中小企業新事業進出補助金というと、「数千万円規模の大きな投資が必要」という印象を持たれがちです。
しかし実際の採択事例を見ると、補助額750万円前後の比較的小規模な計画でも十分に採択されていることが分かります。

本記事では、小規模事業者や従業員数の少ない企業が、どのようにして750万円ラインの事業計画を組み立て、採択に至っているのか、その現実的なパターンを整理します。


■750万円ラインが意味するもの

補助額750万円は、制度上の最低ラインに近い水準です。
この規模感の計画で採択されている事業には、次のような特徴があります。

  • 事業のスケールは小さいが、新市場性が明確
  • 設備投資は必要最小限だが、事業の中核を押さえている
  • 数字が堅実で、実行可能性が高い

つまり、「小さくても筋が良い事業」が評価されているということです。


■パターン①:既存設備+追加設備で成立する新事業

最も多いのが、既存設備を活かしつつ、一部設備を追加する新事業です。

例としては、

  • 既存の加工機に対応する追加治具・周辺設備の導入
  • 一部工程を内製化するための小規模設備投資
  • 既存ラインを活用した新用途対応設備の導入

投資額を抑えつつも、
「この設備がなければ新事業が成立しない」という必然性が明確な点が評価されています。


■パターン②:小ロット・試作市場への進出

大規模量産ではなく、小ロット・試作・特注対応市場に狙いを定めた新事業も、750万円ラインで多く採択されています。

  • 試作・開発支援向けの加工事業
  • 高付加価値・少量生産の製品開発
  • ニッチ用途に特化した部品・製品提供

市場規模は限定的でも、
価格競争に陥りにくく、利益率を確保しやすい点が評価ポイントです。


■パターン③:既存事業の「やっていなかった部分」を事業化

新しい技術や設備を導入するのではなく、
これまで手を付けていなかった工程やサービスを事業化するケースも見られます。

  • 外注していた工程の内製化+外販
  • 社内ノウハウを活かした付帯サービス提供
  • 既存顧客向けの新メニュー追加

このタイプの新事業は、
実行可能性が非常に高く、計画倒れのリスクが低い点が評価されます。


■パターン④:サービス要素を組み合わせた小規模新事業

製造業や建設業でも、
設備投資を抑えたサービス型の新事業が750万円ラインで採択されています。

  • 設備+保守・点検サービス
  • 製品販売+定期メンテナンス
  • 技術支援・コンサルティング型サービス

モノ売り単体ではなく、
サービス要素を加えることで新市場性を確保している点が特徴です。


■750万円ラインの計画で重視されているポイント

① 投資額の妥当性が説明できている

「なぜこの金額なのか」「なぜこれ以上でもこれ以下でもないのか」が論理的に説明されています。

② 新事業売上の規模が現実的

最初から大きな売上を見込まず、
段階的に伸ばす計画になっている点が評価されています。

③ 既存事業とのシナジーが明確

人材・設備・顧客を共有できる構造になっており、
追加負担が過度にならない計画です。


■小規模事業者がやりがちなNGパターン

一方で、750万円ラインを狙う計画でよくある失敗もあります。

  • 投資額を小さくしすぎて事業の中核が弱い
  • 「とりあえず新製品」となってしまい新市場性が薄い
  • 売上計画が楽観的すぎる、または曖昧

小規模だからこそ、
事業の芯を絞り込むことが重要になります。


■小規模でも採択される計画の共通点

採択された事例を総合すると、次の点が共通しています。

  • 投資対象が明確でブレていない
  • 新市場・新用途の説明が簡潔
  • 既存事業との関係が整理されている
  • 数字が保守的で信頼できる

「小さいから不利」ではなく、
「小さいからこそ分かりやすい」計画が評価されていると言えるでしょう。


■まとめ:750万円ラインは“狙いどころ”になり得る

中小企業新事業進出補助金では、
大規模投資だけでなく、750万円前後の堅実な新事業も確実に採択されています。

重要なのは、

  • 投資額の大小ではなく
  • 事業としての必然性と新市場性
  • 実行できる現実的な計画

です。

小規模事業者にとって、750万円ラインは
無理なく挑戦でき、かつ評価されやすい現実的な選択肢と言えるでしょう。