第1回・第2回の採択結果を経て、第3回公募では採択件数が大きく増え、事例の幅も一段と広がりました。
その結果、一般型における**「採択されやすい事業計画の型」**が、かなり明確になってきています。

本記事では、第3回公募の採択結果を俯瞰しながら、

  • 採択件数拡大で見えてきた共通点
  • 第1回・第2回との違い
  • 次回公募(第4回以降)に向けて、事業者が準備すべきこと

を、これから申請を検討する事業者目線で整理します。


1.第3回公募の全体像|「量」より「型」がはっきりした回

第3回公募でも、採択の中心は引き続き製造業・建設業です。
一方で、第1回・第2回と比べると、次のような変化がはっきり見て取れます。

  • 採択事例の表現が洗練されている
  • 省力化の説明が「工程単位」から「経営単位」に広がっている
  • 設備・システム・人材配置を一体で語る計画が増えている

つまり第3回は、
「省力化できていますか?」という確認段階を超え、
「この投資で、事業はどう強くなるのか?」が本格的に問われた回

だと言えます。


2.第3回で目立った投資テーマ

第3回の採択事例を俯瞰すると、特に目立つテーマは以下の3つです。

① AI・高度DXの“実務活用”

第2回までは「DX導入」が目新しさとして評価されていた側面がありました。
第3回では、

  • AIによる検査・判定
  • データ連携による管理工数削減
  • 属人判断の仕組み化

など、実務レベルで人手を減らしているかどうかがより重視されています。

「AIを使います」ではなく、
「どの人の、どの作業が不要になるのか」
まで説明できている計画が採択されています。


② 設備投資+システム投資の組み合わせ

単体設備の導入だけでなく、

  • 設備+生産管理
  • 設備+在庫管理
  • 現場設備+本社管理システム

といった複合型の省力化投資が増えています。

これは、
「現場は楽になったが、管理は大変なまま」
という中小企業にありがちな状態を、補助金で一気に解消しようとする流れです。


③ 省力化を起点にした事業拡張

第3回では、省力化を

  • 新規受注拡大
  • 生産量増加
  • 新商品・新サービス展開

につなげる計画が、より自然に描かれています。

省力化が「守り」ではなく、
**「攻めのための前提条件」**として位置づけられている点が大きな特徴です。


3.第1回〜第3回を通じて見えた「採択される型」

3回分の採択結果を通して整理すると、
一般型で採択されやすい事業計画には、明確な型があります。

型①:課題 → 省力化 → 経営効果が一直線

採択されている計画は、

  1. 現在の経営課題
  2. 課題を生む工程・業務
  3. 省力化投資の内容
  4. 投資後の変化
  5. 経営への効果

が一本のストーリーとしてつながっています。

どれか一つでも欠けると、
「良い設備だが、なぜ必要か分からない」
という評価になりがちです。


型②:省力化後の“人の使い道”が明確

第3回では特に、

  • 省力化で浮いた人員をどこに回すのか
  • その結果、何ができるようになるのか

が説明されていない計画は、ほぼ評価されていません。

省力化はゴールではなく、
経営を前に進めるための手段であることが、より強く問われています。


型③:「自社でなければならない理由」がある

オーダーメイド性や工程特性など、

  • なぜ既製品ではダメなのか
  • なぜこの構成でなければならないのか

が説明できている計画ほど、評価が安定しています。

一般型では、
「この会社の、この工程だから、この投資」
という必然性が非常に重要です。


4.次回公募(第4回以降)に向けた実践的ポイント

ここからは、次回公募を見据えた実践的な整理です。

ポイント① 設備選びより「課題の言語化」が先

多くの事業者が最初にやりがちなのが、

  • 使いたい設備
  • 導入したいシステム

から考え始めることです。

しかし採択結果を見る限り、
**先に整理すべきは「経営課題」と「工程課題」**です。

  • なぜ今のやり方では限界なのか
  • 人が足りないことで、何を諦めているのか

ここを言語化できるかどうかが、採択可否を分けます。


ポイント② 「省力化=人減らし」から完全に脱却する

第3回までの流れを見ると、
人件費削減だけを前面に出す計画は、むしろ評価されにくくなっています。

  • 生産性向上
  • 付加価値向上
  • 賃上げ余力の確保

といった前向きな経営効果と結び付けることが重要です。


ポイント③ 数字は「精緻さ」より「整合性」

次回公募に向けては、

  • 売上
  • 人員
  • 生産能力

などの数字を求められますが、
重要なのは細かさよりも整合性です。

  • 省力化で何時間浮くのか
  • それがどの業務に回るのか
  • だから売上や付加価値がこう変わる

この流れが通っていれば、評価は安定します。


5.まとめ|一般型は「経営を語れる会社」が採択される

第1回〜第3回の採択結果を通じて明確になったのは、
中小企業省力化投資補助金(一般型)は、

設備投資の補助金ではなく、経営改善の補助金である

という点です。

  • 自社の課題を把握し
  • 省力化を経営戦略として位置づけ
  • 投資後の姿を描けている会社

が、安定して採択されています。

次回公募に向けては、
「何を買うか」ではなく
「なぜ変わる必要があるのか」
から考えることが、最大の近道と言えるでしょう。