
中小企業新事業進出補助金の採択結果を見ると、食品メーカーの新事業が特に多いことが分かります。
冷凍食品、レトルト、デザート、地域素材を用いた加工品など、幅広い事例が採択されており、食品分野は“勝ち筋”が多い領域と言えます。
今回の記事では、なぜ食品メーカーは採択されやすいのか、どのような事例が成功しているのかをわかりやすく紹介します。
■なぜ食品メーカーは採択されやすいのか
食品分野は、一見すると参入企業が多く競争激しい業界ですが、補助金の観点では以下の理由により“非常に相性が良い”業種です。
① 高付加価値化が明確に示しやすいから
食品は、加工方法の高度化によって価値が大きく変化します。
- フレッシュ → 冷凍
- 原材料販売 → 加工食品販売
- 大量生産品 → 地域性・ストーリー性のあるプレミアム商品
このように「付加価値が上がった理由」を説明しやすく、補助金の審査で重視される「売上・粗利の向上」に直結します。
② 新市場の説明がしやすい
食品業界は市場が細分化しているため、次のように“新市場(新しい顧客)”の定義がしやすい点も強みです。
- 一般消費者向け → 観光客向け
- BtoB原料向け → BtoC商品
- 地域内販売 → 全国EC展開
- ギフト市場、新たな需要層の獲得
新市場要件を満たすストーリーを描きやすいのが、大きなメリットです。
③ 設備投資との相性が良い
食品製造は「設備の導入=生産力・品質向上」に直結する業種です。
- 急速冷凍機
- レトルト殺菌機
- 充填機・パッケージ設備
- HACCP対応の加工場改修
こうした設備投資は補助金の目的に合致しやすく、“重投資を伴う新事業”を後押しする制度と相性が抜群といえます。
■採択事例①:地域農産物×冷凍スイーツの新市場開拓
地域農産物(例:果物、野菜、茶葉など)を活かした冷凍スイーツ製造は、採択が非常に多い分野です。
典型的な事例では:
- 地域農家の規格外品を活用したスイーツの開発
- 急速冷凍機を導入して鮮度を閉じ込め高品質化
- 観光客向け商品やECで全国販売
- ギフト市場への参入による新市場獲得
このように「地域性×加工技術×販路」という3点が揃うと、審査の通りやすさが大幅に高まります。
■採択事例②:レトルト・調理済み食品のブランド化
レトルト食品や調理済み食品の新ブランド立ち上げも採択の王道です。
例として多い事業内容:
- レトルト釜を導入して自社商品を製造
- 飲食店の人気メニューを商品化
- 保存性が高まり販路が拡大(EC・小売・卸)
- 付加価値の高い“シリーズ商品”化で売上構成比UP
レトルト食品分野は、
“新市場性”と“収益性”を同時に示しやすいのが特徴です。
■採択事例③:高級スイーツ・デザート市場への参入
菓子・デザート分野の新事業も多く見られます。
例えば:
- 地域果実を使用したプレミアムジェラート
- 焼き菓子の冷凍販売事業
- プロフェッショナル向けOEMから自社ブランドへ展開
高価格帯スイーツはリピート需要があり、
小ロットでも魅力的な収益が見込めるため、事業としての成長性が評価されやすい傾向があります。
■採択事例④:健康志向・機能性食品への取り組み
近年特に目立つのが、健康志向を取り入れた新商品展開です。
例:
- 低糖質・高タンパクの食品ブランド
- 植物性食品(プラントベース)
- 機能性表示食品としてのライン開発
- 健康ニーズを持つ新市場への参入
健康市場は成長分野であるため、審査側にも「未来性」が伝わりやすく、採択されやすい傾向があります。
■成功した食品メーカーの共通点
採択された食品メーカーには、次の3つの共通点がありました。
① ストーリー性がある
食品は“背景・価値観”が重要です。
- 原材料の産地
- 作り手のこだわり
- 地域課題の解決(規格外品活用など)
ストーリーが明確だと、販路開拓の説得力が増し、市場の新規性も説明しやすくなります。
② 付加価値が高く、利益性が改善される
原材料販売やOEM中心から、
「自社商品ブランド化」へ移行する企業が多いのも特徴です。
審査評価で重視される「付加価値向上」「利益率改善」が明確に説明できます。
③ 数字で“売れる根拠”を作れている
成功した企業は、
- ターゲット市場の規模
- 競合との差別化
- 価格帯と収益モデル
- 販路確保(卸契約・EC戦略など)
これらを丁寧に整理していました。
食品分野は市場が大きいため、具体的な「売れる理由」を描くことで計画の信頼性が高まります。
■まとめ:食品メーカーは“補助金との相性が最も良い業種の一つ”
食品メーカーが中小企業新事業進出補助金で採択されやすい理由は明確です。
- 高付加価値化の説明がしやすい
- 新市場要件を満たすストーリーが作りやすい
- 設備投資と相性が良い
- EC・ギフトなど販路の新規性が示しやすい
- 健康食品・冷凍食品など成長市場が多い
まさに、食品分野は「勝ち筋が多い」領域だと言えます。
既存事業の強みを活かしながら、ブランド展開・新商品開発に挑む企業にとって、非常に大きな後押しとなるでしょう。

