中小企業や成長企業が大規模な資金調達を必要とする場面で活用されるのが「協調融資」です。複数の金融機関が連携して1社に対して融資を行うこのスキームは、資金調達の柔軟性を高め、金融リスクの分散にもつながります。

本記事では、協調融資の基本から、メリット・デメリット、成功させるための準備まで、わかりやすく解説します。


協調融資とは?

協調融資(シンジケートローン)とは、複数の金融機関が協力し、1つの企業に対して共同で融資を行う仕組みです。

主に以下のようなケースで活用されます:

  • 工場や設備などの大規模な投資資金が必要な場合
  • 一行では貸出枠が不足する場合
  • リスク分散を図りたい場合

各金融機関は融資額や条件を分担し、共同で審査・実行します。

協調融資の主な組み合わせパターン

協調融資は、参加する金融機関の組み合わせによっていくつかの形態に分かれます。

1. 政府系 × 民間金融機関

日本政策金融公庫や商工中金などの政府系機関と、地銀・信金などの民間金融機関が連携。政策的な支援分野(例:創業、事業再構築)に活用されます。

2. 保証協会付き融資 × プロパー融資

信用保証協会の保証付き融資と、保証なしのプロパー融資を組み合わせた形式。金融機関の貸倒リスクを軽減できます。

3. メインバンク × サブバンク

複数の民間金融機関が協力し、主にメインバンクが調整役を担います。企業との長期的関係を背景にした信用力が重要です。


協調融資のメリット

◎ 複数の銀行からまとめて資金調達できる

単独行では実現できない融資額でも、協調により希望額を満たせます。

◎ 審査ハードルの分散

複数の目で評価されるため、一行だけでは融資不可の案件でも、他行が支援に加わることで可決されるケースもあります。

◎ 金融機関との関係強化

複数行と取引関係を築くことで、将来的な支援や融資の選択肢が広がります。


協調融資のデメリット・注意点

協調融資にはメリットだけでなく、以下のようなデメリットもあります。

項目内容
時間がかかる複数行での合意形成が必要なため、実行までに数週間〜数ヶ月かかる場合があります。
条件が複雑各行で金利・返済条件・担保の取り扱いが異なることがあり、契約管理が煩雑になることも。
一行NGで全体NGどこか1行でも承認されないと、全体の融資スキームが崩れるリスクがあります。

成功のための4つのポイント

1. 金融機関との信頼関係構築

普段からメインバンクや金融機関担当者との関係を良好に保つことが、スムーズな調整につながります。

2. 明確な事業計画の提示

  • 資金の使途
  • 売上・利益見通し
  • 返済スケジュール

これらを具体的に記載した事業計画書を用意しましょう。

3. 財務内容の見直し

  • 過去3期分の決算書
  • 財務指標(自己資本比率、債務償還年数など)の健全性
  • 信用情報の整備

融資判断に直結するため、事前に専門家にチェックを依頼するのも有効です。

4. 金融機関の選定

金融機関によって得意分野や審査基準は異なります。自社の業種や成長ステージに合った金融機関を選定することがカギです。


まとめ

協調融資は、複数の金融機関の力を借りて、大規模な資金を効率よく調達できる仕組みです。特に成長段階にある企業や、新たな事業に挑戦する企業にとっては、選択肢の一つとなります。

ただし、実行までには時間と準備が必要です。信頼関係の構築や事業計画の精緻化、財務体質の強化を通じて、協調融資の成功率を高めていきましょう。