企業が保有する資産をどれくらい効率よく売上につなげているかを評価する上で、「総資産回転率」は欠かせない重要指標です。本記事ではその概念や計算方法から、業界との比較視点、改善施策までをわかりやすく解説します。


総資産回転率とは?

“総資産回転率”は企業が持つ総資産(設備や在庫、売掛金など)を活用して、どれだけ売上を生み出しているかを示す指標です。

計算式:

総資産回転率(回数) = 売上高 ÷ 総資産

例えば、総資産が1億円、年間売上が12億円であれば、総資産回転率は 12回。これは資産が1年で12回「回転して」売上を作ったことになります。

図解:資産活用のイメージ

[ 総資産(設備・在庫など)]
              ↓
      活用して、
              ↓
[ 売上高(1年間の成果)]

高い回転率は、少ない資産でも効率よく収益を上げている証です。


業界間での違いはどれくらい?

業種によって、総資産回転率の適正値は大きく異なります。

  • 製造業:資産がかさむため低めな傾向
  • 小売業・卸売業:在庫型で回転が速く高めになりやすい
  • 不動産業:大きな資産を保持するため、全体の回転率は低めになる傾向があります

ただし具体的な数値は業種や企業規模によって異なるため、「同業他社や業界平均との比較」が重要です。


日数で見る「転換効率」

「回数」ではなく「日数」で資産の回転を知りたい場合には、以下の式が役立ちます:

総資産回転期間(日)= 総資産 ÷(売上高 ÷ 365)

たとえば、総資産が2億円で年間売上が4億円なら、1日あたり約109万円の売上。
これを使うと、同等の売上を上げるのに資産分が何日分使われているかがわかります。


他の指標との比較:経済効率 vs 利益効率

指標名着眼点分子観点
総資産回転率資産の効率性売上高資産がどれだけ稼いでいるか
ROA(総資産利益率)利益の効率性利益(純利益)利益の生み出し効率
ROE(自己資本利益率)株主視点の収益性利益(純利益)自己資本の運用効率

総資産回転率だけでなくROAやROEも合わせて見ることで、資産運用と収益性のバランスまで把握できます。


総資産回転率を改善するには?

① 売上を伸ばす

  • 既存顧客へのアプローチ強化
  • 顧客単価アップ施策や商品ラインの見直し
  • 売掛金回収のスピードアップ

② 総資産を効率化する

  • 遊休資産・非稼働資産の整理
  • 在庫の適正化による資産削減
  • 必要以上の現金保有の見直し(資金活用)

※ただし、無理な資産削減は業務に支障をきたすリスクもあるため、慎重な判断が必要です。


まとめ:資産を活かして「強い経営体質」へ

総資産回転率は、企業が持つ資産をどれだけ有効に活用して売上を上げているかを示す、シンプルかつ効果的な指標です。数値だけに注目せず、業界比較や経年推移の傾向を見ることが正確な判断につながります。

  • 計算式は「売上高 ÷ 総資産」
  • 同業との比較で自社の位置づけを確認
  • 改善には売上アップと資産効率の両面が鍵

経営分析や改善における第一歩として、ぜひ自社の総資産回転率を把握し、経営の効率化に役立ててください。