
【導入】
「採択されたら終わりではありません」
——これは中小企業省力化投資補助金(一般型)で最も誤解されやすい点です。
実際には、採択後の交付申請・実績報告・効果報告が適切に行われなければ、
補助金が支払われなかったり、最悪の場合は返還対象となることもあります。
この記事では、採択企業が必ず理解しておくべき
採択後の流れ・必要書類・注意点・返還リスクをわかりやすく解説します。
1.採択後の全体フロー(年度横断型)
以下が採択後に必要となる一連の流れです。
採択
↓
① 交付申請(契約前の承認)
↓
② 設備発注・導入(交付決定後)
↓
③ 実績報告(導入後30日以内)
↓
④ 支払い(補助金交付)
↓
⑤ 効果報告(5年間)
💡 重要ポイント
✔ 採択されても、交付決定前に契約すると補助対象外(全額自己負担)
✔ 補助金は「後払い」なので、資金繰り計画が必須
✔ 効果報告は5年間続きます
2.① 交付申請のポイント(最初の関門)
採択後に最も多いミスは、
交付申請時の書類不備です。
提出する主な書類
- 交付申請書(交付金額の確定)
- 見積書(複数社比較が望ましい)
- 契約書案(契約前の状態)
- 仕様書・構成図
- 事業計画書(採択時と整合が取れていること)
- 賃上げ表明書(年平均+2%以上 等)
注意ポイント
- 見積書の“内訳”が不明瞭だと差し戻し
- 見積日、契約日、導入日が矛盾していないか
- リース契約を選ぶ場合は「対象経費の範囲」に注意
💡 交付申請の段階で約20〜30%が差し戻しになるといわれています。
早めの準備が必須です。
3.② 設備発注・導入(ここが最大のNGポイント)
最も重要なルールはこれです👇
交付決定前の契約・発注は一切NG(全額自己負担)。
よくあるNG例
- 交付決定前に機械の契約書を締結
- 業者に発注メールを送る
- 納品を急いで、交付決定前に設置してしまう
💥 これらはすべて補助対象外です。
経営者は現場に必ず「交付決定が出るまでは契約しない」ことを徹底させてください。
4.③ 実績報告(補助金を受け取るための最重要プロセス)
設備導入が完了したら、
30日以内に実績報告を提出する必要があります。
必要書類
- 実績報告書
- 支払い証拠(振込明細)
- 納品書・請求書
- 検収書
- 完了写真(設置前後が望ましい)
- 仕訳帳(会計データ)
- 出勤簿(賃上げ確認用)
落とし穴
- 現金払いはNG(振込だけ有効)
- 仕訳帳の勘定科目が不正確で差し戻し
- 請求書と振込日・金額が一致していない
💡 不備があると補助金支払いが遅延し、最悪半年以上かかることもあります。
5.④ 効果報告(5年間の義務)
省力化投資補助金の最大の特徴は、
採択後5年間にわたる効果報告義務です。
重要指標
- 付加価値額
- 労働生産性
- 給与支給総額
- 事業場内最低賃金
特に「給与支給総額の年2%以上増加」が最低条件。
未達成の場合は、一部返還のリスクがあります。
💡 第1回・第2回採択企業の多くが
「省力化による時間削減 → 付加価値創出 → 賃上げ」
の流れを示すことで未達リスクを低減しています。
6.返還リスクが発生するケース
以下のケースでは返還義務が生じる可能性があります👇
❌ 契約タイミング違反
交付決定前に注文書・契約書を交わした場合
❌ 違う設備を導入した
申請と異なる設備・仕様に変更した場合
❌ 支払い証拠が不適切
現金払い・証憑不足・二重計上
❌ 賃上げ計画が未達(基準未満)
❌ 不正受給
架空取引・虚偽見積・不適切な費用計上など
💡 補助金は「補助される権利」ではなく、
**適切に実行し続けることを前提に支払われる“条件付き支援”**です。
7.採択後に失敗しないための実務チェックリスト
| チェック項目 | 状況 |
|---|---|
| 交付決定前に契約していないか | ☐ |
| 見積書・契約書の仕様が一致しているか | ☐ |
| 実績報告に必要な証憑(請求書・振込明細)が揃っているか | ☐ |
| 現場の作業写真を残しているか | ☐ |
| 賃上げ計画を社内に共有しているか | ☐ |
| 効果報告用のデータ収集ルールを決めているか | ☐ |
| 会計担当・経営者・支援機関で共有ミーティングを行っているか | ☐ |
8.まとめ:採択後こそ“本当の勝負”
省力化補助金は、採択されるまでが半分、
採択後の実績報告・効果報告がもう半分です。
採択後に必要なのは、
✔ 正しい契約手続き
✔ 証憑の整理
✔ 賃上げ計画の実行管理
これらを適切に管理できれば、補助金を最大限活用し、「省力化」と「賃上げ」を両立する持続的成長モデルを実現できるはずです。

