■ はじめに:金融機関は“数字の整った計画書”を求めていない

多くの経営者は誤解しています。

銀行は「数字が綺麗に並んだ計画書」が見たいのではない。
本当に知りたいのは“実現性と経営者の覚悟”。

実際に金融機関との会議に同席すると、
銀行が注目しているのは次の3点。


✔ 数字の根拠があるか
✔ 実行できる体制か
✔ 経営者が誠実か・覚悟があるか

見た目のキレイさより、
「中身のリアルさ」 を重視します。


■ 金融機関が重視する「計画書の5つの要素」


① 粗利改善の根拠

銀行は「売上」より「粗利」を重視します。

  • なぜ粗利率が改善するのか
  • どの商品が高粗利なのか
  • 不採算はどう縮小するのか
  • 価格改定の見通し
  • 外注費はどう下がるのか

粗利改善の根拠が曖昧だと、計画は“机上の空論”になる。


② 返済能力(キャッシュフロー計画)

銀行が最も重要視するポイント。

  • 返済負担は軽くなるか
  • 返済を正常化できる道筋があるか
  • 来期のキャッシュフローはプラスか
  • ピーク資金はいつか
  • 過剰な投資計画になっていないか

計画書の数字は「返済能力」を説明するために存在する。


③ 経営者の姿勢(情報開示・誠実さ)

405事業でも協議会が必ず確認します。

  • 数字を隠していないか
  • 過去の失敗を正直に話しているか
  • 実績報告を継続できるか
  • 社内共有ができるか
  • 計画を継続する覚悟があるか

銀行は「経営者リスク」を最も恐れます。


④ 行動計画(KPI)が具体的

金融機関は「やります」という精神論を評価しません。

必要なのは、次のような実行計画:

  • 半年間で営業訪問を累計120件
  • 外注費を15%削減
  • 不採算顧客を3社縮小
  • 新規見積依頼を毎月20件
  • 在庫回転日数を45日→30日へ改善

結果ではなく “行動” が明確であることが評価される。


⑤ モニタリング体制

銀行は「計画の継続性」を非常に重視します。

  • 月次試算表の提出
  • 資金繰り表の提出
  • KPI報告
  • 3ヶ月ごとの進捗確認
  • 認定支援機関の伴走

計画書は作って終わりではなく、
“実行し続ける仕組み” が必要なのです。


■ 金融機関が嫌う「ダメな計画書」の特徴


❌ 1. “売上が急増” するだけの計画

根拠なく売上が伸びる計画は信頼されません。

❌ 2. 行動計画が曖昧

「努力します」「頑張ります」はNG。

❌ 3. 設備投資と借入依存が多い

投資は必要だが“回収根拠”が必須。

❌ 4. 計画数字と実績が乖離している

数字が合わない=信用リスク。

❌ 5. 現場と経営者の認識がズレている

ヒアリング不足はすぐに見抜かれます。


■ 金融機関が“本当に見たい”計画書の構成(推奨フォーマット)

支援現場で最も評価される構成です。


① 事業の現状と課題(Before)

  • 売上・粗利の推移
  • 原価の構造
  • 不採算の原因
  • 課題の優先順位

② 改善の方向性(戦略)

  • 何を残すか/何をやめるか
  • 高粗利領域への集中
  • 顧客・商品ポートフォリオ方針

③ 改善施策(具体策)

  • 価格改定の計画
  • 原価改善(内製化・外注見直し)
  • 効率化(工数管理・業務改善)
  • 営業の改善(KPIベース)

④ 数値計画(PL・CF・BS)

  • 3~5年の利益計画
  • キャッシュフロー計画
  • 返済計画(メイン・サブ銀行)
  • 設備投資計画

⑤ 行動計画(KPI)

  • 月次の行動項目
  • 担当者と期限
  • 計測方法

⑥ モニタリング体制

  • 認定支援機関の伴走
  • 月次ミーティング体制
  • 報告書提出方法

■ よくある質問:数字に自信がない場合はどうすれば?

答えは明確です。

数字の“正確さ”より、
数字の“根拠”の方が重要。

数字は専門家が作ることができます。
しかし根拠(戦略・現場の情報)は経営者しか持っていません。


■ 実例:金融機関から高評価を得た計画書(要点)


事例①:製造業

  • 外注費の削減根拠を明確化
  • 小ロットの追加料金を導入
  • 内製化の効果を数字化
    → 銀行が追加融資を判断

事例②:建設業

  • 回収サイト短縮
  • 工事原価管理の導入
  • 部分請求の仕組み化
    → 返済条件変更にスムーズに合意

事例③:食品加工業

  • 歩留まり改善の根拠を精密化
  • 新規顧客の獲得見込みを整理
    → CFが改善し、計画が採択

■ まとめ:計画書は“銀行のため”ではなく“再建のため”

経営改善計画書の本質は、
金融機関を説得するためだけでなく、
企業自身が再建の道筋を明確にするためのツール です。

成功する計画書は次の特徴があります。


✔ 粗利改善の根拠が明確
✔ キャッシュフローが改善する道筋がある
✔ 行動計画が数値化されている
✔ 経営者の姿勢・覚悟が伝わる
✔ モニタリング体制が整っている

💬 「実現できる計画書」は銀行にも経営者にも自信を与える。
経営改善計画は“未来をつくるための設計図”。