■ はじめに:倒産の8割は「お金が尽きた」から

多くの企業は赤字ではなく、
「資金ショート」によって倒産します。

実際の現場でも、

  • 黒字なのに倒産
  • 売上が増えているのに資金が足りない
  • 税金・社会保険の支払いが遅れる
  • 入金サイトに振り回される

という企業は非常に多い。

経営改善で最も優先すべきは、
“資金繰り管理の仕組み化” です。


■ 資金繰り管理は「3つの視点」で考える

資金繰り管理は、次の3つのセットで行うのが正解です。


① 過去の資金繰り(実績の把握)
② 現在の資金繰り(現金残高・支払予定)
③ 未来の資金繰り(3~12ヶ月シミュレーション)

これをセットで行うと、
倒産リスクは大幅に下がります。


■ ① 過去の資金繰り:なぜ実績確認が必要か?

✔ 現場の“思い込み”を排除できる

「今月は黒字のはず…」
「この案件は利益が出ているはず…」

実績を確認すると、
思い込みとのズレが明確に分かります。

✔ 資金ショートの原因が見える

  • 売掛金の回収遅れ
  • 外注費・仕入増加
  • 工事原価の増大
  • 経費の使いすぎ
  • 手形の支払タイミング

数字を見ることで問題点が明確になります。


■ ② 現在の資金繰り:キャッシュ残高の把握

毎日の残高を見ている企業ほど再建が早いです。

最低限、以下の数字は毎日確認するべきです。

  • 現金残高
  • 当座預金残高
  • 今週・来週の支払予定
  • 売掛回収予定

経営者が“毎日3分見る”だけで倒産確率は劇的に下がります。


■ ③ 未来の資金繰り:3〜12ヶ月先を予測する

未来の資金繰り表を作ることで次のことが分かります。

✔ いつお金が足りなくなるか

✔ 投資のタイミングが適切か
✔ 銀行相談が必要な時期
✔ 返済額に無理がないか

経営改善計画では、
“未来の資金繰り”が最重要資料 として扱われます。


■ 資金繰りの失敗は「回収・支払のズレ」が原因

多くの企業の資金繰り悪化は、
売上や利益ではなく タイミング の問題です。

よくあるパターン:


① 売掛入金が遅いのに、支払いが早い

→ 常に資金不足が発生

② 仕入が先行してしまう

→ 売上は出るが現金は増えない

③ 外注費の支払いが集中

→ 資金繰りが跳ねる

④ 税金・賞与・決算支払いが読めていない

→ 毎年「突然お金が足りない」状態に


■ 改善策①:入金サイトを短縮する

  • 早期回収の交渉
  • 入金前の前金(着手金)
  • 月末締め→毎月2回締めに変更
  • 請求漏れの防止体制

例:建設業

  • 請求月2回化
  • 部分請求の仕組み化
    → 入金サイトが20〜30日改善することも多い

■ 改善策②:支払いサイトを改善する

  • 支払条件の見直し
  • 外注先との取引条件再交渉
  • 定期購入品のまとめ買いを減らす

例:製造業

  • 材料仕入れを 30日→45日 に
    → 毎月100~300万円単位で余裕が出る

■ 改善策③:在庫管理の改善でキャッシュを増やす

在庫は“現金が形を変えただけ”です。

  • 過剰在庫の削減
  • 安全在庫の再設定
  • 回転率の管理
  • デッドストックの処分

在庫が多い企業は、
資金繰り悪化のリスクが高い。


■ 資金繰りの“危険サイン”

このサインが出たら、即改善が必要です。


⚠️ 1. 社会保険料や税金の支払い遅れ
⚠️ 2. 外注・仕入先への支払い遅れ
⚠️ 3. 経営者への貸付金が増える
⚠️ 4. 銀行残高を見ていない
⚠️ 5. 利息のみ支払い状態
⚠️ 6. 毎月の借入が増えている

これらは、405事業の支援現場では
“危険信号”として扱われます。


■ 資金繰り改善のゴールは「安定したキャッシュフロー」


ゴールとは?

❶ 毎月の現金残高がプラス
❷ 支払遅延がない
❸ 税金・賞与を前もって準備できる
❹ 突発的な支払いにも対応
❺ 攻めの投資ができる余力がある


■ 経営改善計画で資金繰りが改善する理由


✔ 金融機関との調整(返済負担軽減)
✔ 未来の資金繰りを数字化
✔ 資金繰りを月次で管理
✔ 粗利改善とセットで効果発揮
✔ 認定支援機関の伴走による改善

資金繰り改善は“テクニック”ではなく、
「仕組み化 × 習慣化 × 金融調整」 の組み合わせです。


■ 実例:資金繰り改善で再建した企業


事例①:製造業

  • 売掛金を毎月2回回収に変更
  • 外注費支払サイトを30→45日に
  • 在庫削減
    → キャッシュ残高が3ヶ月で2倍に

事例②:建設業

  • 請求漏れ防止フローを構築
  • 部分請求を徹底
  • 工事原価の月次管理
    → 資金繰りが安定、リスケから正常返済へ復帰

事例③:小売業

  • 在庫削減
  • 仕入条件を見直し
    → キャッシュ残高が毎月安定

■ まとめ:資金繰りは“経営のライフライン”

資金繰りは、利益より重要です。

  • 利益が出ても倒産する
  • 売上が増えても倒産する
  • 経費削減しても倒産する

倒産する企業の大半は
「お金の流れを見ていない」
ことが原因です。

資金繰り改善のポイントは以下の通り。


✔ 過去の資金繰り実績を把握
✔ 毎日の現金残高をチェック
✔ 未来の資金繰りを予測
✔ 回収・支払のズレを解消
✔ 在庫を適正化
✔ 金融機関と適切に調整
✔ モニタリングで継続改善

💬 「資金繰りが見えている企業」は倒産しない。
これは支援現場の“絶対ルール”です。