
「計画はきっちり書いたのに、なぜか採択されなかった」
——この悩み、実は非常に多いです。
中小企業省力化投資補助金(一般型)は、単なる“設備補助”ではなく、
**「省力化を通じて賃上げと付加価値向上を実現できるか」**を審査される制度です。
この記事では、中小機構の審査観点と第1回・第2回採択結果の分析から、
審査員が実際に見ている3つのポイント、そして不採択になりやすい企業の特徴をわかりやすく整理します。
1.審査員が見るポイント①:計画の「一貫性」と「ロジック」
最初にチェックされるのは、「計画全体が筋が通っているか」です。
申請書の中で、
「現状の課題 → 導入する設備 → 期待する効果 → 賃上げ」
このストーリーが矛盾なくつながっているかが審査の第一関門です。
💬 例:悪いケース
「生産性を上げたい」と言いながら、事業計画では“人件費削減”ばかり強調。
「賃上げ」が目的の制度なのに、逆方向の表現になってしまっている。
💡 改善ポイント
- 課題と設備の“対応関係”を明確に書く
- 「削減した人件費をどう再投資するか(賃上げ・新事業など)」を具体化
- 図で“ビフォー・アフター”を示すと説得力UP
2.審査員が見るポイント②:数値目標の「根拠」と「現実性」
2つ目は、数値の妥当性と実現性です。
省力化補助金では、「労働生産性+4%」「賃上げ+2%」が最低ライン。
しかし、高すぎる数値や根拠のない数値はかえってマイナス評価になります。
📊 審査員がチェックする視点
- 過去3年分の売上・人件費推移と比較して、数値が現実的か
- 設備導入後の効果算出方法(時間短縮率、人員再配置など)が明確か
- 財務シミュレーションが「一過性」ではなく、持続的か
💬 例:良い表現
溶接工程の自動化により、作業時間を1日8時間→5時間へ短縮。
浮いた3時間を新規受注対応に再配分し、営業利益を年5%増加見込み。
3.審査員が見るポイント③:経営者の「実行力」と「体制」
3つ目の審査軸は、「実行できる会社か」。
いくら素晴らしい計画でも、実現できる裏付け(体制・支援者・資金)がないと採択は難しくなります。
🧭 審査員が注目する点
- 経営者が主体的に関与しているか(他人任せの書類でないか)
- 設備稼働後の運用・教育体制が明確か
- 認定支援機関・金融機関との連携ができているか
💬 例:評価が高い表現
「導入後3か月は試運転・研修を実施し、操作習熟率100%を目指す」
「地元金融機関と連携し、運転資金の安定確保を図る」
🚫 不採択企業の共通点5つ
過去の第1回・第2回採択結果(不採択約2,000社)の傾向から見える共通点は以下の通りです。
| No | 不採択企業の特徴 | 審査員コメント例 |
|---|---|---|
| ① | 設備導入理由が不明確 | 「なぜ必要なのかが書かれていない」 |
| ② | 賃上げ目標が曖昧 | 「最低賃金+30円の根拠が示されていない」 |
| ③ | 効果数値が“希望的観測” | 「根拠データなし」「シミュレーションが甘い」 |
| ④ | 外注丸投げの計画 | 「経営者主体の計画でない」 |
| ⑤ | 書類不備・ミス入力 | 「添付漏れ・署名忘れなど基本ミス」 |
💡 補足:
特に第2回では、「賃上げ方針の未記載」「Excel様式(その3)の未添付」で失格になったケースが多く報告されています。
🖼️ 【図解提案】
「審査員が見る3つのチェックポイント」
① 一貫性・ロジック
(課題→設備→効果→賃上げ)
② 根拠ある数値
(労働生産性+4%、賃上げ+2%)
③ 実行力・体制
(経営者の主体性+支援機関連携)
✅ まとめ:審査員に“伝わる”計画をつくろう
省力化投資補助金は、書類の完成度よりも「実現性と一貫性」が重要です。
採択される計画には、
- 具体的な課題解決ストーリー
- 数値根拠に基づく目標
- 実行できるチーム体制
が共通しています。
「現場の課題を経営の視点で語ること」——
それが、審査員に響く“強い計画書”をつくる最大のポイントです。

