
■はじめに
設備投資や新事業を始める際、
「補助金」「融資」「リース」など、複数の資金調達手段があります。
しかし、それぞれの仕組みやタイミングを理解せずに進めると、
「補助金が入る前に資金が尽きた」「リースにしたら補助金対象外だった」
というケースも少なくありません。
本記事では、補助金・融資・リースの特徴と使い分け方をわかりやすく解説します。
■補助金とは ― 成長投資を支援する「後払い型」資金
補助金は、**国や自治体が特定の目的で交付する「もらえるお金」**です。
経済産業省や中小企業庁などが運営しており、返済の義務はありません。
💡補助金の特徴
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 資金の性質 | 返済不要(給付金) |
| 支給タイミング | 事業実施後(後払い) |
| 審査 | あり(採択率20〜50%) |
| 必要書類 | 事業計画書・見積書・証憑類 |
| 対象例 | 設備投資、販路開拓、DX導入、新規事業進出 |
🔎 ポイント
補助金は「自己資金が必要」な制度です。
一度支払った後、補助対象経費として精算されるため、
立て替え資金や運転資金の確保が必須になります。
■融資とは ― 計画と信用で資金を調達する「前払い型」資金
融資(ローン)は、金融機関から借り入れる資金です。
返済の義務がありますが、補助金のように審査結果を待つ必要がなく、
確実に資金を手元に入れることができます。
💡融資の特徴
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 資金の性質 | 借入金(返済義務あり) |
| 支給タイミング | 契約後すぐ(前払い) |
| 審査 | 金融機関による信用審査 |
| 必要書類 | 事業計画書、試算表、資金繰り表など |
| 対象例 | 設備購入資金、運転資金、創業資金など |
🔎 ポイント
補助金のような「採択待ち」がないため、スピード重視の投資に向いています。
また、補助金採択企業は融資が通りやすくなる傾向があります。
(=第三者に事業計画の妥当性が認められているため)
■リースとは ― 設備を“借りる”ことで負担を分散する方法
リースは、設備を購入せずリース会社が代わりに購入し、長期で借りる仕組みです。
初期費用を抑えたい企業に向いています。
ただし、原則としてリース契約は補助金の対象外となる点に注意が必要です。
💡リースの特徴
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 資金の性質 | 使用料(経費扱い) |
| 支払い方法 | 月々分割払い |
| 審査 | リース会社による与信審査 |
| 対象例 | 複合機、車両、計測機器、システム機器など |
| 補助金対象 | 原則対象外(所有権がリース会社にあるため) |
🔎 ポイント
リースは「経費」として扱えるため、節税効果がある一方、
所有権を持たないため補助金対象になりにくい。
補助金を使う場合は「現金購入」か「割賦契約」が基本です。
■3つの資金調達手段の比較表
| 項目 | 補助金 | 融資 | リース |
|---|---|---|---|
| 性質 | 給付(返済不要) | 借入(返済必要) | 賃貸(経費処理) |
| 入金時期 | 後払い(実績報告後) | 前払い(契約後すぐ) | 月々分割払い |
| 審査 | 採択審査あり | 信用審査あり | 与信審査あり |
| 所有権 | 企業に帰属 | 企業に帰属 | リース会社に帰属 |
| 補助金対象 | 〇 | 〇(併用可能) | ✕(対象外) |
| 向いている目的 | 設備導入・新規事業 | 運転資金・立て替え | 負担分散・経費管理 |
■補助金 × 融資の“組み合わせ活用”が最強
多くの企業では、補助金単独では資金が足りません。
なぜなら補助金は「後払い」であるため、最初の支払いを自社で立て替える必要があるからです。
そのため、補助金+制度融資の組み合わせが有効です。
💡組み合わせ例
- 省力化投資補助金で自動化設備を導入
- 設備代金(総額2,000万円)のうち、自己資金500万円+制度融資1,000万円で支払い
- 補助金(1,000万円上限)が後日入金 → 融資返済に充当
🔎 Point
補助金を受け取る前に資金ショートを起こさないよう、
「融資を含めた資金繰り計画」を同時に立てておくことが重要です。
■どの手段を選ぶべきか?
| 状況 | おすすめ手段 | 理由 |
|---|---|---|
| 設備投資を予定している | 補助金+融資 | 補助率が高く、レバレッジ効果大 |
| 資金繰りを安定させたい | 融資 | 即時調達が可能で返済計画も明確 |
| 初期費用を抑えたい | リース | 月額負担でキャッシュを温存 |
| 新規事業に挑戦したい | 新事業進出補助金+融資 | 成長投資+資金調達の両立が可能 |
■まとめ
補助金・融資・リースは、いずれも企業の成長を支える手段ですが、
タイミングと目的に応じた選択が不可欠です。
- 確実性を重視するなら「融資」
- 成長投資を狙うなら「補助金」
- キャッシュを守るなら「リース」
そして最も効果的なのは、
👉 「補助金+融資」のダブル活用で資金を戦略的に回すこと。

