〜事業発展のステップ③〜⑤:組織・マネジメント・人材戦略〜

前回の記事では、事業発展プログラムの初期ステップである「①事業の究極の目標」「②戦略的目標」について解説しました。今回はその続きとして、「③組織戦略」「④マネジメント戦略」「⑤人材戦略」の3つのステップをまとめてご紹介します。


ステップ③:組織戦略 — 明確な役割分担が成果を生む

多くの中小企業では、社長が「社員は自分の役割を理解している」と信じています。しかし、現実には責任の所在が曖昧なことが多く、結果として仕事の偏りや不満が生まれます。

組織図の重要性

ガーバー氏が強調するのは、「明確な組織図」の作成です。これは現状の組織図ではなく、将来達成したい目標(戦略的目標)を実現するための理想の組織図です。

組織図=仕事の分業構造+責任の明確化

▼図解:組織図の構成要素

理想の戦略的目標
   ↓
必要な機能
   ↓
役職と役割
   ↓
社員の配置

例えば、営業、開発、マーケティング、バックオフィスなど、事業に必要な機能ごとに役割を定義します。社員がどのポジションを兼務していても、それぞれの役割に基づいたルールで仕事を進めることが重要です。

経営者もルールを守る

組織が機能するには、「社長自身もルールを守る姿勢」が欠かせません。営業を兼務しているなら営業担当者としてのルールに従い、日報も提出する。これを「エンプロイーシップのルール」と呼び、経営者が率先して守ることで、社内の信頼と秩序が生まれます。


ステップ④:マネジメント戦略 — 人ではなく仕組みを管理する

ガーバー氏は「人を管理するのではなく、仕組みを管理せよ」と説いています。

システムが再現性のある成果を生む

高度なスキルを持つ人材に頼るのではなく、普通の人でも高い成果を上げられるような「仕組み」を整えることがマネジメント戦略の核心です。

例:フランチャイズ店のオペレーションマニュアル
マニュアルがあることで、未経験者でも一定品質のサービスを提供できます。

これはマーケティングにも直結します。顧客に対する「一貫した体験」を提供することで、信頼と満足を積み重ねていくのです。

顧客体験は仕組みでつくる

「おもてなし」は個人の資質だけに依存するものではありません。再現性のある接客品質をつくるために、ホテル業界などでも詳細なマニュアルやチェックリストが使われています。誰でも高い水準のサービスが提供できるようにする、それがマネジメントの本質です。


ステップ⑤:人材戦略 — 事業を“ゲーム化”する

人材戦略のテーマは、「社員が仕事に夢中になる仕組みを作る」ことです。社員にやる気を出させるのではなく、「成果が出ることでやる気が湧く」ように設計することがポイントです。

事業を“ゲーム”として設計する

ゲームの3要素:目標、ルール、成長

社員が成果を出す喜びを感じ、次のチャレンジに向かう。この好循環を仕組みとして設計するのが人材戦略です。日々の業務に「意味」や「成長の実感」があることが、持続的なモチベーションにつながります。

「初心者の心」がカギ

新入社員には、過去のやり方を押しつけるのではなく、自社の“ゲームのルール”に従ってもらうことが大切です。

採用の基本:どんな経歴でも“初心者の心”を求めよ

ベテラン人材でも、自社独自のやり方に順応する姿勢がなければ、属人化のリスクを招きます。


まとめ:仕組みと意義が人と組織を動かす

今回ご紹介したステップ③〜⑤は、どれも会社の基盤を強化するために不可欠な考え方です。

  • 組織戦略:理想の未来像に基づいて、役割と責任を明確にする
  • マネジメント戦略:仕組みで成果を生む。人ではなくプロセスを設計する
  • 人材戦略:事業を「成長のゲーム」にし、社員に成果と意義を感じさせる

▼図解:事業発展ステップの関係性

ステップ① 人生の目的  
   ↓
ステップ② 事業の戦略的目標
   ↓
ステップ③ 組織構築(役割分担)
   ↓
ステップ④ マネジメント(仕組み化)
   ↓
ステップ⑤ 人材戦略(やる気と成長)

これら3ステップは、単なる理論ではなく、実際に数多くの企業が取り入れ、成果を上げてきた実践的な考え方です。組織を「人で回す」のではなく「仕組みで回す」ために、ぜひ参考にしてみてください。

次回は、事業発展プログラムの最終章「マーケティング戦略」と「システム戦略」について解説していきます。