製造業は一見すると「モノを作れば利益が出る」ように思われがちですが、実際には
粗利構造が最も崩れやすい業界でもあります。


製造業で「売上はあるのに儲からない」理由

製造業の現場でよく聞く声があります。

  • 受注はあるが利益が残らない
  • 忙しい割に資金繰りが楽にならない
  • 原価は上がっているが価格に転嫁できない

これらの原因は、ほぼ共通しています。
原価構造と値決めが噛み合っていないのです。

特に製造業では、

  • 材料費
  • 外注費
  • 直接労務費
  • 間接費(設備・管理コスト)

が複雑に絡み合うため、
粗利の実態が見えにくくなりがちです。


製造業の粗利は「材料費」だけでは決まらない

製造業の原価管理で、最も多い誤解があります。

それは、
原価=材料費
と考えてしまうことです。

実際には、製造業の粗利を左右するのは、

  • 加工にかかる時間
  • 段取り・待ち時間
  • 手戻り・やり直し
  • 少量多品種対応による非効率

といった時間と工数の要素です。

材料費が同じでも、
製品Aと製品Bで粗利が大きく異なるのは、
この「見えない原価」が違うからです。


製造業の値決めが曖昧になりやすい理由

製造業では、次のような理由で値決めが曖昧になりがちです。

  • 図面を見て感覚で見積もっている
  • 過去の見積を流用している
  • 顧客からの指値に合わせている
  • 「この程度なら受けよう」と妥協している

その結果、
利益が出ない価格が標準化されてしまいます。

値決めが曖昧なまま受注を続けると、
売上は増えても粗利率は下がり続けます。


製造業がまずやるべき粗利改善の第一歩

製造業の粗利改善で、最初にやるべきことは明確です。

製品別・案件別に粗利を出すこと。

完璧な原価計算は不要です。
まずは、

  • 材料費
  • 外注費
  • 想定工数(時間)

を製品・案件ごとに紐づけるだけで構いません。

これだけで、

  • 明らかに割に合わない仕事
  • 利益を支えている製品

が浮かび上がります。


「忙しい製品」が儲かるとは限らない

製造業では、
生産量が多い=儲かっている
と錯覚しがちです。

しかし実際には、

  • 段取りが多い
  • ロットが細かい
  • クレーム・修正が多い

こうした製品ほど、
時間と人手を奪い、粗利を圧迫します。

重要なのは、
どの製品が、どれだけの粗利を生んでいるか
という視点です。


製造業の粗利改善は「選別」から始まる

製造業の収益改善は、
すべての製品を平等に扱うことではありません。

  • 利益が出る製品
  • 改善すれば利益が出る製品
  • 構造的に厳しい製品

を分けて考えることが必要です。

特に、
「昔からやっているが、今は利益が出ていない製品」
は、見直しの優先対象です。


まとめ:製造業の収益改善は“原価構造×値決め”で決まる

製造業の収益改善は、
設備投資や人員増強の前に、
粗利構造の見直しが不可欠です。

  • 原価を見える化する
  • 工数を意識する
  • 値決めに根拠を持つ
  • 利益が出る製品に集中する

この順番を守ることで、
製造業の収益体質は確実に改善します。