
― 不良流出ゼロと省力化を両立した「検査改革」 ―
中小製造業の現場では、
「品質検査に人手が取られて、改善に手が回らない」
という状況が生まれがちです。
検査工程は、
- 省力化余地が大きい
- 品質リスクと直結する
- 現場全体の負荷に影響する
という特徴があります。
本記事では、画像検査システムの導入により省力化と品質安定化を実現した事例をもとに、一般型で評価されたポイントを整理します。
1.導入前の課題|検査が人依存で現場が止まる
この事業者は、精密部品の加工を行う製造業。
高い品質要求に対応してきた一方で、次の課題を抱えていました。
- 目視検査に熟練者が必要
- 判定基準が属人化し、品質にばらつき
- 繁忙期は検査待ちが発生し、出荷遅延のリスク
- 不良流出が発生すると、信頼低下につながる
つまり、品質維持が人手と精神論に頼っている状況でした。
2.省力化の視点|検査は「付加価値が生まれにくい工程」
製造現場では、検査は必要不可欠な工程ですが、
付加価値が生み出されにくい工程でもあります。
この事業者はまず、
「誰が、どれだけの時間を検査に使っているか」
を可視化しました。
分析の結果、
- 熟練者がほぼ検査対応に張り付き
- 不良判定の再確認で二度手間が発生
- 検査量増加=品質リスク増加という矛盾
が浮き彫りになりました。
この時点で、
改善すべきは“検査の効率”ではなく“検査のあり方”
であることが見えてきます。
3.導入した投資内容|画像認識による自動検査システム
この事業者は、画像認識を活用した自動検査システムを導入しました。
具体的には、
- 製品をカメラで撮影し、AI判定で外観検査
- 判定基準を数値化し、ばらつきを排除
- 検査結果は自動保存し、トレーサビリティを確保
- NG品は自動排出、再検査導線を明確化
という構成で、検査工程の再現性・効率を向上させています。
一般型で評価されるのは、
- 人ではなく設備が「合否を判断できる」状態
- 品質基準の標準化(属人性排除)
- 品質事故の予防策が具体化
という点です。
4.導入後の効果|手放し運転できる検査体制
導入後の効果は次の通りです。
- 検査要員が半減、熟練者は改善へ配置転換
- 不良判定の見逃しリスクを大幅に削減
- SPEEDとACCURACYの両立=出荷安定
- 検査工程によるライン停止が解消
- トレーサビリティ確保によりクレーム対応時間が短縮
特に重要なのは、
検査が足かせではなく、品質の土台になった
ことです。
現場全体の効率と信頼性が向上しており、
省力化が「現場力の強化」として機能しています。
5.なぜこの事例は採択されたのか
要点は次の3つです。
① 品質リスクと経営課題を結び付けた
不良流出=取引継続リスク/機会損失
という構造を明確に説明。
② 効果が数字で語れる
- 検査工数削減
- 不良率低下
- 出荷安定化
などの効果を示せる。
③ DXの本質を捉えている
単なる設備投資ではなく、
「判断の自動化」を実現。
6.製造業が学ぶべきポイント
- DX=「見える化」ではなく「自動化」まで実現する
- 検査工程は最もリスクが高い省力化対象
- 品質と生産性の両立を数字で示す
一般型では、
設備導入が品質保証体制の強化になるか?
が重要な評価ポイントです。


