
近年、GoogleやFacebookといった世界的企業が導入し注目を集めている目標管理の手法「OKR(Objectives and Key Results)」。従来のMBOやKPIとは異なる特徴を持ち、組織の生産性やエンゲージメントを高めるためのツールとして、多くの企業が導入を検討しています。
本記事では、OKRの基本的な構造、他の目標管理手法との違い、導入のメリット、効果的な運用方法までを解説します。
1. OKRとは?
OKRとは「Objectives and Key Results(目標と主要な結果)」の略で、米インテル社で生まれた目標設定・管理のフレームワークです。チームや個人が短期間でチャレンジングな目標に取り組み、結果を明確に数値で測定する仕組みが特徴です。
- Objective(目標):定性的かつやる気を引き出すシンプルな目標
- Key Result(主要な成果指標):目標達成度を測定する定量的な指標(2~5個が目安)
この構造により、メンバー全員が方向性を共有し、スピード感を持って目標に向かうことが可能になります。
2. OKRの基本構造と運用
Objective(O)
- シンプルで覚えやすく、挑戦的な目標
- 数値指標は含めない
- 四半期程度で達成を目指す
Key Results(KR)
- 数値で測定可能な成果
- 各Oに対し2〜5個程度
- 60~70%の達成で成功とする「ストレッチ目標」
- 「自信度(1〜10)」で達成可能性を自己評価する
スコアリング
各KRを0.0〜1.0、または%でスコア化し、その平均をOのスコアとする。評価はあくまで振り返り用で、報酬とは原則結びつかない点も特徴です。
3. OKR導入の6つのメリット
- 短期サイクルで柔軟に運用可能(1ヶ月〜四半期)
- 組織全体の目標整合性が向上
- 目標設定の時間短縮
- 従業員のエンゲージメント向上
- 優先度の明確化と集中
- 挑戦的な目標設定が可能
4. MBO・KPIとの違い
比較軸 | OKR | KPI | MBO |
---|---|---|---|
レビュー頻度 | 四半期ごと | 四半期ごと | 年1回 |
測定方法 | 定量スコアリング | 重要業績評価指標 | 定性・定量両方 |
共有範囲 | 組織全体で共有 | 組織全体で共有 | 上司・部下間で限定共有 |
主な目的 | 挑戦的な目標達成 | 業績評価 | 業績と報酬連動 |
OKRは、評価目的ではなく「成長と挑戦」を重視した目標設定手法であることが最大の違いです。
5. OKR導入・運用のステップ
- 企業OKRの設定
組織全体の戦略目標を明確化 - チームからのフィードバックで調整
トップダウンとボトムアップを組み合わせる - チームOKRの設定と共有
部門ごとに調整し、連携を図る - 個人OKRの設定と調整
メンバー自身で目標を持ち、責任感を育成 - 週次のチェックインで進捗確認
自信度や課題、次の行動を共有 - 中間レビュー/最終レビュー
スコアリングと改善点の分析 - 次期OKRの設定
前回の振り返りをもとに、継続的な改善を図る
6. 継続運用のカギ「チェックイン」
週1回の短時間ミーティングで、次の4点を確認:
- 現在の進捗状況(数値)
- 目標に対する自信度
- 課題や障害の洗い出し
- 次のアクションの確認
この「チェックイン」によって、PDCAサイクルを高速で回し、柔軟な目標管理が可能になります。
まとめ
OKRは、全社的な方向性と個々の行動を一致させるための強力なツールです。報酬と切り離されたチャレンジングな目標設定により、組織の成長力と従業員の主体性を引き出します。MBOやKPIとの違いを理解したうえで、自社に合った導入方法を検討しましょう。