
これまでの4回で、収益改善の基本となる考え方を整理してきました。
- 第1回:収益改善は売上ではなく粗利から始まる
- 第2回:粗利は「単価・回転率・原価」で決まる
- 第3回:値決め・値上げは経営判断である
- 第4回:原価は下げる前に見える化する
今回は、その総仕上げとして
「赤字商品・赤字サービスをどう見極め、どう判断するか」
をテーマに解説します。
収益改善は、改善策を足すことだけでは完成しません。
やめる判断ができて初めて、収益構造は健全になります。
なぜ赤字商品が残り続けるのか
多くの中小企業では、
赤字商品・赤字サービスが分かっていても、なかなかやめられません。
理由は明確です。
- 昔からやっている
- 主力商品の“ついで”で受けている
- 顧客との関係性がある
- 売上は立っている
特に厄介なのが、
**「売上はあるが、粗利が出ていない仕事」**です。
数字を見ないまま放置すると、
黒字商品が赤字商品を支え続ける構造が固定化します。
赤字かどうかは「感覚」ではなく「粗利」で判断する
赤字かどうかを判断する基準は、
最終利益ではありません。
判断軸は、あくまで粗利です。
- その商品・サービスは、粗利を生んでいるか
- その粗利で、人件費・固定費を賄えているか
- 継続する意味があるか
ここで重要なのは、
「単体で黒字かどうか」ではなく、
会社全体の収益構造にどう影響しているかを見ることです。
よくある誤解:「忙しい=儲かっている」
赤字商品が残りやすい会社には、
共通する思い込みがあります。
それは、
忙しい仕事ほど価値があるという考え方です。
しかし現実には、
- 手間がかかる
- クレームが多い
- 値引き前提
- 利益が薄い
こうした仕事ほど、
会社の時間と体力を奪っていきます。
忙しさは成果ではありません。
粗利を生んで初めて、仕事は価値になります。
撤退判断の3つの基準
では、どのように撤退を判断すればよいのでしょうか。
おすすめの基準は、次の3点です。
① 粗利が構造的に改善できるか
値上げ、業務改善、原価見直しによって
改善余地があるかを検討します。
余地がなければ、撤退候補です。
② 将来の戦略と合っているか
今は赤字でも、
将来の主力や付加価値につながるかどうか。
単なる「惰性」で続いている場合は要注意です。
③ 経営資源を奪いすぎていないか
人・時間・資金を過剰に消費していないか。
他の利益商品に悪影響を与えているなら、
見直すべき段階です。
「全部やめる」必要はない
撤退判断というと、
極端に「やめる・続ける」の二択で考えがちですが、
必ずしもそうではありません。
- 価格を上げる
- 受注条件を厳しくする
- 対応範囲を限定する
- 特定顧客だけ整理する
こうした縮小・条件変更も、立派な収益改善策です。
重要なのは、
「なぜ続けるのか」を
数字で説明できる状態にすることです。
赤字商品を整理すると、会社は強くなる
実際に赤字商品を整理すると、
多くの企業で次のような変化が起こります。
- 現場の負担が減る
- 利益商品に集中できる
- 値決めに自信が持てる
- 経営判断が速くなる
短期的には売上が下がることもありますが、
粗利率は確実に改善します。
結果として、
「売上は少し下がったが、利益は増えた」
という状態に近づいていきます。
まとめ:収益改善とは「選択と集中」である
5回にわたって解説してきた収益改善の本質は、
突き詰めると非常にシンプルです。
- 粗利を見る
- 構造を理解する
- 数字で判断する
- やめる勇気を持つ
収益改善とは、
売上を増やすことではなく、
経営資源を正しく使うことです。
今回のシリーズが、
自社の収益構造を見直すきっかけになれば幸いです。


