省力化補助金の相談現場では、毎回必ず出てくる質問がいくつかあります。
その中でも 採択率・リスク回避・制度理解に直接影響する5つ に絞り、要綱に基づいてわかりやすく解説します。


【Q1】課題 → 設備 → 効果 は一貫していますか?(採択率の最重要ポイント)

省力化補助金で最も重視されるのは 「計画の整合性」 です。

次の3つが自然につながっているかどうかが、採択を左右します。

  • 現場の課題(数値で記載)
  • その課題を解決する設備
  • 設備導入によって得られる効果

▼NG例

  • 課題:人手不足
  • 設備:AI画像検査
  • 効果:売上アップ
    → 論理が飛び、整合性が弱く不採択になりやすい。

▼OK例

  • Before:45分/個
  • After:5分/個
  • → 月120時間削減(年1,400時間)
    → 効果が明確で設備導入の理由も納得できる

整合性が“一本の線”でつながっていることが必須です。


【Q2】導入設備は“省力化に直結”していますか?(対象外は不採択)

省力化補助金は、
「人が行っている作業を機械・システムに置き換える」 設備が対象です。

▼対象(OK)

  • 自動化ロボット
  • 自動包装機・検査ライン
  • AI画像検査装置
  • IoT生産管理
  • 自動倉庫

▼対象外(NG)

  • ホームページ制作
  • 広告費
  • パソコン単体
  • 事務用ソフト
  • 防犯設備
  • 落下防止ネット

省力化と直接関係しない設備は不採択の可能性が高くなります。


【Q3】交付決定前に契約・発注していませんか?(最大の禁止事項)

省力化補助金で最も多いミスがこれです。

交付決定前の契約・発注は、補助対象外で100%アウト。

▼NG行為

  • 契約書にサイン
  • 注文書・発注書の発行
  • 発注メールの送信
  • 工事・搬入の開始

▼ペナルティ

  • 補助金 全額取り消し
  • すべて自己負担

どれだけ優れた計画書でも、契約日がNGなら補助金は受け取れません。


【Q4】実績報告で“証拠書類”を揃えられますか?(補助金不支給の最大原因)

採択後に最も多いトラブルは、
「実績報告の不備で補助金が振り込まれない」 ことです。

補助金は、証拠書類が正しく揃って初めて支払われます。

▼必要書類

  • 請求書
  • 納品書
  • 検収書
  • 銀行振込明細
  • 仕訳帳
  • 設置前・設置後の写真

▼NG例

  • 現金払い
  • 請求額と振込額が一致しない(手数料差し引きなど)
  • 写真が不足
  • 発注日が交付決定前になっている
  • 納品書がない

実績報告は「提出すればOK」ではなく、
“書類の整合性”が最重要です。


【Q5】賃上げ要件を正しく理解していますか?(要綱準拠・返還リスク)

省力化補助金の賃上げ要件は、要綱に明確に定められています。

結論は 「①または②を満たし、さらに③も満たす」 ことが必要です。


▼賃上げ要件(正式版)

【①または②のいずれかを満たす】

① 給与支給総額の年平均成長率 +2.0%以上

② 1人当たり給与支給総額の年平均成長率が
事業実施都道府県の最低賃金の直近5年間の年平均成長率以上


【かつ ③も満たす】

③ 事業場内最低賃金が
事業実施都道府県の最低賃金+30円以上


▼わかりやすく言うと

賃上げ要件 = (①or②)+③ の両方が必要


▼審査官が重視するポイント

  • 賃上げの根拠が“定量的”に説明されているか
  • 賃上げ原資を、省力化効果で確保できるか
  • 5年間の効果報告で継続できるか
  • 最賃+30円が確実に達成できるか

賃上げは制度の中心なので、曖昧な記載は大幅減点になります。


【まとめ】

このTOP5を押さえれば制度理解の90%が完了します

▼重要5項目

  1. 課題 → 設備 → 効果 の一貫性
  2. 設備が省力化に直結しているか
  3. 交付決定前の契約禁止
  4. 実績報告の証拠を揃えられるか
  5. 賃上げ要件(①or②+③の同時達成)

この5つを押さえておけば、
申請時の不採択リスクと、採択後の返還リスクの両方を強力に回避できます。