産地連携支援緊急対策事業を検討する際、
よく話題に上がるのが
「国産原材料の取扱量をどれだけ増やせばよいのか」 という点です。

一部の資料では
「10%以上の増加」という表現が見られることから、

  • 「10%に達しないと不採択なのでは?」
  • 「数値を満たさなければ申請できないのか?」

と不安に感じる方も少なくありません。

結論から言うと、
国産原材料の取扱量増加は“必須の数値要件”ではありません。

本記事では、
R4・R5の採択事例をもとに、
国産原材料の取扱量増加がどのように説明され、評価されているのか
を整理します。


前提整理|「10%」は必須要件ではない

R7補正予算の制度説明資料では、
産地連携計画に記載すべき取組内容の例として、

  • 国産原材料の利用拡大(10%以上の取扱量増加)

といった表現が示されています。

ただし、これは、

  • すべての年度で一律に求められる法定要件
  • 数値を満たさなければ不採択になる条件

ではありません。

実際の審査では、
「どの程度増えるか」よりも
「なぜ増えると言えるのか」

という説明の妥当性が重視されています。


採択事例に共通する考え方①

現状の取扱量が数値で整理されている

R4・R5の採択事例では必ず、

  • 現在、年間でどれだけの原材料を扱っているか
  • そのうち国産原材料がどの程度か

が、数量ベースで整理されています。

増加の説明は、
必ず「現状値」を起点 に行われています。

現状が曖昧なままでは、
増加の妥当性を判断できません。


採択事例に共通する考え方②

設備能力から増加量を逆算している

採択事例では、

  • 導入予定の設備の処理能力
  • 稼働日数・稼働率
  • 対応可能な原材料の種類

をもとに、

どれだけ国産原材料を新たに処理できるか

が説明されています。

ここで重要なのは、
設備導入=増加 ではなく、

設備能力 → 処理可能量 → 取扱量増加

という因果関係が整理されている点です。


採択事例に共通する考え方③

「部分的な切り替え」で説明されているケースが多い

採択事例の多くは、

  • 全原料を国産に切り替える
  • 大規模な事業転換を行う

といった構想ではありません。

実務的には、

  • 特定製品の原料だけを国産化する
  • 一部ラインのみ国産原料対応にする

といった 部分的な切り替え によって、
取扱量の増加が説明されています。


採択事例に共通する考え方④

産地側の供給体制とセットで説明している

数量増加の説明では、

  • 産地がその数量を安定的に供給できるか
  • 継続性があるか

が同時に確認されます。

採択事例では、

  • 複数生産者との連携
  • 規格外品・未利用資源の活用
  • 作付や生産量の拡大計画

など、
供給面の裏付け が簡潔に示されています。


数値が明示されていない採択事例もある

R4・R5の採択事例の中には、

  • 明確な増加率を示していない
  • 「増加が見込まれる」「取扱量が拡大する」といった表現に留めている

ケースも存在します。

これらの事例でも評価されているのは、

  • 調達構造が変わること
  • 国産原材料の利用が実質的に広がること

が、事業構想として合理的に説明されているか
という点です。


不採択になりやすい説明の特徴

一方で、評価されにくい計画には共通点があります。

  • 増加の根拠が設備導入だけになっている
  • 数量ではなく金額で説明している
  • 産地側の供給体制が曖昧
  • 増加が一時的なものに見える

これでは、
実現性の判断ができません。


R8公募を見据えた実務的な整理ポイント

次回公募を見据えるなら、
以下を整理しておくことが重要です。

  1. 現在の原材料取扱量(国産・輸入の内訳)
  2. 国産原材料を増やす対象(製品・ライン)
  3. 設備導入後の処理可能量
  4. 産地側の供給体制と継続性

この整理ができていれば、
増加率の数値そのものに振り回される必要はありません。


まとめ

国産原材料の取扱量増加は、

  • 一律の数値要件ではなく
  • 事業構想としての合理性・実現性 が評価されるポイントです。

採択事例では、

  • 数量ベースで現状と将来を整理し
  • 設備能力と産地連携を結びつけて説明する

という構成が一貫しています。

R8年3月頃と見込まれる次回公募に向けては、
「何%増やすか」ではなく
「なぜ増えると言えるのか」

を整理することが重要になります。