
中小企業が競争力を高め、持続的な成長を実現するために活用できる制度のひとつが「経営力向上計画」です。設備投資や人材育成、業務効率化など、自社の強化に向けた取り組みを計画としてまとめ、国の認定を受けることで、税制優遇・金融支援・補助金加点など多くのメリットが得られます。
この記事では、経営力向上計画の概要や認定の流れ、具体的なメリット、活用のポイントまでをわかりやすく解説します。
経営力向上計画とは?
経営力向上計画は、「中小企業等経営強化法」に基づく制度で、企業が人材育成、設備投資、業務改善、コスト管理などを通じて経営力(=収益力・生産性)の向上を図る取り組みを、国(所管省庁)が認定する仕組みです。
制度の目的
中小企業は日本経済の屋台骨を支えていますが、大企業と比べて資金力・人材・情報が不足しているケースも多く、経営課題を自力で乗り越えるのが難しいことも少なくありません。
経営力向上計画は、そうした中小企業が自社の課題を明確にし、具体的な改善計画を立て、国の支援を受けながら着実に体質強化を図るための制度です。
【図解】経営力向上計画の流れとメリット
┌──────────────┐
│ 自社の課題分析 │
└──────┬───────┘
↓
┌──────────────┐
│ 計画書の作成 │
│ (目標・取組・スケジュール)│
└──────┬───────┘
↓
┌──────────────┐
│ 所管省庁へ申請・審査 │
└──────┬───────┘
↓
┌──────────────┐
│ 認定通知の交付 │
└──────┬───────┘
↓
┌──────────────┐
│ 税制優遇・補助金加点・融資 │
└──────────────┘
経営力向上計画の主なメリット
認定を受けることで、以下のような支援策を活用できます。
1. 税制優遇措置(固定資産税の軽減)
一定の要件を満たす設備(機械装置・工具・器具など)を取得すると、固定資産税が3年間半額に軽減されます。導入コストの負担を抑えつつ、生産性向上につながる設備投資が実現しやすくなります。
2. 法人税の優遇(中小企業経営強化税制との連携)
対象設備を取得した際、即時償却または7〜10%の税額控除が受けられます(税理士の確認要)。
3. 金融支援
日本政策金融公庫等の政策金融機関による低利融資や、信用保証協会の保証枠拡大・保証料率軽減が可能となり、資金調達のハードルが下がります。
4. 補助金申請での加点
「ものづくり補助金」「IT導入補助金」「事業承継・引継ぎ補助金」などの審査で加点対象となり、採択の可能性が高まります。
5. 信用力向上
国の認定を受けていることが、金融機関や取引先からの信頼性向上につながります。
認定を受けるまでのステップ
① 現状分析・課題の洗い出し
まず、自社の経営状況を客観的に分析し、どこに課題があるのかを明確にします。SWOT分析(強み・弱み・機会・脅威)などを活用するのも有効です。
② 計画書の作成
- 目標設定:売上高・利益・生産性などの数値目標
- 取り組み内容:設備投資・教育訓練・IT導入など
- スケジュール:3〜5年間の実施計画を明記
③ 提出・審査
所轄の経済産業局または主務省庁に申請。審査において、計画の妥当性や実現可能性がチェックされます。
④ 認定通知の受領
認定までの期間は、申請から約30〜45日程度が目安です。
申請時の注意点
- 設備投資の場合は工業会の証明書が必要
- 中古設備は対象外
- GビズIDの取得で電子申請が可能(経営力向上計画申請プラットフォーム利用)
- 不備があると差し戻されることもあるため、専門家の支援を活用するのが効果的です
経営力向上計画を活用するポイント
活用のポイント | 内容 |
---|---|
専門家に相談する | 税理士・中小企業診断士の助言で、計画の精度が向上 |
他制度と組み合わせる | 補助金・税制・融資とセットで使うと効果が高まる |
実行・改善を継続する | 計画通りに進め、進捗状況を定期的に確認・見直すことが重要 |
まとめ
経営力向上計画は、中小企業が自社の経営課題を見つめ直し、戦略的に改善していくための強力なサポート制度です。
✅ 設備投資を考えている企業
✅ 補助金に挑戦したい企業
✅ 資金調達の手段を広げたい企業
このような中小企業にとって、大きなチャンスとなる制度といえるでしょう。
【補足】制度情報の確認先
- 経営力向上計画ポータルサイト
- 経済産業省、中小企業庁の各公式サイト
- 地元の商工会・商工会議所、中小企業支援機関