅広いこと です。
その中でも採択実績が多いのが、
国産原材料への転換を見据えた
加工・選別・包装ラインの新設・更新
に関する投資です。
本記事では、R4・R5採択事例を分析し、
どのような構想が 評価を得て採択されたのか を整理します。
採択事例の概要
対象:農産加工・冷凍食品・惣菜メーカー 等
課題:既存ラインが輸入材料仕様で、国産原料のばらつきに対応できない
対応:国産原料対応の新ライン整備
成果:国産化比率向上と供給安定性の確保、地域連携強化
審査が高評価した理由は、
設備更新=コスト削減ではなく、調達構造転換と販路拡大に直結していた点 です。
評価ポイント①
国産原材料特有の課題に設備機能が直結している
実際の採択事例では、
- サイズの不揃い
- 異物混入のリスク
- 品質ばらつき
- 水分量による加工影響
など、国産原料特有の性質に対応するための機能が
設備スペックとして整理されています。
例)
| 課題 | 投資機能 | 効果 |
|---|---|---|
| サイズばらつき | 光学選別+追加選別工程 | 安定生産と品質保持 |
| 芯・硬度の違い | 切断刃仕様変更 | 歩留まり改善 |
| 水分差による変形 | 低温搬送制御 | 仕上品質の安定 |
つまり、
「既存設備でなぜ不可能か」が説明できている構想 が通るということです。
評価ポイント②
産地側との規格統一・品質基準づくり
採択事例では、
- 生産者への規格基準共有
- 品質ばらつきの許容範囲設定
- 選別体制の構築(産地 or 工場側)
といった内容が、
設備機能とセット で記載されています。
設備は単なる機械ではなく、
産地と共通の品質基盤を作るツール
という位置づけが評価ポイントです。
評価ポイント③
「新商品」「新販路」が説明されている
設備投資が導線となり、
- プレミアム商品ラインの創出
- 量販店・外食チェーンへの販路拡大
- 付加価値向上と価格転嫁の実現
が示されています。
審査では、
売上が上がる投資であること
が必ず確認されます。
評価ポイント④
CO2削減とフードロス削減に言及している
採択事例では、
- 国産材調達による輸送距離短縮
- 規格外品活用によるロス削減
といった ESG効果 が整理されています。
農政補助金では特に、
ESG視点があるか=構想の格を上げる指標
として扱われます。
実務で参考となる構想整理の手順
加工・選別・包装ラインの更新で申請する際には、
以下の順が最も合理的です。
- 国産材料に対応できない現状課題
- 生産工程のどこで問題が起きているか
- 導入ラインの具体機能
- その結果として何が改善されるか
- 新たに売れるものは何か
- 産地側にも利益があるか
- ESG面の効果(輸送距離・廃棄削減)
この順で整理できれば、
採択事例の型と同一 になります。
注意すべき「落とし穴」
次の場合、不採択リスクが高まります。
- 設備業者任せでストーリーがない
- 既存設備の延命に見える
- 産地との協議が全く進んでいない
- 売上・利益シミュレーションがない
審査側が最も嫌うのは、
「機械買ったけど成果が出なかった」
という未来が想定される計画です。
まとめ
国産原料対応ラインの事例が評価されるのは、
- 国産原料特有の課題に対応
- 規格統一を含む産地連携が前提
- 新商品・新販路まで見据えた設計
- ESG効果が明確
の4点が揃っているからです。
単なる設備更新ではない
調達構造転換の起点となる投資 として
設計できている点が重要です。


