採択事例に見る「実働する連携」の作り方

産地連携支援緊急対策事業の審査で、
最も評価の差が出やすいのが 産地連携の内容 です。

  • 「連携先の承諾は取っている」
  • 「覚書も締結予定」
  • 「一緒に取り組む意思はある」

こうした状況だけでは、採択までは到達しません。

なぜなら、この補助金が求めているのは
形式的な連携ではなく、実働する連携
だからです。

本記事では、
R4・R5の採択事例から読み解いた
評価される産地連携計画の書き方 を整理します。


評価される産地連携計画の共通点①

役割分担が「誰が・何を・どこまで」明確

採択事例では、

  • 誰が(どの組織が)
  • 何を(具体的な業務)
  • どこまで(範囲・量・期間)

を明確に整理しています。

例:青果加工メーカーの例

  • 農家:原料供給、規格情報の共有
  • メーカー:加工・選別、品質基準の提示
  • JA:物流調整、数量管理

曖昧さを排除し、
実際に動く線で記載 している点が評価されています。


評価される産地連携計画の共通点②

連携内容が事業構想とセットで説明されている

採択事例では、

  • 国産原料をどう扱うのか
  • それが設備投資とどう結びつくのか

が明確に示されています。

悪い例

「産地と連携します」
→ 何を連携するのか不明

良い例

「産地で規格調整した原料をメーカー側で追加選別し、
新ラインで製品化する」

連携によって実現する工程の変化 まで踏み込めているかが鍵です。


評価される産地連携計画の共通点③

産地側のメリットが示されている

審査では、次の視点が重要となります。

  • 産地側にとっての利益は?
  • 持続的な関係につながるか?

採択事例では、

  • 取引数量の安定
  • 規格外品の活用
  • 生産者の所得向上
  • 高付加価値な販路開拓

といった産地側メリットを
必ず 具体的に 書いています。


評価される産地連携計画の共通点④

定量的説明がセットになっている

構想を説明する際、

  • 想定取引量
  • 単価・数量の変化
  • 稼働日数や供給安定性

が簡潔でよいので整理されています。

なぜなら、
数量が伴わなければ継続性の根拠にならない
ためです。


実務上の注意点|「覚書だけ」では足りない

よくある誤解として、

「覚書(MOU)があれば連携の証明になる」

という考え方があります。

実際には、
覚書は 前提条件でしかなく

  • 連携の“実態”
  • 取組内容の“具体性”
  • 調達構造転換の“因果関係”

が見える計画が評価されています。


最も落ちるパターン

「産地側の役割が空欄」の計画

以下に当てはまる場合は要注意です。

  • 産地側が何をするのか説明できていない
  • 相手のリスク負担を無視している
  • 産地側の供給能力が不明

これは審査上、
「名義貸しの疑いあり」と判断されます。


R8公募までに整理すべき産地連携情報

次回公募へ向けては、次の整理が必須です。

  1. 連携先(農業者・漁業者・団体)の確定
  2. 実施工程の明確化
  3. 供給能力と数量の裏付け
  4. 双方のメリット
  5. 覚書・合意形成の進捗

これらが固まると、
計画の実現性が一気に高まります。


まとめ

採択事例に共通する、評価される産地連携計画のポイントは、

  • 役割分担の明確化
  • 事業構想との整合性
  • 産地側のメリットの説明
  • 定量的な裏付け

に整理できます。

「産地との良好な関係」だけでは不十分で、
“連携が動き出している構造” が見える計画が通ります。