
■ はじめに
食品メーカーが設備投資を成功させる上で、
最も重要なものは 事業計画の質 です。
補助金でも、銀行融資でも、405事業でも、
「良い計画=根拠がある・数字が合う・実現性が高い」
という共通した評価基準があります。
しかし現場では、
- 設備の必要性が説明できない
- 投資効果の数字が曖昧
- 売上・利益構造が不透明
- 計画の整合性が取れていない
などの理由で、
せっかくの投資機会が却下されるケースが後を絶ちません。
本記事では食品メーカー向けに、
補助金・融資・405事業すべてで通用する
「通る計画」の作り方をまとめます。
■ 1. 最初に「設備更新の目的」を明確にする
食品メーカーの設備投資は、
目的を明確化することで説得力が大きく変わります。
よくある目的は次の5つ。
✔ 投資目的の代表例
- 省人化・自動化(人手不足対応)
- 生産能力UP(受注増に対応)
- 歩留まり改善(原価高騰・ロス削減)
- 品質安定・クレーム減少(HACCP対応含む)
- 原料調達体制の強化(産地連携)
特に食品メーカーでは、
「人手不足」「歩留まり」「品質安定」が強い根拠になります。
■ 2. 現状の課題を“数字”で示す(感覚ではNG)
事業計画の最大のポイントは、
**「現状の課題を数字で説明すること」**です。
例えば:
● 悪い例
「今のラインは人手が必要なので困っている」
● 良い例
- 人件費:月160万円
- 計量作業に4名を配置
- 日産能力:4,000食 → 受注を取りこぼしている
- 歩留まり:92% → 原材料ロス増加
- 故障回数:年間6回 → 生産ロス12日
このように“見える化”すると、
銀行も補助金審査も理解しやすくなります。
■ 3. 設備導入後の改善効果を“数字で”示す
設備投資の目的は
利益改善・生産性向上です。
したがって、
投資によってどんな改善が起きるかを具体的に示す必要があります。
✔ 改善効果の例
- 人員:4名 → 2名へ(年間▲600万円)
- 歩留まり:92% → 97%(原価▲500万円)
- 生産能力:4,000食 → 5,500食(売上+1億円)
- 残業削減:月120時間 → 40時間(残業代▲150万円)
- 品質クレーム減少:年12件 → 3件(ロス削減▲200万円)
こうした 数値インパクトの一覧表 は、
すべての審査で高評価を受けます。
■ 4. 投資回収(ROI)を示す
銀行も補助金審査も、
「投資後どれくらいで元が取れるか」を重視します。
✔ ROIの例
- 投資金額:3,000万円
- 年間効果:1,200万円
→ 投資回収:2.5年
ROIが3年以内であれば、
金融機関は前向きに判断します。
■ 5. 売上・利益計画は“根拠付き”で作成する
食品メーカーの計画で多い失敗が、
売上・利益の根拠が曖昧なことです。
● 根拠の明確化(例)
- 生産能力:1日4,000食 → 5,500食
- 稼働日数:22日
- 販売単価:350円
- 新規取引先:A社1,500万円、B社800万円
- 歩留まり改善:年間500万円
このように積み上げ方式で作ると、
信頼性の高い計画になります。
■ 6. 設備投資と連動した「人員計画」も必須
食品メーカーでは、
人員計画も審査の重要ポイントです。
● 見られるポイント
- 自動化によって人を減らしすぎていないか
- 設備稼働に必要なスキルは確保できているか
- 増産に伴う人員確保の見通しはあるか
- 採用・配置転換・教育の計画は妥当か
食品工場では「人の配置」が必ず話題になります。
■ 7. 最後に「資金計画」を整える
食品メーカーの資金計画は、
以下のセットで作ると最も強くなります。
補助金(1/2補助)
+
つなぎ融資(短期)
+
長期融資(設備資金)
+
405事業(金融との協調)
この構造を計画書で明示すると、
銀行・補助金審査双方から高評価となります。
■ まとめ
設備投資を成功させる企業は、
「なぜ」「どの設備」「どんな効果」「どう返済するか」
を数字で説明できる会社です。
食品メーカーでは特に、
- 人手不足解消
- 歩留まり改善
- 品質安定化
- 生産能力向上
の4つが大きな評価ポイントになります。

