
― 無償労働をなくすことが収益改善の近道 ―
前回は、積載率とルート最適化によって
1便あたりの粗利を高める考え方を解説しました。
今回は、運送業の現場で最も見過ごされがちなテーマ、
待機時間・積み降ろし時間に踏み込みます。
この時間を無視している限り、
どれだけ走り方を工夫しても、
粗利は確実に削られ続けます。
なぜ待機時間は利益を奪うのか
待機時間とは、
- 荷主先での順番待ち
- 倉庫での積み込み待ち
- 荷下ろしの段取り待ち
など、車両もドライバーも拘束されているが、売上が発生していない時間です。
この時間にも、
- ドライバー人件費
- 車両コスト
- 機会損失
が確実に発生しています。
にもかかわらず、多くの運送会社では
「仕方ないもの」として放置されています。
無償の待機が常態化する理由
待機時間が価格に反映されない理由は、主に次の3つです。
- 昔からそういうものだという慣習
- 契約・条件に明記されていない
- 実態を数字で把握していない
特に3つ目が致命的です。
待機時間が
「長い気がする」
「よく待たされている」
という感覚レベルでは、交渉材料になりません。
待機時間を「見える化」する
価格転嫁の第一歩は、
事実を数字で示すことです。
最低限、次の項目を記録します。
- 顧客別の平均待機時間
- 便ごとの待機時間
- 月間合計待機時間
- 待機による人件費相当額
これだけで、
- 明らかに負担が大きい取引先
- 改善余地のある現場
が浮き彫りになります。
重要なのは、
正確さよりも継続的に比較できる状態です。
待機時間は「時間単価」で考える
待機時間を価格に反映する際は、
「感情」ではなく時間単価で考えます。
例えば、
- ドライバー1人あたりの時間単価
- 車両1時間あたりのコスト
を合算すれば、
1時間待機=いくらの損失か
が明確になります。
この数字があって初めて、
- 待機料の設定
- 運賃への上乗せ
- 条件変更の提案
が現実的になります。
価格転嫁の具体的な方法
待機時間を価格に反映する方法は、
必ずしも「待機料を別途請求する」だけではありません。
実務では、次のような方法があります。
- 一定時間超過分を待機料として請求
- 基本運賃に織り込んで改定
- 納品時間幅を広げることで回避
- 条件変更に応じて運賃調整
重要なのは、
「無償で待つ」選択肢をなくすことです。
顧客との交渉で意識すべきポイント
待機時間の交渉は、対立ではありません。
意識すべきポイントは次の3つです。
- 感情ではなく事実で話す
- 相手の業務改善にもつながる提案をする
- 輸送の安定性という価値を伝える
例えば、
- 待機時間削減=配送の安定化
- ドライバー負担軽減=事故リスク低下
など、顧客側のメリットも必ず存在します。
よくある失敗例
待機時間対策でよくある失敗は次のとおりです。
- 感情的にクレームとして伝える
- 数字を示さず一律値上げする
- すべての顧客に同じ対応をする
- 現場と情報共有していない
待機時間問題は、
経営課題として整理しないと解決しません。
まとめ:時間は最も重要な経営資源
運送業において、
時間は売上を生む源泉であり、
同時に最も失われやすい資源です。
待機時間を放置することは、
- 無償労働を容認すること
- ドライバーを疲弊させること
- 利益を削り続けること
と同義です。
数字で把握し、
条件に反映し、
交渉する。
これだけで、
運送業の粗利構造は確実に改善します


