はじめに
中小企業の経営改善の現場にいると、
経営者の方があまりにも意識できていないと感じるテーマがあります。
それが、**価格設定(値決め)**です。
実際の現場では、
価格表が数十年前のまま更新されていない企業も珍しくありません。
数十年前といえば、まさにデフレの真っただ中です。
特に大手企業の下請けとして取引してきた会社では、
- 購買担当者の要請に応じて値下げを重ね
- そのまま価格を見直さない状態が続いている
というケースをよく見かけます。
値上げを打診しても、
「それは製造現場でのコスト削減で対応してください」
といった対応をされてしまうと、
交渉する気力が削がれてしまうのも無理はありません。
結果として、
- 利益は出ていない
- しかし取引量が多く、断れない
- 価格は昔のまま
という状況に陥っている企業は、決して少なくありません。
世の中の経済状況は、すでにインフレ
一方で、現在の経済環境は明確にインフレ局面です。
インフレの特徴は、
物価が複利的に上昇していく点にあります。
最初は気にならなかった原材料費や外注費も、
年月を重ねるにつれて確実に負担になっていきます。
- 気づいたら仕入原価が上がっている
- 売上は増えているのに、利益が出ない
- 忙しいのに赤字が解消されない
こうした状態になってから相談に来られる企業が、
最近は本当に増えています。
売上を拡大しても、利益は改善しにくい
「値決めは経営である」
これは、稲盛和夫氏の有名な言葉ですが、
現場にいるとその意味を強く実感します。
当たり前の話ですが、
赤字で売れば、売るほど赤字は拡大します。
つまり、
- 利益が出ていない取引を続けながら
- 売上だけを拡大しても
経営が楽になるわけではありません。
赤字が出ている場合、
まず確認すべきなのは、
- どの取引で
- 本当に利益が出ているのか
という点です。
その整理をした上で、
売上拡大を目指すかどうかを判断する必要があります。
値上げに対する恐怖
とはいえ、値上げには大きな不安が伴います。
「値上げしたら、取引が切られるのではないか」
「売上が減ってしまうのではないか」
そう感じるのは、自然なことです。
ただ、現在はインフレ環境にあり、
大手企業の購買部門も日常的に値上げ相談を受けている状況です。
ある会社では、値上げの相談を進めていましたが、
担当者レベルで話が止められ、半年以上進展しませんでした。
最終的に社長が腹を決め、
「この価格でなければ、取引を続けることはできない」
と最大の取引先に伝えたところ、
大手企業側もすぐに切り替えができず、
結果として希望価格が受け入れられました。
すべてが同じ結果になるわけではありませんが、
交渉しなければ状況は何も変わらないのも事実です。
政府も中小企業の値上げを後押ししている
制度面でも環境は変わりつつあります。
2026年1月1日から、
「下請法」は「取適法(取引適正化法)」へと改正されました。
この改正では、
- 原材料費高騰下での価格転嫁促進
- 中小企業の賃上げ原資の確保
- 取引環境の改善・公正化
といった点が明確に打ち出されています。
以前に比べると、
値上げ交渉を行いやすい環境が整いつつあると言えます。
値上げ交渉に取り組むべきタイミング
インフレ環境の中で、
多くの中小企業が値上げ交渉に動き始めています。
経営改善において、
値上げは最も早く効果が出やすい施策の一つです。
もちろん簡単ではありませんが、
環境が整いつつある今こそ、
一度立ち止まって値決めを見直す必要があると感じています。
「今までそうしてきたから」ではなく、
これからも続けられるかという視点で、
価格を考えることが求められる時代になっています。

