
企業が持つ資産をいかに有効活用して収益を上げているかを示す「総資産回転率」は、財務分析において欠かせない指標のひとつです。本記事では、総資産回転率の意味や計算方法、業種別の平均値、そして改善のポイントまでをわかりやすく解説します。
総資産回転率とは?基本の考え方
総資産回転率とは、企業が保有する総資産をどれだけ効率よく売上に結びつけているかを表す指標です。
総資産回転率の定義
総資産回転率(回)= 売上高 ÷ 総資産
例えば、総資産が1億円で売上高が12億円なら、総資産回転率は12回。つまり、総資産が1年間で12回「回転」して売上を生み出したことになります。
この「回転」とは、商品の仕入・生産 → 販売 → 売上回収という資金の循環を意味します。
💡 ポイント
高いほど効率的=少ない資産で多くの売上をあげている
図解:総資産回転率の構造
┌──────────────┐
│ 総資産 │(設備、在庫、売掛金など)
└──────────────┘
↓
活用して
↓
┌──────────────┐
│ 売上高 │(1年間にいくら稼げたか)
└──────────────┘
総資産回転率=売上高 ÷ 総資産
計算例と平均的な数値
計算例
- 総資産:1億円
- 売上高:12億円
→ 総資産回転率 = 12億 ÷ 1億 = 12回
この企業は、1億円の資産を活用して、1年で12億円の売上を生んでいる、非常に効率的な状態といえます。
業種別の平均値(中小企業庁 2018年データ)
業種 | 平均回転率 |
---|---|
小売業 | 1.78回 |
卸売業 | 1.70回 |
建設業 | 1.25回 |
製造業 | 1.02回 |
不動産・賃貸業 | 0.35回 |
サービス業(その他) | 1.22回 |
全業種平均 | 1.12回 |
業種により大きく異なるため、自社と同業種で比較することが重要です。
総資産回転「期間」でも把握できる
「回数」ではなく「日数」で把握したい場合は「総資産回転期間」を使います。
計算式
総資産回転期間(日)= 総資産 ÷ 1日あたり売上高
計算例
- 売上高:4億円/年 → 約109.6万円/日(4億 ÷ 365)
- 総資産:2億円
→ 2億 ÷ 109.6万円 ≒ 182日
この場合、総資産と同額の売上を稼ぐのに約182日かかっていることになります。
総資産回転率と他の指標との違い
指標 | 着眼点 | 分子 | 単位 |
---|---|---|---|
総資産回転率 | 資産の使い方 | 売上高 | 回 |
ROA | 資産の稼ぐ力 | 利益 | % |
ROE | 自己資本の稼ぐ力 | 利益 | % |
総資産回転率=効率の視点
ROA・ROE=利益の視点
両方を組み合わせることで、資産の運用と収益性のバランスを把握できます。
総資産回転率を改善する方法
方法1:売上高を増やす
売上高を伸ばせば、分子が増えて回転率は上がります。以下のような施策が有効です。
- 新規顧客の開拓
- 既存顧客の購入単価アップ
- 商品力の見直し(ニーズに即した開発)
- 売掛金の回収期間短縮
方法2:総資産を減らす
分母を減らすことで回転率を高めることも可能ですが、注意が必要です。
- 遊休資産の売却
- 過剰在庫の削減
- 借入金の整理(過大なキャッシュ保有も見直す)
⚠ 無理な資産削減は、売上減のリスクにつながるため注意が必要です。
まとめ:資産を効率よく回して、強い経営体質へ
総資産回転率は、「限られた資産でどれだけ売上をあげられているか」を示す重要な指標です。高い回転率は、少ない資本で多くの成果を上げている証です。
- 計算は「売上高 ÷ 総資産」
- 同業他社との比較が重要
- 改善には「売上アップ」または「資産スリム化」が有効
企業の成長と財務の健全化を目指すなら、まずは自社の総資産回転率を把握し、効率的な経営の実現に役立てましょう。