
中小企業が“新しい市場に挑戦する”ための資金を後押しする「新事業進出補助金」。
2025年度に創設された新制度で、既存事業ではない新しい収益源づくりを目的としています。
「ものづくり補助金の進化版?」「申請ハードルは高い?」
そんな疑問に答えるため、まずは制度の全容をシンプルに解説します。
■制度の目的:既存の延長線ではなく“新市場”に挑む
本補助金は単なる設備投資支援ではありません。
経済産業省は明確にこう示しています👇
新製品・新サービスを用いて、これまでと異なる市場へ進出する企業を支援する
つまり、
☓ 既存製品の増産
☓ 同じ顧客向けビジネスの改善
☓ 効率化のための設備更新
↓↓
〇 自社にとって“新しい顧客”の獲得
〇 売上構成比の変化を伴う事業転換
〇 成長分野への参入
を狙う事業が対象です。
「売上の柱を増やせるか?」
これが申請戦略の中心にきます。
■補助金額と補助率(従業員数に応じて変動)
本制度の大きな特徴が、補助額が従業員数で決まることです。
| 常勤従業員数 | 補助金額(通常枠) | 賃上げ特例適用時 |
|---|---|---|
| 20人以下 | 750万〜2,500万円 | 3,000万円 |
| 21〜50人 | 750万〜4,000万円 | 5,000万円 |
| 51〜100人 | 750万〜5,500万円 | 7,000万円 |
| 101人以上 | 750万〜7,000万円 | 9,000万円 |
| 補助率 | 一律 1/2 | 同 |
👉 最低補助額は 750万円
👉 成長投資を想定しており、過小事業では通りにくいのが実態
工場投資や生産ライン構築にも狙える枠です。
■対象となる「新事業」の3条件
次の3つを“すべて”満たす必要があります。
| 要件 | 簡単にいうと… |
|---|---|
| ①製品等の新規性 | 自社として初めて作る(提供する)モノ・サービス |
| ②市場の新規性 | 既存顧客とは異なる市場へ販売 |
| ③新事業売上高要件 | 最終年度、売上構成比10%以上(付加価値15%以上) |
特に③は数値基準で明確。
たとえば年商5億円の会社なら…
→新事業だけで最終年度5,000万円以上の売上が必要。
「売れる根拠」が計画の質を左右します。
■補助対象経費:建物投資がOKなのが大きい
使える経費が広いことも強みです。
- 機械装置等費(工作機械・食品設備・検査装置など)
- 建物費(新設・増改築・内装)
- システム開発、ECサイト
- 製品デザイン、ブランディング
- 外注加工、検査、試作品
- 販促(展示会、広告)
- 専門家費用 ほか
「建物費OK」は他制度と比較して圧倒的優位です。
■採択される事業の傾向
第1回採択結果から見える成功パターンは主に以下👇
- 既存技術×新市場
例:金属加工→医療・防衛部品分野へ参入 - 地域食品の高付加価値化
例:冷凍・レトルト加工+EC展開 - 川下展開(ブランド化・自社製品化)
- 環境・再エネ・人手不足対応ビジネス
共通項は…
利益率と成長率の高い領域への乗り換え
です。
■ものづくり補助金との違い
「どっちを使うべき?」という質問に一言で回答します👇
| 補助金 | 目的 | 求められること |
|---|---|---|
| 新事業進出補助金 | 新しい売上の柱づくり | 市場を変える |
| ものづくり補助金 | 生産性向上 | 現状を効率化 |
つまり、
事業転換 ⇒ 新事業進出補助金
業務改善 ⇒ ものづくり補助金
と整理できます。
■どんな企業に向く補助金?
次のような企業は相性◎です👇
- 既存市場が頭打ち、次の成長が必要
- 儲かる新製品で攻めたい
- OEMから脱却し、自社ブランド展開したい
- 技術を他業界へ転用できる
- 拠点・設備投資が必要な新事業
逆に、
- 売上が伸びる見込みが薄い
- 同じ顧客に同じものを売り続ける
という事業では評価が低くなりがちです。
■まとめ|「本気の成長戦略」に向く補助金
- 新市場を開拓し、売上の柱を増やす企業を支援
- 建物・設備に広く使え、投資規模も大きい
- 売上構成比の変化(=事業転換)が審査の核心
まさに、
“企業の未来を変える投資”に使う補助金
と言えます。
新市場で勝つ力をつけたい企業にとって、
本制度は大きな追い風になるでしょう。

