
はじめに
「せっかく育ててもすぐ辞めてしまう」「現場が忙しくてフォローできない」――
多くの中小建設業が直面する課題です。
求人広告よりも、育成よりも、実は最も重要なのが**“定着”。
人材が定着すれば、教育コストは減り、生産性は上がり、
結果として利益率も安定**します。
本記事では、社員・職人が「辞めない現場」をつくるための
環境づくり・マネジメント・仕組み化のポイントを解説します。
1. 離職の3大原因を理解する
| 原因 | 内容 | 対策の方向性 | 
|---|---|---|
| ① 人間関係の不安 | 現場で孤立・相談できない | 定期面談・チーム制導入 | 
| ② 将来が見えない | どれだけ頑張っても昇給・成長が曖昧 | キャリアパスの明示 | 
| ③ 働きにくい環境 | 長時間労働・安全配慮不足 | 労働環境改善・DX活用 | 
辞める理由の多くは「給料」ではなく、
“この会社にいても成長できない”という不安です。
2. 定着を高める3つの仕組み
① フォロー体制の仕組み化
定期的にコミュニケーションの場を設け、
不安や悩みを“早期発見”できる体制をつくります。
💬 実践例:
・週1回の朝礼でミニ意見交換(5分でもOK)
・月1回の1on1面談で課題ヒアリング
・職長・リーダーが新入社員のメンター担当
→ 「放置されない職場」が、安心感と信頼を生みます。
② キャリアパスを見える化
「この会社でどんな成長ができるのか」を明確に示します。
| 年次 | 役割 | 給与目安 | 主なスキル | 
|---|---|---|---|
| 1年目 | 作業補助 | 250万円 | 安全・基本動作 | 
| 3年目 | 一人職人 | 350万円 | 加工・施工・品質管理 | 
| 5年目 | 現場リーダー | 450万円 | 段取り・教育 | 
| 8年目〜 | 現場監督・管理職 | 550万円〜 | 工程・見積・顧客対応 | 
→ 成長の道筋がある会社ほど、人は「続けよう」と思える。
③ 働きやすい環境整備
人が辞めない職場は、“現場の小さな不満”に強い関心を持っています。
| 改善領域 | 改善策例 | 
|---|---|
| 労働時間 | 工程の前倒し管理・残業抑制ルール | 
| 安全・衛生 | 空調服・熱中症対策・休憩所の整備 | 
| IT環境 | スマホで報告・勤怠・連絡が完結 | 
| 福利厚生 | 作業服支給・表彰制度・社内イベント | 
→ 「環境を整える」ことは、「人を大切にする経営」の証です。
3. 定着率を上げる“心理的安全性”のつくり方
心理的安全性とは、**「意見を言っても否定されない環境」**のこと。
現場でも、これがあるかないかで雰囲気が大きく変わります。
📋 現場でできる実践例:
- 小さな改善提案を歓迎する(否定しない)
 - ミスを責めず、再発防止を一緒に考える
 - 「ありがとう」を言葉で伝える文化を作る
 
→ 「この職場は自分の意見が通る」と感じた瞬間、
 社員は“自分ごと”として仕事をするようになります。
図解:定着率を高める職場づくりの流れ
課題の把握
 ↓
フォロー体制の整備
 ↓
キャリアパスの見える化
 ↓
職場環境の改善
 ↓
心理的安全性の醸成
 ↓
定着率UP・人材定着・利益安定
4. 定着支援に活用できる制度・助成金
| 制度名 | 活用内容 | 
|---|---|
| 人材確保等支援助成金 | 定着率改善・評価制度導入に補助 | 
| 業務改善助成金 | 働き方改革・労働環境整備費用を支援 | 
| 省力化投資補助金 | 労働負担軽減のための設備投資に補助 | 
| IT導入補助金 | 勤怠・報告・人材管理ツール導入に活用可 | 
助成金を上手に活用すれば、「人を大切にする職場づくり」が
コストをかけずに実現できます。
チェックリスト:定着率向上の実践度(6項目)
- 定期的な面談・フォローを実施しているか?
 - キャリアパスを社内で明確に示しているか?
 - 残業・安全・衛生などの環境改善を進めているか?
 - 改善提案を歓迎する文化があるか?
 - 表彰・感謝・報酬制度を整備しているか?
 - 定着支援に使える助成金を活用しているか?
 
まとめ
定着率を高める最大のポイントは、「この会社で成長できる」と思わせることです。
安心・成長・評価の3つが揃えば、
社員も職人も“会社の一員として誇りを持って働く”ようになります。
人が辞めない会社は、「人を大切にする仕組み」を持つ会社です。
定着こそ、最大の生産性向上策なのです。


