中小企業が金融機関から融資を受ける際、経営者個人が連帯保証人となる「経営者保証」が一般的でした。
しかし、近年では経営者保証なしで利用できる融資制度が登場し、2024年3月からは保証料を上乗せすることで経営者保証を不要とする信用保証制度が開始されました。

経営者保証が不要になることで、経営者は個人の財産リスクを負うことなく、事業成長に向けた投資や事業承継に積極的に取り組むことができます。

本記事では、経営者保証なしで利用できる新たな信用保証制度の詳細や、経営者保証を提供して融資を受ける際のリスクについて解説します。

経営者保証が不要になった背景

従来、経営者保証は金融機関が融資を行う上で、債権を保全するための重要な手段でした。
しかし、経営者保証は経営者個人に過大なリスクを負わせ、積極的な事業展開や円滑な事業承継を阻害する要因となることが指摘されていました。

このような課題を解決するため、政府は「経営者保証に関するガイドライン」を策定し、2014年2月から運用を開始しました。
このガイドラインは、経営者保証に依存しない融資を促進することを目的としています。

しかし、中小企業の多くが利用する信用保証制度では、依然として多くの融資で経営者保証が求められているのが現状です。
そこで、経済産業省は経営者保証なしの新たな信用保証制度を創設し、保証料の上乗せを条件に経営者保証を不要とする仕組みを導入しました。

経営者保証が不要になる新たな信用保証制度

経営者保証が不要となる新たな信用保証制度は、主に以下の3つです。

  • 事業者選択型経営者保証非提供制度
  • 事業者選択型経営者保証非提供促進特別保証制度
  • プロパー融資借換特別保証制度

これらの制度は、いずれも事業性資金の融資を対象としており、創業者向けの制度ではありません。
創業者向けには、「スタートアップ創出促進保証」という制度が別途用意されています。

事業者選択型経営者保証非提供制度

この制度は、保証料を上乗せすることで、経営者保証なしで信用保証付き融資を利用できる制度です。2024年3月15日から申し込み受付が開始されています。

対象要件

以下の5つの要件をすべて満たす法人が対象となります。

  1. 過去2年間、金融機関の求めに応じて決算書等を提出していること
  2. 直近決算で代表者への貸付金等がなく、役員報酬等が社会通念上相当な範囲内であること
  3. 直近決算で債務超過でない、または直近2期の決算で減価償却前経常利益が連続して赤字でないこと
  4. 上記1および2を継続することを誓約する書面を提出すること
  5. 保証料率の引き上げを条件に経営者保証を提供しないことを希望すること

保証料率

保証料率は、上記の要件の3つ目の達成度に応じて、通常の保証料率に0.25%または0.45%が上乗せされます。

対象となる保証

無担保保険、公害防止保険、エネルギー対策保険、海外投資関係保険、新事業開拓保険、事業再生保険が対象となります。

事業者選択型経営者保証非提供促進特別保証制度

この制度は、事業者選択型経営者保証非提供制度の利用を促進するため、期間限定で設けられた制度です。2027年3月末までの期間は、上乗せされる保証料率が軽減されます。

対象要件

事業者選択型経営者保証非提供制度と同様です。

保証料率・補助率

保証料率は同様ですが、保証の申し込み時期に応じて、国から補助金が支給されます。

  • 2024年3月15日~2025年3月末:0.15%相当
  • 2025年4月~2026年3月末:0.10%相当
  • 2026年4月~2027年3月末:0.05%相当

保証限度額

保証限度額は、対象となる保証制度ごとに8,000万円です。セーフティネット保証4号または5号の場合は、別枠で8,000万円となります。

保証期間

一括返済の場合は1年以内、分割返済の場合は10年以内(据置期間1年以内)です。

プロパー融資借換特別保証制度

この制度は、経営者保証付きのプロパー融資(信用保証協会の保証がない融資)を、経営者保証なしの信用保証付き融資に借り換えるための制度です。2027年3月末までの期間限定で提供されます。

対象要件

経営者保証付きのプロパー融資の借り入れがあり、経営者保証なしの信用保証付き融資への借り換えを希望する法人で、以下の要件をすべて満たす必要があります。

  • 資産超過であること
  • EBITDA有利子負債倍率が15倍以内であること
  • 法人と個人の資産が分離されていること
  • 申し込み時点で返済緩和中の借り入れがないこと

保証料率

保証料率は0.45%~1.90%で、融資制度や借り入れ状況によって変動する可能性があります。

保証限度額

保証限度額は2億8,000万円(組合等は4億8,000万円)です。

保証期間

一括返済の場合は1年以内、分割返済の場合は10年以内(据置期間1年以内)です。

借り入れ時の要件

借り換えに際しては、以下のいずれかの要件を満たす必要があります。

  • 経営者保証なし、かつ保全のない保証協会の保証がないプロパー融資を借り入れること
  • 本制度による返済部分を除くプロパー融資の経営者保証を解除し、かつ保全をなくすこと

保証料の上乗せ分を補助する自治体

新たな信用保証制度で上乗せされる保証料は、原則として事業者の負担となりますが、一部の自治体では上乗せ分を補助する制度を設けています。

例えば、宮崎県の高鍋町、新富町、木城町、都農町、高千穂町、日之影町、五ヶ瀬町などが補助を行っています。事業所がある地域の自治体でも補助制度がないか確認してみましょう。

従来の保証人不要制度との違い

従来の保証人不要制度は、経営者保証ガイドラインに基づいて設計されており、経営者の資産分離、財務基盤の強化、経営の透明性確保などが条件となっていました。

一方、新たな信用保証制度では、保証料の上乗せが主な条件となり、従来の制度に比べて要件が緩和されています。

日本政策金融公庫の「経営者保証免除特例制度」

日本政策金融公庫でも、経営者保証ガイドラインに基づく「経営者保証免除特例制度」が利用可能です。

対象要件

経済状況から返済が見込まれ、所定の要件を満たす法人が対象となります。

上乗せ率

適用される融資制度の利率に、要件に応じて異なる利率が上乗せされます。

担保の有無

担保の提供は任意です。

経営者保証で融資を受けるリスク

経営者保証を提供して融資を受ける場合、以下のようなリスクがあります。

  • 経営者個人の財産で返済しなければならない
  • 新たな事業展開への意欲が抑制される
  • 事業承継のハードルが高まる

新たな融資制度を活用しよう

新たな信用保証制度は、保証料の上乗せというデメリットはあるものの、経営者保証のリスクを回避し、積極的な事業展開や円滑な事業承継を可能にするメリットがあります。各制度の要件を確認し、自社の状況に合わせて活用を検討しましょう。