はじめに

「工事が終わってみたら赤字だった」「どこでコストが膨らんだのか分からない」――
この悩みは多くの中小建設業に共通しています。

原因は、原価管理が“事後管理”になっていること
原価をリアルタイムで見える化すれば、
現場ごとに利益を確保し、黒字化体質へと変わります。


1. 原価管理が遅れると何が起きるか

問題点具体的な症状結果
集計が月末どの現場が赤字か分からない手遅れの対策
領収書・伝票管理が煩雑担当者任せの管理集計漏れ・誤差発生
見積・実績のズレ現場ごとに誤差が拡大利益構造が不明確

原価を「終わってから見る」から、「動いている途中で見る」へ。
それが利益を守る第一歩です。


2. 原価管理の基本構造

原価は大きく4つの要素に分けられます。

区分内容現場での例
材料費資材・部材などの購入費鋼板・配管・ネジ・接着剤
労務費自社・外注職人の人件費施工・溶接・運搬
外注費協力会社への発注費塗装・電気工事など
経費移動・ガソリン・消耗品などガソリン・宿泊・備品

この4項目を現場単位で管理できれば、
「どの工程で利益が減っているか」が見えるようになります。


3. リアルタイム原価管理の実践ステップ

Step1:実行予算を作る

見積時点で“原価の限界値”を明確にします。

項目金額備考
材料費150万円鋼板・接着材・パイプ類
労務費80万円自社職人5人×2週間
外注費40万円電気・塗装
経費10万円運搬・燃料等
合計原価280万円粗利率:30%目標

これを基準として、「進捗ごとの実績」を対比します。


Step2:現場ごとの実績をリアルタイム記録

紙の台帳では集計が遅れます。
日報データ・仕入れ情報・外注請求をクラウド上で一元管理しましょう。

💡 活用例:
・日報アプリで作業時間を自動集計
・仕入れ明細をスマホで撮影・登録
・外注費をExcel/クラウドに即反映

→ 現場の数字が翌日には見える体制を作ることがポイントです。


Step3:実行予算とのズレを分析

週1回の「原価レビュー」を定例化し、差異を確認します。

項目予算実績差異コメント
材料費150万158万▲8万鋼板単価上昇
労務費80万75万+5万作業効率改善
外注費40万42万▲2万追加工事発生

→ これにより、早期に手を打てるようになります。


図解:リアルタイム原価管理の流れ

実行予算の設定
 ↓
日々の実績データ収集
 ↓
クラウド集計・可視化
 ↓
週次で差異分析
 ↓
早期対策・黒字確保

4. ツールと補助金を活用する

ツール活用内容
Excel+クラウド共有手軽に原価表をリアルタイム更新
ANDPAD / KENTEM見積・実行予算・実績を一括管理
freee会計 / 弥生会計会計データと現場原価を自動連携

さらに、導入費用は補助金で賄えます。

制度内容
IT導入補助金原価・現場管理ソフト導入(最大2/3補助)
省力化投資補助金自動集計・データ連携システム導入
業務改善助成金管理効率化による労働時間削減

5. 黒字現場を生む仕組み ― 「見える管理」へ

リアルタイム原価管理の最大の効果は、
現場リーダー自身が「利益意識」を持つようになることです。

💬 例:

  • 「この工程、外注に出すと赤字だな」
  • 「材料ロスを減らせば粗利率2%上がる」
  • 「進捗と原価を一緒に見よう」

数字が見えることで、判断が早くなり、結果として**全員が“利益をつくるチーム”**になります。


チェックリスト:原価管理の仕組み度(6項目)

  1. 工事ごとに実行予算を作成しているか?
  2. 原価を4区分(材料・労務・外注・経費)で把握しているか?
  3. 実績データをリアルタイムに更新できているか?
  4. 週次または月次で差異分析を行っているか?
  5. 現場リーダーが原価を意識して行動しているか?
  6. 原価管理ツール・補助金を活用しているか?

まとめ

原価管理は「経理の仕事」ではなく、現場の経営ツールです。
数字をリアルタイムで見える化すれば、
損益のブレを防ぎ、確実に黒字を積み上げることができます。

“終わってから管理”ではなく、“進行中に改善”。
それが、これからの中小建設業に求められる「強い現場経営」です。