
〜輸出対応のための工場づくりを支援する農水省の大型補助金〜
食品メーカーのみなさんからは、
- 「工場の衛生管理レベルを上げたい」
- 「HACCP対応したい」
- 「海外輸出に対応した設備投資が必要」
という相談が増えています。
そうした時に活用できるのが、
農林水産省の 「HACCPハード事業」 です。
ただし、この制度については誤解も多いため、
この記事では 制度の正しい内容に沿って、やさしく解説 します。
■ HACCPハード事業とは?
HACCPハード事業は、食品メーカーが
✔ 海外輸出に対応できる工場づくり
✔ 国際基準に合った衛生管理体制の整備
を行うために、
設備投資の半額を補助する大型制度 です。
ここが重要です。
⚠ 国内向けのみの食品製造は対象外
HACCPハード事業は
「輸出するための設備整備」
という前提のため、
- 国内向け食品だけ → ×
- 国内工場の老朽化対応 → ×
- 省人化・省力化目的 → ×
となります。
■ 対象になる設備
輸出に必要な衛生レベルに引き上げるための
“工場全体の改善” が対象です。
◎ 対象となる設備・工事の例
- 工場内の衛生改修(床・壁・排水・動線)
- 急速凍結機・冷蔵・冷凍設備
- 洗浄・殺菌設備
- 給排水設備・衛生配管
- 空調・換気設備
- 作業区域の区分け、交差汚染対策
- 温度管理システム・記録システム
- HACCPやISO・GFSI対応ラインの新設・改修
- 原材料の衛生受入スペースの整備
ポイント:
これは「HACCP対応設備なら何でもOK」ではありません。
輸出先国の基準を満たすための設備である必要があります。
■ 対象にならない設備
制度の誤解が多い部分なので明確に書きます。
× 国内向けの衛生強化だけの設備
× 省力化の機械(包装機など)
× 検査機器1台だけ(金属探知機・X線)
× 老朽化した機械の“ただの入替”
× 輸出と関係ない改修工事
HACCPハード事業は 輸出事業に直結する投資 が必須です。
■ 補助金はいくら出るの?
HACCPハード事業には「上限額」という概念がありません。
一般的な補助金(〜1億円など)とは違い、
この制度は 輸出額を伸ばすための国家事業 です。
そのため…
✔ 理論上は「10億円以上」でも申請可能
(実際に数億〜10億円規模の採択実績あり)
補助金の金額はこう決まります:
補助金額 = 設備投資額の1/2
※ただし、設備投資額 ≒ 将来の輸出額(計画)が必要
例:
- 設備投資 6億円 → 補助金 3億円
- 設備投資 10億円 → 補助金 5億円
- 設備投資 20億円 → 補助金 10億円
「輸出額の伸びと設備投資のバランス」が審査の最重要ポイントです。
■ 申請できる食品メーカーの条件
食品メーカーが申請するには、次の条件が必要です。
✔ 輸出を始める、または拡大する意思がある
✔ 輸出先国(アジア・欧州・米国など)が決まっている
✔ どの商品を輸出するか決めている
✔ その国の衛生基準(HACCP・ISO・GFSI・FSMA等)を理解している
✔ 設備投資がその基準に対応している
つまり、
輸出を軸とした工場整備の計画 が必要です。
■ 審査で見られるポイント
① 輸出先国の基準を満たす設備か?
例:
- アメリカ(FSMA)の温度管理
- EUの衛生基準
- ハラール・コーシャ対応
- GFSI・ISO22000・JFS-C
② 工場全体の衛生管理が改善されるか?
- 動線整理
- 交差汚染の防止
- 温度管理の安定
- 異物混入のリスク低減
③ 工場整備後に「輸出量」が増えるか?
- 製造量の増加
- 新商品(輸出向け)の生産
- 海外バイヤーからの期待
- 輸出事業計画の実現性
■ よくある質問(正しい内容に修正)
Q. 国内向け食品だけでも申請できますか?
→ できません。
HACCPハード事業は「輸出対応」が前提です。
Q. 検査機器だけ導入したいのですが?
→ できません。
工場全体の衛生管理レベルを
輸出基準に合わせて整備する計画が必要です。
Q. 小規模工場でも申請できますか?
→ 輸出計画があれば可能です。
Q. 省力化補助金とは併用できますか?
→ 設備が違えば併用可能です。
■ 図解:HACCPハード事業の仕組み
【輸出で必要な基準】
HACCP / ISO / GFSI / FSMA
▼
【工場の改善ポイント】
・衛生改修(床・壁・排水)
・温度管理(冷凍・冷蔵)
・交差汚染の防止
・洗浄・殺菌設備
・記録・管理システム
▼
【補助金:設備投資の1/2】
▼
【輸出が可能な工場へ】
・品質向上
・安全性向上
・輸出量UP
■ まとめ:HACCPハード事業は“輸出する食品メーカー”のための制度
HACCPハード事業は、
ただのHACCP設備補助金ではありません。
✔ 輸出を本気で伸ばしたい食品メーカー
✔ 国際基準に対応した工場をつくりたい企業
✔ 工場の衛生レベルを一気に底上げしたい企業
✔ 大規模設備への投資を半額で実施したい企業
こうした企業には非常に強力な制度です。
逆に、
- 国内向けだけ
- 小さな部分的改修
- 検査機器だけ
- 省人化目的
では使えません。
「輸出」という軸がある食品メーカーは、
必ず一度検討する価値のある補助金です。

