
■はじめに
補助金は「もらえるお金」ですが、実際には**“後払い”です。
つまり、採択されても一度は自社で費用を立て替えなければならない**。
この立て替え資金を確保できない企業は、
せっかく採択されても補助事業を実行できず、補助金を受け取れないというケースもあります。
そこで重要になるのが、**「補助金×融資の組み合わせ」**です。
この記事では、補助金を確実に活かすための資金繰り戦略と、
実行資金を安定的に確保するためのポイントを解説します。
■1. なぜ「補助金×融資」が必要なのか
補助金の多くは「事業実施→報告→審査→入金」という流れ。
実際に入金されるまで半年〜1年かかるのが一般的です。
💡資金ギャップの実例(ものづくり補助金の場合)
| 項目 | 時期 | 内容 |
|---|---|---|
| 採択決定 | 6月 | 補助金は“採択”された状態(まだ入金なし) |
| 交付決定 | 7月 | 契約・支払いが可能になる |
| 設備導入・支払 | 8〜11月 | 1,000万円の支出(自社立て替え) |
| 実績報告 | 12月 | 支払い証憑を提出 |
| 補助金入金 | 翌年3月頃 | 補助金500万円振込 |
🔎 Point
この期間、手元資金が一時的に減少します。
ここをカバーするのが、**融資による“つなぎ資金”**です。
■2. 「つなぎ融資」とは?
「つなぎ融資」とは、補助金の入金までの間に必要な資金を一時的に借りる制度です。
信用保証協会や日本政策金融公庫が、補助金採択企業向けに特別枠を設けています。
💡主なつなぎ融資制度
| 制度名 | 提供機関 | 概要 |
|---|---|---|
| 中小企業向け補助金つなぎ融資 | 日本政策金融公庫 | 採択通知書をもとに融資可能(最大1,000万円前後) |
| 信用保証協会制度融資 | 地方銀行・信用金庫 | 採択企業限定枠(保証付き) |
| 民間金融機関特別融資 | 地銀・信金 | 補助金採択企業の信用力を評価して融資 |
🔎 Point
補助金の「採択通知書」や「交付決定通知書」は、
金融機関にとって**信頼性の高い“信用資料”**です。
これを活用することで、融資が通りやすくなります。
■3. 資金繰りを安定させる「補助金×融資」の組み合わせ例
💼【ケース1】設備投資型(ものづくり補助金・省力化投資補助金)
総投資額1,500万円 → 補助金上限750万円 → 残りを融資でカバー
| 資金項目 | 金額 | 調達方法 |
|---|---|---|
| 設備代 | 1,500万円 | 銀行融資1,000万円+自己資金500万円 |
| 補助金入金 | 750万円(半年後) | 融資返済に充当 |
✅ 結果:自己資金負担を最小限に抑えながら、省力化設備を導入。
💼【ケース2】販路開拓型(小規模事業者持続化補助金)
総投資額150万円 → 補助金100万円 → 自己資金+短期融資でカバー
| 資金項目 | 金額 | 調達方法 |
|---|---|---|
| ホームページ制作費 | 100万円 | 補助金対象 |
| 広告・印刷費 | 50万円 | 自己資金または運転資金融資 |
| 補助金入金 | 約3か月後 | 広告費回収+追加販促に再投資 |
✅ 結果:運転資金を確保しながら販促を継続できた。
💼【ケース3】新事業進出型(新事業進出補助金)
総投資額3,000万円 → 補助金2,000万円 → 融資1,000万円で資金繰り確保
| 資金項目 | 金額 | 資金源 |
|---|---|---|
| 新店舗建設費・設備費 | 3,000万円 | 銀行融資1,000万円+自己資金500万円 |
| 補助金入金 | 翌年春(2,000万円) | 融資返済に活用 |
✅ 結果:リスクを抑えつつ、大型投資を実現。
■4. 銀行と上手に連携するためのポイント
融資をスムーズに進めるには、金融機関との関係構築が重要です。
💡審査を通りやすくする3つのコツ
- 採択通知書を提示する
→ 採択=第三者が事業の妥当性を認めた証拠 - 資金繰り表を添付する
→ 入出金のタイミングを明確に示す - 返済原資の見通しを説明する
→ 補助金入金後の返済計画を具体的に伝える
🔎 Point
「補助金採択企業」は銀行からの信用評価が高いです。
積極的に金融機関へ共有し、資金調達パートナーとして協力を得ましょう。
■5. 資金繰り表で見える化 ― “入金待ち”の期間を管理
補助金活用時の最大のリスクは、入金時期のズレです。
そのため、必ず資金繰り表でキャッシュの動きを見える化しておきましょう。
📊資金繰り表イメージ(例)
| 月 | 支出(設備代等) | 補助金入金予定 | 資金残高 |
|---|---|---|---|
| 6月 | ー | ー | 500万円 |
| 7月 | ー | ー | 500万円 |
| 8月 | 1,000万円支出 | ー | ▲500万円(融資で補填) |
| 12月 | ー | ー | ▲300万円 |
| 翌年3月 | ー | 750万円入金 | +450万円(返済へ) |
🔎 Point
資金ショートを防ぐためには、“補助金入金月”を前提に逆算管理することが重要です。
■まとめ
補助金は魅力的な制度ですが、資金繰りをコントロールできてこそ活かせる制度です。
- 補助金は「後払い」なので、つなぎ融資で先行投資を支える
- 銀行とは「採択通知書+資金繰り表」で信頼を築く
- 資金繰りを可視化し、入金ズレのリスクを回避する
補助金を単なる支援金ではなく、**“安全に実行できる資金戦略の一部”**として活用することが、成功の秘訣です。


