
食品メーカーは、設備投資や資金不足が発生しやすい業種の一つです。
- 人件費の上昇
- 原材料高(小麦、油、砂糖、乳製品など)
- エネルギーコストの増加
- 物流2024年問題
- 大手取引先からの値下げ圧力
こうした外部環境が重なり、多くの工場で 利益率の悪化 が起きています。
このような状況で非常に有効なのが、
「405事業(早期経営改善計画・経営改善計画)」 です。
この記事では、食品メーカーに特化して、
- 405事業を使うべきケース
- 405事業で何ができるのか
- 銀行融資にどのように効くのか
- 設備投資計画とどう結びつくのか
を、わかりやすく解説します。
■ 405事業とは?(食品メーカー向けの意味)
405事業とは、
中小企業の資金繰りや利益改善をサポートする国の制度です。
食品メーカーにとっての実質的な役割は、
✔「利益の出ない体質を改善し、銀行が貸せる企業に戻す」
✔「設備投資に向けて財務の土台を整える」
この2つです。
補助金ではなく、
専門家(認定支援機関)の支援費用を国が負担する仕組みです。
■ 食品メーカーが405事業を使うべき5つのケース
食品メーカーで特に利用価値が高いのが、次の5つの場面です。
① 原材料高で利益が出なくなっている
食品メーカーの多くが、2023〜2025年にかけて利益率を大きく落としています。
- 小麦、油、乳製品などの価格上昇
- 値上げが追いつかない
- 固定費が増え続ける
利益率が低下しているなら405は最優先で使うべき制度です。
② 設備投資をしたいが、銀行融資が通りにくい
食品メーカーの相談で圧倒的に多いのが、
「設備更新したいが銀行が慎重になっている」
という状況。
銀行が見ているのは、
- 今の利益率で返済できるか
- 設備投資後の利益改善が確実か
- 資金繰りが持つか
405事業で「返済可能性」を数字で示すと、
融資が一気に通りやすくなります。
③ 人件費上昇・残業増で利益が消えている
食品工場では人件費の上昇が特に重い課題です。
- パート時給が年々上昇
- シフトが埋まらない
- 深夜手当が増えている
- 属人化で残業が止まらない
405事業では、
人件費構造や工程ごとに“ムダ”を見える化し、
利益改善につなげます。
④ 歩留まり・廃棄ロスで利益が出ない
食品メーカー特有の課題です。
- 原料の歩留まりが悪い
- 過剰生産
- 焦げ・破袋で廃棄が多い
- 計量ばらつきによるロス
これらは 粗利改善につながる絶好のポイント で、
405事業で最も成果が出やすい領域です。
⑤ 銀行から「計画書を出してください」と言われた
銀行は、食品メーカーの設備投資や条件変更の際に
次の資料を求めることがあります。
- 収益改善計画
- 資金繰り表
- 投資後の利益試算
- 返済原資の説明
この“計画づくり”に405事業が使えます。
■ 405事業で実際にできること(食品メーカー版)
食品工場の現場に即した内容で説明すると、
405事業で行うのは次の5つです。
① 工場の利益構造の見える化
- 原価の構造
- 歩留まり
- 製造原価
- 陳列・検査・包装・出荷の工数
- 人件費の配分
- 設備稼働率
食品メーカーは “どこで利益が消えているか?” の特定が最重要。
② 粗利改善(食品メーカー最大のテーマ)
- 歩留まり改善
- 計量精度改善
- 過剰盛付けの削減
- シフト最適化
- 残業削減
粗利改善は「最強の返済原資」です。
③ 設備更新の優先順位を決める
405事業では、設備投資の優先順位を数字で決めます。
例:
- 包装ラインの更新 → 年間200万円削減
- 計量ラインの自動化 → 歩留まり1.5%改善
- 冷却ライン → クレーム減少
- 外観検査 → 検査員削減
銀行は「設備投資の理由と効果」を最も重視します。
④ 資金繰り表・返済原資の作成
銀行融資を通すうえで必要不可欠。
- 何年で投資を回収するか
- 月次のキャッシュフロー
- 融資後の安全余裕資金
- 経費削減効果
- 新商品の利益貢献
これを示すことで、
✔「返済できる会社」と評価される
✔ 銀行の姿勢が一気に変わる
⑤ 銀行との交渉が有利になる
405事業は国の制度のため、銀行側も安心して評価します。
結果として、
- 融資が通りやすい
- 返済条件の見直しが通りやすい
- 設備投資のタイミングが早くなる
など多くのメリットがあります。
■ 食品メーカー × 405事業 × 銀行融資
= 最強の設備投資スキーム
この組み合わせは非常に強力で、
特に次のような企業に最適です。
- 投資判断に迷っている
- 利益が落ちてきた
- 原材料高で苦しい
- 設備が老朽化している
- 人件費の負担が重い
- 銀行に相談したいが資料が作れない
405事業で「強い財務の土台」ができれば、
銀行はさらに融資しやすくなります。
■ まとめ:食品メーカーは“改善 × 投資”の両輪が必要
食品メーカーの経営は、
- 原材料高
- 人件費増
- 電力、燃料代の上昇
- 品質要求の高度化
- 物流制約
など、外部環境の影響を大きく受けます。
この状況では
「改善(405)と投資(融資)」の両輪が不可欠です。
405事業で利益を改善しながら、
設備投資で生産性を上げることで、
持続的に利益を出せる体制を作ることができます。
食品メーカーにとって、
405事業は“使わないともったいない制度” です。

