
― すべての製品を伸ばす必要はない ―
前回までは、製造業の収益改善における
- 原価構造の理解
- 工数とサイクルタイムの管理
- 在庫回転率とキャッシュサイクル最適化
について解説してきました。
今回はその延長線上であり、
収益改善の中核とも言える
プロダクトミックス最適化
に踏み込みます。
なぜ製造業では「品種が増えるほど儲からない」のか
多くの製造企業では、次の現象が起こります。
- 取引先の要求に応じてラインナップが増える
- 多品種少量生産の比率が高まる
- 現場が複雑化し、生産性が低下する
- 在庫が増え、資金繰りが苦しくなる
つまり、品種拡大は
売上増加とセットで非効率を招くリスクがあります。
その結果、忙しいのに利益が残りません。
製品ごとに「稼ぎ力」は異なる
製品には、次のような違いがあります。
| 観点 | A製品 | B製品 |
|---|---|---|
| 粗利率 | 高い | 低い |
| 生産性 | 高い | 低い |
| 在庫リスク | 小 | 大 |
| 顧客依存 | 小 | 大 |
すべての製品を平等に扱う必要はありません。
重要なのは、
どの製品が利益を支えているのか
どの製品が利益を削っているのか
を見える化することです。
プロダクトミックス改善の打ち手(3ステップ)
次のステップで整理すると実行しやすくなります。
STEP1:現状を把握する
製品別に
- 売上
- 粗利額
- 販売量
- 生産工数
- 在庫回転率
を出し、評価軸を揃えます。
STEP2:分類する
分類するだけで、次の方針が明確になります。
- ①:最優先で伸ばす
- ②:改善して利益を伸ばす
- ③:選択的に対応する
- ④:縮小・撤退検討
「全部やる」から
**「選んで伸ばす」**への転換が必要です。
STEP3:戦略を決める
例)
- ①:値上げ+販促強化+生産性向上
- ②:価格見直し、改善投資
- ③:取引条件変更、量を制限
- ④:赤字継続なら撤退も視野に
“やめる勇気”が利益を押し上げる
製造業の経営者にとって、製品をやめる判断は痛みを伴います。
しかし、
- 売上があっても儲からない製品
- 手間ばかりかかる製品
- 在庫リスクが高い製品
は、会社の体力を奪い続けます。
量より質へ。
売上より粗利へ。
この意識が、収益改善を加速させます。
よくある失敗例
プロダクトミックス改善で見られる失敗は次のとおりです。
- 数字ではなく「思い入れ」で判断してしまう
- 売上規模だけで評価してしまう
- 価格や条件を変えずに続けてしまう
- 現場に説明せず、混乱を招く
数字で語り、
改善意図を共有することが欠かせません。
まとめ:勝ち筋を伸ばすのが収益改善
製造業で利益を最大化するには、
- 儲かる製品に集中する
- 改善すべき製品を見極める
- 撤退対象を明確にする
という「選択と集中」が不可欠です。
プロダクトミックス改善は、
最も効果が大きく、
即効性のある収益改善策です。


