
■ はじめに:黒字倒産が起きる理由
経営者が最も恐れるべきリスク――
それは「資金ショート」です。
多くの企業が誤解しています。
利益が出ていれば会社は大丈夫
→ これは間違いです。
利益と現金はまったく別物であり、
黒字でも倒産は簡単に起きます。
再建支援の現場では実際に、
- 利益は出ているのに現金不足
- 売上↑ でも現場が忙しいだけでキャッシュが残らない
- 支払期日が来て資金が足りない
- 借入返済の負担が重い
といった企業は非常に多いのです。
■ 資金繰り管理の目的は「未来の現金」を把握すること
資金繰り管理とは、
いまの現金ではなく
これからの“未来の現金”を可視化すること
です。
資金繰り管理で見るポイント
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 売上入金 | 何月に入金されるのか |
| 支払 | 材料費・外注費・経費の支払時期 |
| 借入金返済 | 元金返済の負担 |
| 給与・賞与 | キャッシュアウトが大きい |
| 設備投資 | 支払い時期の調整が重要 |
| 税金 | 予測して準備する |
資金繰りは「タイミングの戦い」
売上よりも、入金タイミングが命です。
■ 資金ショートを防ぐ“5つの鉄則”
鉄則①:売掛金の入金サイトを短くする
売上が増えても、
売掛金が増えるだけでは現金は増えません。
改善手段:
- 入金サイトの短縮(45日→30日など)
- 前受金の導入
- 分割・中間金の設定
鉄則②:支払サイトを伸ばす
仕入れ・外注に対しては、
支払サイトの延長が有効です。
例:
- 当月末→翌月末へ
- 前払いの廃止調整
- 外注先との条件見直し
鉄則③:借入返済を調整する(返済条件変更)
405事業では最も効果が大きい改善策です。
- 元金返済の猶予
- 返済額の減額
- 長期借入へ借り換え
- リスケジュール
協議会・銀行も「返済条件変更」を
再建のプロセスとして肯定しています。
鉄則④:在庫を持ちすぎない
在庫は現金が商品に姿を変えただけ。
売れなければ現金に戻りません。
改善策:
- 過剰在庫の処分
- 発注点管理の導入
- 棚卸ロスの削減
- 少量多頻度化の検討
鉄則⑤:固定費より変動費化を優先する
固定費が高い企業は資金ショートしやすい。
改善例:
- 正社員→パート・外注の活用
- リース→サブスクに変更
- 固定費契約の見直し
■ 資金繰り表は「未来の危険信号」を示すレーダー
経営改善で最初に作成する資料は
資金繰り実績・計画表(6ヶ月〜12ヶ月)
です。
資金繰り表で分かること
- どの月に資金不足が起きるか
- 借入が必要な時期
- 支払が重い月の把握
- 入金が集中する月
- 投資のタイミングの可否
資金繰り表がない企業は
例えるなら……
「スピードを出す車にブレーキがない」状態です。
■ 銀行・協議会が最も重視するのは“資金繰り”
経営改善計画のモニタリングでも
金融機関が見ているポイントは共通です。
✔ 翌月以降の資金繰りに問題はないか
✔ 借入返済は可能か
✔ 支払遅延は発生していないか
✔ 手元現金は何ヶ月分あるか
銀行は利益よりも
「返済できるか」を重視するため、
資金繰りが安定している企業は
非常に高く評価されます。
■ 成功事例(資金繰り改善が効いた企業)
事例①:建設業
- 支払を翌月末に延長
- 入金サイト短縮
→ 手元資金が月1000万円改善
→ 残業削減・成功循環へ
事例②:製造業
- 借入返済を2年間減額
- 資金繰り安定
→ 設備投資を実施し売上増加
事例③:卸売業
- 在庫圧縮
- 倉庫費用削減
→ 現金残高が増加し、財務改善が進む
■ 経営改善における“資金繰りKPI”
日々チェックすべき指標があります。
| KPI | 目安 |
|---|---|
| キャッシュ残高 | 1〜2ヶ月分確保 |
| 売掛回収サイト | 業界平均以下 |
| 在庫回転日数 | 月1〜2回転以上 |
| 借入返済比率 | 売上に対し安全圏 |
| 支払遅延 | 0件(最重要) |
■ 資金繰りを安定させる「経営者の行動習慣」
✔ 売上より入金を意識する
✔ 手元現金が増える事業に集中
✔ 毎週・毎月の資金繰りミーティング
✔ 銀行と定期的に情報共有
✔ 資金ショートの芽を早期に摘む
資金繰りは「スピード」と「早期対応」がすべて。
■ まとめ:現金がある企業は強い
資金繰りが整えば、
経営改善はほぼ成功と言ってもいいほど
企業の体力が安定します。
✔ 現場が落ち着く
✔ 銀行との関係が良くなる
✔ 設備投資ができる
✔ 仕入条件改善ができる
✔ 不採算整理ができる
💬 利益は意見、現金は事実。
“現金を増やす経営”こそ再建の王道です。


