
~制度の概要から申請の注意点まで~
中小企業が新製品の開発や生産性向上を目指す際、大きな投資となるのが金型の導入です。
その費用負担を軽減できる制度として注目されているのが、「ものづくり補助金」です。
本記事では、補助金の概要や対象となる金型の条件、申請の流れや注意点をわかりやすく解説します。
「ものづくり補助金」とは?
正式名称は「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」。
中小企業・小規模事業者が行う革新的な設備投資やプロセス改善に対して、国がその一部費用を補助する制度です。
補助率は通常1/2(小規模企業・賃上げ要件達成で2/3)。
上限額は事業内容によって異なり、750万円~2,000万円程度が目安です。
金型導入は補助対象になる?
金型の導入は、以下のいずれかに該当する場合に補助対象となります。
対象になるケース | 内容 |
---|---|
新製品の開発 | 世の中にない革新的な製品を製造するための金型 |
生産性の向上 | 作業時間短縮・自動化による生産効率アップ |
高品質化 | 不良率の低下・寸法精度の向上など、品質改善に資するもの |
逆に、以下のようなケースは対象外となる可能性が高いので注意が必要です。
- 単なる老朽化による既存金型の交換
- 製品仕様が大きく変わらない金型の再製作
- 汎用性の高い金型で、補助事業と直接関係しないもの
補助対象となる経費の例
金型そのものだけでなく、金型に関連する下記のような経費も対象になります。
経費区分 | 内容例 |
---|---|
機械装置費 | 金型加工機・射出成形機など、金型を活用する設備類 |
技術導入費 | 金型設計に必要なノウハウ・ライセンスの購入費 |
専門家経費 | 金型開発に関わる外部技術者の謝金や旅費 |
運搬費 | 金型や機械の輸送・設置費 |
クラウド利用費 | 金型設計ソフトのクラウド版利用料など |
図解:申請から補助金受給までの流れ
A[事業計画の立案] --> B[申請書作成]
B --> C[事務局へ申請]
C --> D[審査・採択結果通知]
D --> E[補助事業の実施]
E --> F[実績報告・補助金受給]
申請のポイント
補助金を活用するためには、説得力のある事業計画が不可欠です。以下の点を意識しましょう。
1. 革新性を明確にする
新たな製品・サービスであること、または既存事業にない取り組みであることを明示します。
例:従来不可能だった素材成形を可能にする特殊金型の導入など。
2. 生産性向上の数値目標を設定
「歩留まり5%改善」「製造リードタイムを30%短縮」など、具体的な数値目標を設定することが審査上有利です。
3. 補助事業に専ら使用することを明記
金型や設備は「補助事業専用」である必要があります。他用途と併用されるものは対象外となる可能性があります。
注意点
■ 補助金は全額ではない
補助金はあくまで費用の一部を補助するものであり、一定の自己負担が必要です。
■ 採択は競争制
採択率は年度や枠によって異なりますが、概ね30〜50%前後。事業計画の質が採否を左右します。
■ 申請書類が煩雑
申請には、財務資料や収支計画、見積書、事業計画書など多くの書類が必要です。専門家の支援を受けることで、スムーズに進められます。
よくある質問(Q&A)
Q. 金型製作前に申請してもよい?
A. はい。必ず「採択決定通知が届いた後」に契約・発注・着手する必要があります。
Q. 海外製の金型は対象になりますか?
A. 一定条件のもと対象になりますが、調達プロセスや証憑整備に注意が必要です。
Q. 一つの申請で複数の金型導入は可能ですか?
A. 可能ですが、事業全体の整合性や合理性が問われます。
まとめ
「ものづくり補助金」は、金型導入を通じて生産性向上や新製品開発を目指す中小企業にとって非常に有効な制度です。
しかし、補助金を受けるには対象要件を満たす必要があり、準備や書類作成にも一定の手間がかかります。
成功の鍵は、「明確な目的」「革新性」「数値目標」に加え、事業内容と補助金制度の整合性を意識することです。
金型導入を検討されている方は、ぜひ早めに制度内容を確認し、必要に応じて専門家に相談してみてください。